取り入れている動物病院が増えている「オンライン診療」。くしゃみや鼻水などの症状を起こし、重症化すると命にかかわることもある猫カゼはオンラインで受診できるのでしょうか? 今回は、猫のオンライン診療のあれこれについて、獣医師の山本宗伸先生にお話をお聞きしました。
オンライン診療の適用範囲
オンライン診療は、2022年に日本獣医師会が策定したガイドラインに基づいて取り入れる動物病院が増えていますが、診療する内容は動物病院によって異なります。
たとえば山本先生の動物病院の場合、現時点で初診の受付はしていないそうです。来院歴のある猫の経過観察を行っていますが、動物病院へ行くことに強いストレスを感じる猫にとっては、よい方法だと感じているといいます。
診療を受ける前の準備
まず、診察を受けるためにはオンライン会議用のアプリの準備が必要です。山本先生の動物病院の場合は、オンライン会議ツールのzoom(ズーム)というアプリを準備してもらっているそうです。
設定する端末はパソコンでもスマートフォンでも大丈夫ですが、診察内容が周囲にもれないよう、人がいる場所ではなく個室から参加してもらっているといいます。
猫カゼの診断は可能? オンラインの場合
オンライン診療に向いているのは、おもに目で見てわかる皮膚病や、おもな診察が問診になる問題行動の治療などです。猫カゼの場合は、初診時に全身の身体検査(体温、体格チェック、聴診など)が必要になるので難しいそうですが、経過観察や薬の効果判定ならできるかもしれないということです。
オンライン診療のメリットとデメリット
オンライン診療の大きなメリットとして、まず、移動や受診時に強いストレスを感じてしまう猫の負担を軽減できることがあげられます。また、地理的な制約がなく、自宅付近の動物病院ではなくても受診できる利点があるでしょう。
ただし、実際に猫の体を触ったり、検査をしたりができないため、限られた情報から推定することが増え、確定診断に至らない可能性も。また、薬の到着に数日ほどかかることもデメリットとしてあげられます。
手軽さや利便性の高さから、動物病院のオンライン診療は、今後普及していくと考えられます。とはいえ、血液検査の結果を踏まえて治療内容を調整するような病気をはじめ不向きなこともあるので、対面診療との使い分けが必要になるでしょう。
お話を伺った先生/山本宗伸先生(猫専門病院Tokyo Cat Specialists院長)
参考/「ねこのきもち」2024年12月号『「どうせ風邪でしょ」と思わないで 全猫飼いさんに知ってほしい猫カゼの真実』
文/小崎華
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