猫は時々、ふてくされたような様子を見せることがありますよね。でもじつは、見た目と気持ちが同じとは限らないようです。 今回は、猫に「ふてくされる」という感情はあるのか、実際はどんな気持ちでいるのか、哺乳動物学者の今泉忠明先生に伺いました。
猫には本来「ふてくされる」という感情はない
「ふてくされる」とは、嫌なことが起きたり不満を覚えたりしたときに、反抗的で投げやりな態度をとることをいいます。態度に示すという行為は、相手があってこそのもので、単独行動の猫は本来もっていない感情です。「あの猫に自分が不機嫌なのを気づいてほしい」なんて、外猫ではあり得ません。
同居猫がいると「ふてくされる」に近い様子を見せることも
「ふてくされる」は猫に本来ない感情ですが、複数飼いの場合は事情が違います。同居猫がかわいがられているのを見ると、「飼い主さんには、誰よりも自分をかまってほしい」という気持ちから、ふてくされたような様子を見せることがあります。やきもちに近い感情ともいえるでしょう。
猫が「ふてくされる」ような表情のときは、じつはこんな気持ち
では、猫がふてくされたような様子を見せるとき、実際はどのような気持ちでいることが多いのでしょうか?
目つきが鋭く見えるときは「うっとりしている」
人の場合、機嫌が悪いと目つきが悪くなることがありますが、猫もそうとは限りません。たとえば、マッサージをしたあとなどにムスリとした顔になるなら、「うれしかったことの余韻に浸ってうっとりしている」といえるでしょう。脱力してまぶたが重く、もともと釣り目っぽい目がさらに鋭く見えているだけだと考えられます。
顔に力が入っているときは「気を張り、集中している」
脱力しているときだけでなく、力が入っても目は細く鋭くなります。猫の顔に力が入っているときは大抵、水飲みやパトロールなど何かに集中しているときです。
わざとふてくされたような様子を見せるのは「甘えている」
気を引くために、わざとふてくされたような様子を見せている場合もあります。こうすると「フードをくれる」「なでてくれる」と甘えたくて、アピールしているのでしょう。
猫が「ふてくされている」ように見えるときはどうすべき?
ふてくされないとはいっても、猫がそう見えるとき飼い主さんはどうしたらいいのでしょうか?
不調のサインの場合もあるので猫の様子から見極めて
ふてくされたような様子は、ときに不調のサインであることも。猫に強張った表情が見られたら、「部屋の隅に隠れたがる」「瞳孔が開いて黒目がち」「逃げ腰の体勢でじっとしている」などの様子がないか、注意して見てみてください。その状態が続くなら、獣医師に相談しましょう。
甘えてふてくされたような様子を見せるときは応え方に注意
要求をとおすために、猫が甘えてふてくされたような様子を見せる場合、応え方や応えるタイミングには注意しましょう。「求められるままにおやつを与える」「噛まれるまで応えない」ということをしていると、猫の健康状態や関係性の悪化につながりかねません。
甘えてふてくされたような様子を見せる猫には、健康状態や関係性の悪化に影響しない「遊びに誘う」で応えるのも一案です。
猫は脱力していたり、何かに集中していたりすると、ふてくされたような様子を見せるようです。ただし、不調が隠れている場合もあるので、ふてくされたような様子を見せるときに猫がどんな表情や行動をしているか、よく観察するようにしましょう。
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳動物学者 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2025年2月号『見た目と気持ち、同じとは限らないかも。実際、どうなのよ? ふてくされ猫』
文/宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
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