多くの人に知られている猫のなかには、数千年もの遥か昔から人と共生している猫がいます。古くから人と共に暮らし、現在でも多くの人に名前を知られ、愛されている猫3種を紹介します。ルーツや魅力を猫写真家の石原さくらさんに聞きました。
エジプトの壁画に登場する「アビシニアン」
アビシニアンは、現存する猫種のなかで最も古い猫といわれています。今から約4500年前の古代エジプトで、猫は神と崇められていました。当時の壁画にもアビシニアンに似た猫が描かれていることから、世界最古の猫という説が。
1800年代に英国の兵士がエチオピアから連れて英国に帰国したとされています。野うさぎのような毛色の猫と交配し、全身に薄いしま模様を持つ品種となりました。
ピューリタンと旅をした「アメリカンショートヘア」
いまから約4000年前、アメリカ大陸を旅するイングランドのキリスト教徒であるピューリタンは、ネズミやヘビを退治するために猫を連れていました。そうして北アメリカに持ち込まれた猫が、アメリカンショートヘアのルーツになったといわれています。
アメリカ国内では家庭猫として親しまれ、その中からたくましくて性格のいい猫を選んで繁殖。1960年代には名前が定着し、アメリカ以外でも人気の猫になったのです。
バイキングに持ち込まれた「ノルウェージャンフォレストキャット」
8~10世紀頃、船に積まれた穀物をネズミから守るため、バイキングがトルコの長毛猫をノルウェーに持ち込んだといわれています。その後、スカンジナビア半島の厳しい寒さに適応するため、長くて密度の高い被毛が発達。第2次世界大戦で絶滅の危機にさらされるなどの障害を乗り越えて、保護、公認されました。
猫種のルーツを探ると、人の生活は古くから猫に支えられてきたことがわかります。きっと、今いる猫たちの性格や特徴も、人との関りのなかで形作られてきたのでしょう。
お話を伺った先生/石原さくらさん(猫写真家 猫研究家)
参考/「ねこのきもち」2022年8月号『ミックスも登場 ルーツは? 魅力は? みんなの猫種図鑑』
文/小崎華