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キャットフードに含まれるたんぱく質は、植物性より動物性であるほうが良質ですか?

キャットフードには、小麦やとうもろこしなど、植物由来の原材料を使用しているものがあります。獲物の肉を食べていた猫にとっては、動物由来の栄養素のほうが、植物由来の栄養素よりも消化がよくて体の中でもよくはたらくような気もします。実際はどうなのでしょうか。

加工によって、問題なく消化・吸収される

 たんぱく質とは、たくさんのアミノ酸がくっついた構造をしています。食物に含まれる大きな分子構造のたんぱく質は、胃や腸で消化され、アミノ酸や、2~3つのアミノ酸が結合したジペプチド、トリペプチドと呼ばれる小さな単位にまで分解されて、腸から体内に吸収されます。

 確かに、生の肉と生の穀物を食べた場合なら、生の肉のほうが無理なく消化・吸収できるでしょう。しかし、植物性の原材料も、粉にしたり、グルテンのように栄養分を抽出したり、加熱処理したりして、消化のよい状態になってキャットフードにふくまれています。
 人の食品でのたとえになりますが、生の大豆は消化性がよくありませんが、ゆでた大豆は生よりも消化性が高まります。さらに、ゆでて粉砕し、たんぱく質などの消化性を下げる繊維と分離させて栄養分をしぼり出した豆腐は、とても消化性の良い食品です。このように、炭水化物についてと同様、植物性のたんぱく質についても、加熱や加工をすることで、消化性が格段にアップするのです。
 また、1つの原材料に含まれる必須アミノ酸のバランスでみた場合は、確かに植物性の原材料よりも、もともと動物の組織であった動物性の原材料のほうが優れています。しかし、猫は1つの原材料だけを食べるのではなく、キャットフードという最終製品から栄養をとっています。複数の原材料からバランスよく栄養素を調達しているフードであれば、問題ありません。
 かつては、植物性のたんぱく質より動物性のたんぱく質のほうが消化・吸収がよいといわれた時代がありましたが、原材料の加工技術が進化して、今その差はほとんどないといってよいでしょう。トウモロコシからグルテンを抽出して粉にしたコーングルテンミールなどは、とても消化性のよい植物性のたんぱく源です。

アミノ酸になってしまえば、動物性でも植物性でも同じもの

 たとえ消化ができたとしても、猫の体内では、動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質のはたらきに差はないのでしょうか。
たんぱく質の最小単位はアミノ酸です。消化のお話で説明したように、たくさんのアミノ酸が結合したたんぱく質は、消化でバラバラにされて、アミノ酸や、2~3つのアミノ酸が結合しただけの大きさになって体内に吸収されます。
 このアミノ酸は20もの種類があって、体の中でのはたらきが異なります。体の中で合成できるアミノ酸もありますが、じゅうぶんな量を体の中でつくり出せず、食べ物から摂取する必要のあるアミノ酸もあります。これを必須アミノ酸といい、人で9種類、猫の場合は11種類あります。
 消化・吸収されたアミノ酸は、肝臓などの組織で、機能に応じた新しいたんぱく質に組み立て直されます。アミノ酸という小さな単位になってしまった栄養素が植物由来であったか動物由来であったかを、新しいたんぱく質を作り出している細胞が選り分けていたりはしません。
 もちろん、猫の必須栄養素であるタウリンなど、そもそも動物性の原材料からしか供給できない場合もありますが、体内でのたんぱく質の合成に影響を与えるのは、原材料が何だったかではなく、アミノ酸の種類とバランスです。必須栄養素が欠けても問題ですし、過剰なアミノ酸がほかのアミノ酸の体内での利用を妨げる場合もあります。

 脂肪についても、最小単位の脂肪酸にはさまざまな種類とはたらきがあり、体内で合成できない必須脂肪酸があります。ビタミンやミネラルも基本的には必須栄養素です(ビタミンCは、猫は体内で合成できます)。
 キャットフードでは、さまざまな栄養素がバランスよく効率的に体内ではたらくように、さまざまな原材料を組み合わせ、消化性を高める加工をして製品をつくりあげています。
 総合栄養食のドッグフードがいきわたっていなかった30年ほど前、猫の平均寿命は95才程度でした。それが現在は15才※まで平均寿命がのびてきているのです。室内飼いなどの飼育環境の向上や予防接種等の浸透などと合わせ、さまざまな原材料から必要な栄養素をバランスよく含んだペットフードは、猫の健康を保ち、こと寿命に関しては、格段にのばしているといえるでしょう。

※平成28年 全国犬猫飼育実態調査(一般社団法人ペットフード協会)より
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(テキスト)
監修/徳本一義(獣医師)
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