SNSで話題になり、多くの人が目にしたであろう「猫がきゅうりに驚く動画」。しかしこのことがストレスにより猫の体調不良を引き起こす恐れも。今回は、猫がきゅうりに驚くワケや学者からの警鐘を解説。さらに、猫に与えていいきゅうりの量もご紹介します。
猫がきゅうりに驚く動画
SNSで話題になった「猫がきゅうりに驚く動画」を、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。猫がビックリする姿がおもしろい!かわいい!と、すぐに人気動画の仲間入りをしました。そして「自分の愛猫にも試してみたい」と思う人がいるなかで「かわいそう」という意見もあります。
そもそも、なぜ猫はきゅうりに驚くのでしょうか?そして、この行為は猫にとって負担なのか、笑って許せるものなのかを考えましょう。
猫がきゅうりに驚くのはなぜ?
遺伝子に刻まれたヘビへの恐怖
イエネコの祖先といわれる「リビアヤマネコ」の生息地は、砂漠や熱帯雨林です。そこで、猫の天敵となったのが「ヘビ」でした。敵から身を守るために身に着けたのが、毒ヘビが苦手とする「シャーッ」という威嚇の声です。
今でも猫には「シャーッ」という威嚇の声が残っているように、“毒ヘビは天敵”というイメージは遺伝子に組み込まれており、「細長いものは敵」と判断して怖がっているものと考えられています。
いきなり出てきたものにビックリ!
みなさんも、今まで何もなかった空間に突然何かがあらわれたらビックリするでしょう。猫も同じように、いきなり何かがあらわれると驚きます。
動画を見てみると、食事に夢中になっている猫の後ろへ、そーっときゅうりを置いているのが分かります。食事に満足して振り返ると、今まで何もなかった場所に“何かが”突然あらわれたのです。それは、ビックリしてパニックになりますよね。
見慣れないものに抱く恐怖
警戒心の強い猫は、見慣れないものに恐怖を感じる場合があります。食卓のきゅうりに見覚えがあっても、調理前のきゅうりを「知らない物体」と判断し怖いものだと思うのでしょう。
前述の「細いものは敵」という心理と「いきなり出てきた」という状況、そして見慣れないものに抱く恐怖。この3つが合わさって、猫はきゅうりに驚くのです。
動物学者が警鐘!食事は安全な場所で
動物学者が「猫がきゅうりに驚く動画」に警鐘!
アメリカの認定動物学者が「猫がきゅうりに驚く動画」に警鐘を鳴らしました。それは「動物にワザとストレスを与えるのは良くない」というもの。「おもしろいと思って行っているのなら、人間性を疑う」という言葉も出ています。
イギリスの大学で猫の行動を研究している「猫的感覚:動物行動学が教えるネコの心理」の著者も同意見です。「このような“卑劣”な動画は、猫を怖がらせて笑い者にする行為を扇動しかねない」と警鐘を鳴らしました。
食事場所は安心して過ごせるところにしよう
動画では、猫の食事中に驚かすことが多いようです。それは、安心して食事を味わっている姿と、きゅうりに驚く姿のギャップが撮りやすいからでしょう。しかし、故意に驚かし続けると食事場所を危険な場所と認識してしまうかもしれません。
「食事場所を安全と考えている猫にとって、混乱させる行為は残虐な行為」と、アメリカの行動主義心理学者も語っています。
ストレスは体調の変化を引き起こす
ストレスを感じやすい猫
もともと猫は、獲物を単独で捕らえ生活をしてきた動物です。自分で身を守ってきたため、周囲の変化を敏感に感じる能力に長けているのでしょう。警戒心が強く神経質な猫は、ストレスを感じやすいといえます。それに加え、縄張りが安定していないことは命にかかわること。環境が変化すること自体が、猫にとってはストレスなのです。
ストレスを感じているとき
猫がストレスを感じているときは、次のような行動が見られます。
・身を縮めて態勢を低くする
・しっぽを隠すまたは、体に巻き付ける
・耳を伏せる
・呼吸が早くなる。ひどいときはハアハアする
・肉球に汗をかく
・瞳孔が開く
・鼻や耳の内側の色が濃くなる
・神経過敏になり「シャー!」と威嚇する
ストレスを感じた猫は病気にかかりやすい
ストレスを感じると、交感神経系が興奮し体は緊張状態になります。そして、心拍数や血圧が上昇し、緊急事態に備え素早く対応できる体勢に入りますが、その状態が続くと病気にかかりやすくなるといわれています。
ストレス刺激は、視底下部から脳下垂体を経て、副腎皮質から副腎皮質ホルモンを分泌しますが、このホルモンが過剰に分泌されると免疫系が抑制されます。つまり、ストレスに長くさらされると、免疫力の低下につながるのです。
猫がきゅうりを食べても大丈夫?
猫はきゅうりを食べられます。きゅうりは90%以上が水分で、ナトリウムや脂肪分が少なく低カロリーな食材です。シャリシャリとした食感のきゅうりは、水分補給が苦手な猫にも熱中症対策として与えることができます。
きゅうりを与えるときの注意点
はじめて猫がきゅうりを食べる際には、アレルギー反応に注意しましょう。なぜなら、スイカやメロン、きゅうりといったウリ科には、アレルギーを持っている猫がいるためです。アレルギーの症状には、下痢や嘔吐、目の充血、体をかゆがるなどの症状と、元気がなくなるといった変化がみられます。
はじめて食べる食材は、少量からスタートしてしばらく様子を見るようにしましょう。
与えていいきゅうりの量は?
個体差はありますが、食べ過ぎると胃腸の負担になることがあります。消化しやすいように千切りにした状態で、15g程度なら与えてOKです。ただし、腎臓病の猫には与えてはいけません。
自分が面白いと思うことでも、相手が嫌がれば嫌がらせでしかありません。「猫がきゅうりに驚く動画」は、猫の驚き方がオーバーアクションでおもしろい!と話題になりましたが、ここまでビックリするときには、猫に大きなストレスがかかっているのです。ストレスは体調不良を引き起こす危険性もあるので、驚かす行為はやめたほうがよいでしょう。
参考/「ねこのきもち」『ベテラン飼い主さんも意外と知らない愛猫のストレス事典』(監修:東京大学大学院 農学生命科学研究科助教授 武内ゆかり先生)
「ねこのきもち」『まんぞくさんも大満足♡猫に与えてOK?NG?食べ物図鑑』(監修:高円寺アニマルクリニック院長 高崎一哉先生)
監修/ねこのきもち相談室獣医師
文/HONTAKA
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。