猫は体に不調があっても、それを言葉で訴えることができません。また、痛みや不調を隠してしまうこともある動物です。
だからこそ、愛猫の健康を守るためには、飼い主さんが常日頃から猫の様子を観察し、実際に触れることで、病気の早期発見に努めることが大切なのです!
※この記事は、ねこのきもち「新 愛猫の家庭の医学事典」よりご紹介しています。
猫の5つの行動で見る健康チェック
この記事では、ここで取り上げる猫の5つの行動を見て「これって変!?」と感じたときに、動物病院の受診の参考になるような症状・行動の変化、チェックポイントについて紹介します。
※猫の様子をチェックするときは、猫の行動を妨げないように注意して。ある程度の距離をおいて、さりげなく観察しましょう。
①寝起き
猫が起きてすぐにする行動は、ある程度決まっているもの。いつもと違っていないかよく観察しましょう。
以下の4つのチェック項目で当てはまることがあれば、早めに受診を。
□目を覚ましてもあまり動かず、寝てばかりいる
→体調が悪い可能性があります。また、首や腰などに痛みがあり動きたくない可能性も。
□起きたときの行動がいつもと違う
→「いつもは爪とぎをするのに今日はしない」などの変化がある場合には、体調が悪い可能性も。
□伸びをしない
→猫も目覚めて活動を始める前には、体を伸ばすもの。伸ばさないのは、腰や足に痛みがある可能性が。
□若いときよりも活発に動き回る
→高齢の猫がせかせかと活発に動き回るのは、「甲状腺機能亢進症」の可能性があります。
②毛づくろい
毛づくろいのタイミング、順序、時間、回数などはだいたい決まっているもの。ふだんの仕方を知っておいて。
以下の3つのチェック項目で当てはまることがあれば、早めに受診を。
□毛づくろいをほとんどしない
→いつもは毛づくろいをするはずのタイミングでもほとんどしないのは、体調が悪いか、首・背骨・腰などに痛みがあって体が曲げられない可能性があります。
□同じところばかり何度もなめる
→なめている部分の皮膚や内蔵に違和感、かゆみ、痛みなどがある可能性があります。また、ストレスにより過剰な毛づくろいをしている可能性があります。
□毛がガサガサしている、ツヤがない
→年をとると、多少はツヤがなくなるものですが、急に全身の毛がガサガサになったら体調が悪い可能性が。
また、水分摂取不足のために脱水気味になっている可能性も。
③寝ているとき
表情が穏やかかどうかを見て、息づかいがいつも通りかを聴いてチェックしましょう。以下の2つのチェック項目で当てはまることがあれば、早めに受診を。
□寝苦しそうな表情をしている
→じっとうずくまったままだったり、表情が険しく見える場合は、どこかに痛みがあるか体調が悪い可能性があります。
□呼吸が荒い、息苦しそう(※できれば当日中に受診を!)
→ハァハァ、ゼーゼーしている場合は呼吸器の病気や発熱の可能性が。また、息苦しそうな場合は鼻が詰まっている可能性があります。
④飲み方
猫によって、水入れや置き場所の好みは異なります。なるべくたくさんの水を飲めるよう、つねに複数箇所に用意してあげましょう。
以下の2つのチェック項目で当てはまることがあれば、早めに受診を。
□飲水量が急にふだんの1.5倍以上になった
→頻繁に水を飲んでいたりすぐに水入れが空になるなど、急に飲水量がふだんの1.5倍以上に増えた場合は、「糖尿病」「慢性腎不全」「子宮蓄膿症」などの可能性があります。
□飲水量が減ってきた(※できれば当日中に受診を!)
→年をとるにつれ活動量が減ったり、動くのが面倒なために、必要な水分を摂取できていない可能性があります。
充分に水分を摂取できるよう、水入れや置き場所を工夫しましょう。
高齢の猫は飲水量が少なくなりがち。量って確かめよう
猫は砂漠地帯出身のため、水を少ししか飲まなくても生きていけるといわれています。しかし、飲水量が極端に少ないとオシッコの濃縮率が高くなり、腎臓に負担がかかって慢性腎不全などの病気にかかりやすくなります。
とくに活動量が減る高齢の猫は、飲水量が少なくなりがち。週に一度を目安に愛猫の飲水量を量り、減っていないかチェックを。
また、急に飲水量が極端に増えた場合は、病気の初期症状の可能性があります。すぐに受診して!
飲水量の量り方
与える前の水の量と、水を換えるときに残っている水の量を計量カップで量ります。その差が、猫の飲水量。
試してみて! 猫の飲水量を増やす工夫3つ
猫の飲水量を増やすためにできる工夫については、以下の3つのようなことがあります。ぜひ試してみてください。
飲水量を増やすひと工夫1:猫の通り道に水入れを置く
通りすがりに水を飲めるよう、猫がよく通る道に沿って複数の水入れを用意してあげて。最初は5カ所ほど用意して観察し、猫が好む場所を見極めて。
飲水量を増やすひと工夫2:ねこ草に水をかける
ねこ草を好む猫なら、ねこ草に霧吹きなどで水をかけるのも手。ねこ草を食べた際に、多少でも水分を摂取できます。
飲水量を増やすひと工夫3:寝床のそばに水入れを置く
年をとった猫は、寝床にいる時間が長くなります。水飲み場が遠かったり寒かったりすると自然に飲水量が減ってしまうので、寝床のそばに用意して。
⑤食べ方
食欲のほか、食べるペースや飲み込み方などにもいつもと違っているところがないか、よく観察しましょう。
以下の2つのチェック項目で当てはまることがあれば、早めに受診を。
□食欲がなくなった
→与えるフードの量は変えていないのに残したままの日が続いたり、フードに興味を示さず寝てばかりいる場合は、体調が悪いか、口の中に痛みがある可能性があります。
□異常に食欲が増し、絶えずフードを欲しがる(※できれば当日中に受診を!)
→高齢になってから若いときよりもフードへの執着心が強くなった場合は、「糖尿病」や「甲状腺機能亢進症」などの可能性があります。
食欲があれば元気…とは限らない!?
食欲は猫によって異なりますし、同じ猫でも季節によって増減することもあります。たまに残している日があっても、「食欲がない」と心配する必要はないでしょう。
しかし、残したままの日が続き、1カ月で体重が10%(3kgの猫なら300g)以上減ったときは病気の可能性があります。
高齢の猫がかかりやすい病気の中には食欲が増す病気があるので、異常に食欲が増した場合も早めに受診しましょう。
猫の平均体重は?
健康維持に最適な適正体重は、猫種や骨格の大きさ、筋肉量などにより個体差があります。目安は、オスが4〜5kg、メスが3〜4kgほどですが、動物病院で愛猫の適正体重を判断してもらいましょう。
また、月に一度は体重を量り、変化がないかチェックを。1カ月で体重が10%以上増減したり、食欲は落ちていないのに体重が減っている場合は病気の可能性もあるでの受診を。
愛猫の健康を守るためにも、行動に異変が見られないかを飼い主さんは日頃から観察してみるようにしてくださいね!
出典/「ねこのきもち」2016年5月号『新 愛猫の家庭の医学事典』
(監修:千葉県佐倉市・和歌山動物病院院長 和歌山正之先生、東京都杉並区・高円寺アニマルクリニック院長 高崎一哉先生)
文/sorami