あくびは、あごの筋肉を大きく動かすことによって脳内の血流をよくし、脳を覚醒させるための生理現象です。猫のあくびについては、まだまだ未解明な部分も多いですが、今回は猫のあくびに隠された6つの気持ちについて、哺乳動物学者の今泉忠明先生にお話を伺いました。
「眠い~」と思っている
猫があくびをするときの気持ちで最も多いのは、眠いときです。副交感神経が優位になって呼吸がゆっくりになると、脳内の酸素が不足します。そのため、あくびをして脳の血流をよくし、新鮮な酸素を行き渡らせようとするのです。猫がお気に入りの休息場所でリラックスした姿勢をしながらあくびをしていたら、眠くなっているサインでしょう。
気分を切り替えたい
あくびには、気分を切り替える役割もあります。例えば、起床時には休息モードから活動モードに切り替えるためにあくびをする、ひとしきり活動したあとに休息モードに切り替えるためにあくびをする、などです。
「平和だな」「退屈だな」と感じている
あくびは、オキシトシンなどのいわゆる“幸せホルモン”とも深く関わりがあるといわれています。猫がゆったりと過ごしているときにあくびをするのは「平和だな」「穏やかだな」など、幸せを感じていると考えていいでしょう。ただ、刺激のない状態が続くと「退屈だな」と感じることもあるようです。
かまってほしいなど何かおねだりをしている
過去、たまたまあくびをしたときにかまってもらえた経験があり、そのことを覚えている猫は、かまってほしいときにおねだりの意味であくびをすることがあります。このあくびは生理現象ではなく、猫が学習によってわざと行っているものです。飼い主さんのほうを見ながらあくびをしている場合は、おねだりかもしれませんね。
「やめて」「イヤだよ」と思っている
哺乳類の中には、カバのようにあくびで威嚇行動をする動物もいます。猫も同様に、イヤなことをされたと感じたとき、拒否や威嚇の意味であくびをすることがあるようです。歯を剥きだすような形相であくびをしていたら、拒否や威嚇の意味である可能性が高いため、そっとしておいてあげましょう。
気持ちを落ち着かせようとしている
猫は、おもちゃを捕まえそこなったときやジャンプに失敗したときなどにあくびをすることがあります。これは、自分の気持ちを落ち着かせて動揺を抑えるための“転位行動”と呼ばれるものです。次のチャレンジに向けて、気持ちを切り替えていると考えられます。
あくびひとつをとっても、さまざまな意味があるようですね。愛猫のあくびを見かけたら「今はどういう気持ちであくびをしているのかな?」と考えてみるといいでしょう。
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳動物学者 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2025年4月号『ふぁ~に隠れた、6つもの気持ち。 じつは複雑 猫のあくび』
文/東里奈
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
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