猫の心臓病のなかでも発症率が高い「心筋症」。心筋症は初期症状があらわれにくく、飼い主さんが気づいたときには重篤な状態になっているケースもあるため注意が必要です。
今回は、猫の心筋症の原因や症状、検査、治療法、早期発見のコツなどについて解説します。
猫の「心筋症」ってどんな病気?
心臓の大部分は、「心筋」という筋肉でできています。心筋症は、この心筋に異常があり、心臓のポンプ機能が低下することで、血液の循環が悪くなる病気です。
心筋症は「肥大型」「拘束型」「拡張型」と、大きく3つのタイプに分けられます。そのなかでもとくに多いのが、心筋が内部に向かって厚くなることで心室が狭くなり、全身に十分な血液を送り出せなくなる「肥大型心筋症」です。
なお次に多いのが、心筋が硬くなってしまう「拘束型心筋症」で、心筋が薄くなってしまう「拡張型心筋症」は、猫ではまれな症例とされています。
猫の「心筋症」の主な症状とは?
心筋症の初期症状はわかりにくく、とくに多い「肥大型心筋症」では、約33~55%が無症状という報告が。症状が悪化すると、呼吸が荒くなったり咳が出たりするほか、頻繁にうずくまって休むなどの様子が見られる場合もありますが、異変がまったくなく突然倒れるケースもあります。
突然命を落とすケースも
先述のとおり、猫の心筋症は症状がわかりにくいため、飼い主さんが気づかないうちに進行して突然倒れ、そのまま命を落とす危険があります。
なお、心筋症による突然死の原因の多くは、「大動脈血栓塞栓症(ATE)」という合併症を起こすこと。心臓内の血液循環が悪くなることでできた血栓(血の塊)が動脈を介して全身へ流れ、血管が細い箇所に詰まってしまうのです。
心筋症を発症しやすい描種もいる
はっきりとした原因は解明されていませんが、メインクーン、アメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘア、スフィンクス、ペルシャ、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャット、ヒマラヤンなどの描種は、心筋症を発症しやすいとされています。
猫の「心筋症」の検査・治療法とは?
猫の心筋症では、以下のような検査・治療法を行います。
猫の「心筋症」の検査
心筋症の疑いがある場合は、血液検査、心電図検査、レントゲン検査、心臓超音波(エコー)などの検査をします。なかでも重要となるのが心臓超音波検査。近年では精度の向上により、早期の心筋症も正確に診断できるようになりました。
猫の「心筋症」の治療法
心筋に作用して心臓の収縮機能を高める強心薬や、血栓を予防する抗血栓薬などを用いて治療を進めるのが一般的です。しかし今のところ、心筋症を根本的に治す方法はありません。そのため、投薬で進行を遅らせて症状を緩和させることが、治療の目的となります。
猫の「心筋症」を早期発見するポイント
心筋症は予防ができないため、どれだけ早く発見できるかが治療のカギになります。愛猫の心筋症にできるだけ早く気づくためにも、以下の習慣を取り入れましょう。
心拍数をできるだけ毎日測るようにする
正常な猫の心拍数は、安静時で1分間につき130~160拍。運動や興奮時は、240拍くらいまで上がることもありますが、安静時でも200拍以上が継続するなら、心臓に異常がある可能性が。心拍数は猫によって差があるので、愛猫の通常時の数値を把握する意味でも、できるだけ毎日測り、少しの異常でも気づけるようにしましょう。
心臓の検査を定期的に受けるようにする
心筋症は通常の定期健診では判明しにくいので、心臓に特化した検査を定期的に受けるようにしましょう。血液検査の心臓マーカー(NT-proBNP)であれば、少量の血液を採るだけで検査ができるので、定期健診の血液検査のときに追加するのもおすすめ。心臓マーカーが高値を示した場合には、超音波検査を受けるといいでしょう。
定期検診や健康チェックで若いうちから対策を
心筋症の発症年齢は、生後3カ月から17才までと幅広い年齢で報告されており、年齢と発症のしやすさには関連がないと考えられています。まだ若いからと油断せずに、動物病院での定期健診や、自宅でのこまめな健康チェックを心がけましょう。
参考/「ねこのきもち」2020年10月号『どの猫にも突然死の危険が 怖い心臓の病気 猫の心筋症』(監修:王子ペットクリニック院長 重本仁先生)
文/ハセベサチコ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。