「愛猫がさみしくないように、もう1匹迎えてあげたい」と考える飼い主さんは多いですよね。しかし、元々単独行動を基本とする猫にとって、同居猫の存在が必ずしもプラスになるとはいえないようです。
複数飼いの家庭では、猫たちそれぞれの幸せを考えてあげる必要があります。飼い主さんは、猫の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」について意識したことはありますか?
QOLとは…
QOLは、Quality Of LIfeの略で、「生活の質」という意味。どれだけ人間らしい生活を送れているかの満足度を表す指標ですが、最近では動物でも注目されています。
猫の場合は……
- 心身ともに健康な状態か
- 快適な生活か
- 飼い主さんや同居猫といい関係が築けているか
などが、QOLを向上させるポイントに。
今回は、猫の複数飼いで残念ながらQOLがマイナスになってしまっている家庭のケースを2つ紹介します。複数飼いの家庭ではよくあるお悩みだと思うので、ここで紹介する改善策をぜひ参考にしてみてください!
お悩み1:オス同士なのに、1匹がマウンティングされる…
最初に紹介するのは、Teaくん(オス・4才・スコティッシュフォールド/好奇心旺盛な性格)とChocolatくん(オス・3才・スコティッシュフォールド/ビビリで内弁慶な性格)の2匹を飼っている家庭のエピソード。
「去勢手術済みですが、ときおりChocolatがTeaにマウンティングされます。抵抗せずにじっとしているものの、ストレスになるのでは? と心配。ふだんはChocolatのほうが活発で、遊んでいるところをTeaが見ているという、仲よしの兄弟猫のような関係です」(群馬県 K・Sさん)
退屈しのぎにマウンティングしている可能性アリ
相手の上に乗り、体の一部を噛んだりするのがマウンティング。オス猫の性衝動以外に、優位性のアピールや、退屈しのぎにすることが多いようです。
今回のようなケースも、エネルギーを持て余して退屈しのぎでしている可能性があり、むしろTeaくんのストレスが心配ですね。Chocolatくんが抵抗してケンカになってしまった場合、お互いによくないでしょう。
【解決策】マウンティングする猫を充分に遊ばせ、エネルギーを発散させよう!
Teaくんのエネルギーを発散させるには、飼い主さんが遊び相手になるのが一番です。2匹で遊ばせようとすると、遊び好きのChocolatくんに圧倒されてしまうため、Teaくんだけで遊ばせる時間を設けてあげましょう。
たとえば、猫タワーなどを使って上下運動を取り入れてあげると、より運動量が増えます。
お悩み2:オスがメスを襲うため、長年一緒にいても微妙な関係に…
続いて紹介するのは、レオくん(オス・13才/野性的で活発な性格)と雛ちゃん(メス・14才/気が強く、人好きな性格)の複数飼いの家庭のエピソード。
「メスの雛が2才のとき、オスのノラ猫のレオを迎えましたが、去勢手術後もたびたび雛を襲います。12年間同居していても、雛が拒否。その間、引っ越しや家族構成が変わるなど、環境が変化したことも影響しているのかも。
ただ、仲良しではありませんが、レオの姿が見えないと雛が捜したり、2匹は"家族"みたいな関係と感じます」(新潟県 H・Yさん)
高齢猫が今から仲良くなるのは、難しいもの
オスがひとたび性衝動を経験すると、去勢手術後もレオくんのように残るケースがあります。猫は嫌な経験は覚えているので、雛ちゃんが拒否し続けるのは仕方のないことといえます。
高齢猫になるとより縄張り意識が強くなる傾向にあるため、相手の存在がさらにストレスになる可能性も。今より関係性を悪化させないようにするのが最善策ですね。
【解決策】必要な猫グッズを揃えた部屋で、それぞれ別に生活させよう!
2匹が悠々自適に暮らせるように、それぞれの生活の拠点をつくって、顔を合わせる回数を少なくさせるのも一案です。好きな部屋に猫トイレ、爪とぎ器、寝床、フードと水を用意すればOK。
自宅がワンルームの場合は、猫用のケージを使い、必要な猫グッズを用意して、2匹交代でケージを使わせるといいでしょう。
猫それぞれのQOLを守るには、同じ空間での生活をあきらめる決断も必要に
猫同士の相性が悪いと、顔を合わせただけで激しく攻撃し、相手にケガをさせることも。そのような場合は、同じ空間で生活させるのはあきらめ、完全に生活スペースを分けて「家庭内別居」させてください。2匹が鉢合わせないよう、部屋のドアを閉めて、別々の部屋で生活させましょう。
以下のような様子が見られたら、家庭内別居を検討してください。
□対面すると攻撃する、威嚇する
□食事ができない
□排泄を我慢する
□毛を舐めすぎて脱毛する
うまくいかない場合は、新しい飼い主さんを探すことも視野に
猫たちに上記のような様子が見られるのに、部屋数が足りなかったり、一人暮らしだったりして、家庭内別居させるのが難しいケースもあるかと思います。その場合は、新しい飼い主さんを探してあげることを検討する必要もあります。
猫たちそれぞれのQOLを考えてあげたときに、ほかの家庭で安心して暮らせるほうが幸せな場合も。
猫の複数飼いを成功させるための4つの心得
最後に、猫の複数飼いならではの飼い方のコツについて紹介します。実践できているか、確認してみてくださいね。
心得1:飼い主さん主導の遊び時間を、猫ごとに設けよう!
活発な若い猫は、ときとして高齢の猫には迷惑な存在になってしまうことも。活発な猫のエネルギーを発散させるために、飼い主さんがおもちゃを使うなどして、存分に遊び相手になってあげて。
複数で遊ばせるのは難しいので、1匹ずつ相手をしてあげましょう。
心得2:ケンカになりそうなときは、すぐに引き離そう!
仲が悪くない猫同士でも、ときには険悪なムードになることがあります。唸りながら睨み合っていたら、声をかけたり、おやつで気を引いてみたりして、速やかに2匹を離しましょう。
ただし、ケンカが始まってしまったら手を出すのは危険です! 2匹の間にクッションを投げるなどして遮断してみてください。
心得3:室内のあちこちに居場所をつくろう!
猫には、「安心してくつろげる場所」と「何かあったときに避難できる場所」が必要です。複数飼いの場合は、猫ごとにそうした居場所を用意してあげましょう。
1匹の猫が休める程度の大きさで、高さの違う居場所を家のあちこちに配置するのがポイントです。
心得4:猫トイレの数は多く、静かな場所に設置しよう!
排泄に神経質な猫の場合だと、同居猫が近くにいると落ち着いてトイレが使えないことがあります。また、同居猫の排泄物が残っているトイレを使いたがらない猫もいます。
粗相やオシッコの病気の原因にならないように、それぞれの猫が好むトイレの環境をつくることが大切に。
猫にとって理想のトイレ環境って?
- トイレの数は匹数+1個を準備
- 猫それぞれの好みのトイレ砂を用意
- 人や同居猫があまり通らない、静かな場所にトイレを置く
同居猫の存在は、プラスになることもあれば、マイナスになってしまう場合もあります。すべての猫が幸せに暮らせているかどうか、飼い主さんはぜひQOLを見直してみてくださいね!
参考/「ねこのきもち」2019年12月号『どの猫も幸せでなくてはいけないから 考えたい! 複数飼いのQOL』
(監修:獣医師、東京大学附属動物医療センター行動診療科にて犬猫の治療に従事 菊池亜都子先生)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
文/sorami