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同居猫の死で『仲間ロス』を経験した猫。自ら教わった「想いやり」を次につなぐ

亡きムーンちゃん(左)と子猫時代のごまちゃん(右)
三日月家のムーンちゃんは、わずか5才の時に病気で天国に逝きました。ムーンちゃんには後輩猫のごまちゃんがいて、2匹が一緒に過ごせた期間はわずか1年ほど。それでも、ムーンちゃんの影響力はとても大きく、同居猫の死に直面した子猫・ごまちゃんはそれ以降、『仲間ロス』に陥ってしまいます…。

性格が正反対の2匹。“距離感”があるように見えたけれど…

ごまちゃん(右)はムーンちゃん(左)からいろんなことを教わりました!
ムーンちゃんを迎えたのは、三日月家の3人の子どもたちが「動物を飼ってみたい!」と言い始めたのがきっかけ。自身も子どもの頃から実家で犬を飼っていたため、子どもたちの気持ちは「よ~くわかった」という三日月さん。「生き物を飼うというのは、どんなに覚悟と責任を伴うことなのか。必ず別れがやってきて、その別れがどんなに辛いものなのか。それを学ぶためにも、一度は経験しておいた方がいい」と思ったのだそうです。

ごまちゃんは1年前、娘さんが下校中に2日間鳴き続けていた子猫を探し出し、救出。三日月家に迎えられましたが、先輩猫のムーンちゃんとはなかなか距離が縮まりませんでした。2匹がグルーミングをし合ったり、添い寝をするようなことは1度もなかったといいます。

2匹の性格はまったくの正反対で、ムーンちゃんは「どっしり構えておとなしく、仏様のような猫」。一方で、ごまちゃんは「やんちゃな“ザ・ネコ”」という感じで、「子猫の頃は何でも口にしてしまうので、目が離せなかった」そう。

そんな2匹なので、三日月さんは「このまま仲良くなることはないのかなぁ」と思っていたそうです。ところが、ごまちゃんが避妊手術を終えて帰宅すると、2匹の関係に変化が現れます。

ご飯を分け与える行動に隠された意味と2匹の絆

術後の肥満防止のため、ご飯の量を少ないがゆえに早く食べ終わってしまうごまちゃんに、ムーンちゃんが自分のご飯を数粒残してあげるようになりました。最初は「偶然だろう」と思った三日月さんでしたが、ムーンちゃんは来る日も来る日もご飯を残し、ごまちゃんが食べるのを確認してからくつろぐように。それはムーンちゃんが天国に逝く最後の日まで続きました。

さらに不思議なことに、ムーンちゃんが亡くなると、食いしん坊なごまちゃんが、自分のご飯を数粒残すようになりました。「本当の理由はごまちゃんにしかわからないけれど、ご飯を残すことでムーンが帰って来るんじゃないかと思っているのかも」と三日月さんは思い、心が温かくなったといいます。

実はごまちゃん、1年間でムーンちゃんから様々なことを教わっていました。「あちこち噛んだりガリガリしちゃダメだよ」「人間の食べ物に手を出しちゃいけない」「人に遊んでもらいたい時は、横に座ってジーッと見つめるんだよ」など。グルーミングや添い寝はしなくても、ごまちゃんはやさしい先輩のムーンちゃんに大切に育てられ、学んできたのです。

仲間ロスに陥ったごまちゃんに新しい友だちを…保護猫を引き取る

すき間に隠れる怖がりな小雪ちゃん
ムーンちゃんがいなくなってから、ごまちゃんはふさぎ込み、ご飯お水も受け付けず、毎日ムーンちゃんの骨壺にくっついて悲しそうにしていました。三日月さんがちょっとトイレや洗濯に立つだけで、大鳴きすることも。

まだ1才。先の長いごまちゃんに「寄り添ってくれる友だちを」と、三日月さんは新たに猫を迎えることを決意します。

ごまちゃんを保護してから、初めて保護猫団体の活動に興味を持ったという三日月さんは、インスタグラムなどで活動内容をしっかりとチェック。「自分にできることを」という思いから、保護猫団体から猫を迎えることに。

猫に会いに行くと、人慣れをしている猫たちの中、人目に付かないようなキャットタワーのハウスの中でダンゴムシのように丸まっている子猫(当時生後約5か月)を発見! そーっと指を差し出してみると、さらに縮こまってビクビク。

その時、三日月さんはふと思ったのです。「ごまちゃんに寄り添ってくれるコが必要と思っていたけれど、このコにごまちゃんが必要なのではないか」と。

どうやらその子猫は外で母猫に「人間は怖いんだよ」と教わったらしく、とても警戒心が強いのです。それでも、決意が固かった三日月さんは、雪がチラチラ舞う中、トライアルにやってきたので「小雪」ちゃんと名付け、正式に家族に迎えました。

新入り猫のため、立ち上がり、立ち直ったごまちゃん

いつでも小雪ちゃん(右)を見守るごまちゃん(左)
予想通り、小雪ちゃんはおうちでも見事な警戒ぶりを発揮します。まず、ご飯も食べない、水も飲まない。三日月さんは小雪ちゃんの目の前でごまちゃんにご飯を食べてもらい、「ここは安全な場所ですよ」とアピール。すると次の日にご飯を食べるようになったので、今度はおもちゃを教えることに。

三日月さんは小雪ちゃんの目の前でごまちゃんとおもちゃで遊びました。そうこうしているうちに、小雪ちゃんがケージの中からおもちゃに手を出すようになったのです! ごまちゃんは脇でそっと見守っています。

最もハードルが高かったのは小雪ちゃんが閉じこもっているケージから出てくること。おもちゃの動きにつられ、恐る恐る出そうで出ないを繰り返すこと数十回、やっと、初めて小雪ちゃんがケージから出てきました。もちろん、その間もごまちゃんがずっと見守っていました。

ケージから出られるようになると、部屋の中を探検し始め、ご飯もよく食べるようになった小雪ちゃん。すると、仲間ロスで食欲が落ちていたごまちゃんも触発されたのか、ずいぶん食欲が戻ってきたのです。

とは言え、三日月さんは新しい猫がやってきたという変化に、「ごまちゃんがストレスを感じていないか心配」でした。しかし、その心配は見事に覆されることに。あれだけ鳴いていたごまちゃんが、鳴かなくなったのです! 三日月さんを後追いすることもなくなりました。

三日月さんは「ごまちゃんは小雪ちゃんの心を解かし、小雪ちゃんはごまちゃんの心の穴を埋めてくれた」としみじみ。「私たちは愛情をかけて猫たちを育てていると思っていましたが、猫たちからたくさんの愛情と思いやりをもらっていたことに気付きました」。

ごまちゃんが立ち直っていく過程、小雪ちゃんが心を開いていく過程、その一歩一歩を支えた三日月さんと猫たちの家族のお話でした。
ねこのきもちWEB MAGAZINE/2022ねこの日
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取材協力・写真提供/三日月さん(埼玉県)
Instagram @british_sesame_shorthair
取材・文/賀来 比呂美
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