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【獣医師監修】猫はキャットフードに入っている穀物を消化できる? 負担は?

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キャットフードの主原料に、小麦や米、トウモロコシなどの穀類を使っているフードがあります。猫はもともと穀物を食べる動物ではないので、飼い主さんのなかには、愛猫が消化不良を起こすのではないかと心配するかたもいらっしゃるようです。
果たして、猫はキャットフードの中の穀物を消化できているのでしょうか。詳しく解説します。

監修/徳本一義(獣医師)

猫に穀物はそんなに悪いものなのでしょうか?

 じつは、人も穀物をそのままでは消化できません。人が穀物を主食にしているのは、火を利用することを覚え、食料を加熱する技術を手に入れたからです。

 穀物にふくまれる主な栄養素は炭水化物で、そのほとんどはでんぷんです。でんぷんは、消化・吸収されやすい糖とは違い、生の原材料のままでは猫だけではなく人間を含む多くの動物にとって消化性が悪い栄養素です。でんぷんは、水とともに加熱することによって結晶構造が溶解して水に溶けます。これを糊化(アルファ化)といいます。私たち人は、米に水を加えて加熱してご飯をたいたり、小麦粉に水を加えて練って焼き、パンなどにしたりすることで、でんぷんを消化しやすく糊化させて食べているのです。

猫も加熱調理した穀物なら負担なく消化できる

 猫の場合、果糖(フルクトース)については分解する能力をもたないので与えないほうがいいのですが、糊化したでんぷんなら消化する能力があります(Meyer and Kienzle,1991;Kienzle,1993.1993a)※1。人のように唾液の中にでんぷんを消化するアミラーゼをもたないため、小腸で消化が始まるといった違いはありますが、体内での利用も、食事の40%程度(乾物量)までは問題ないことがわかっています(Meyer and Kienzle,1991)※2。炭水化物の量はペットフードのパッケージに記載されていませんが、一般的なキャットフードのでんぷん量は30~35%程度ですから、無理なく消化・吸収と利用ができるということです。

 私たちは、愛猫に生の穀類を食べさせているわけではありません。ペットフードの原材料に使われている穀類は、水を加え、加熱されて、糊化された状態になっています。とくにドライフードは原材料を粉にして加熱・加圧してフードの形につくりあげますから、でんぷんの消化性がひじょうに高められています。ウエットフードに使用されるでんぷんも、加熱されて糊化されています。

キャットフードに穀物を入れる理由

【適量の炭水化物をバランスよく配合するため】
 完全な肉食動物である猫は、たんぱく質をエネルギーに変換する能力が高く、炭水化物をあまり必要とはしていません。しかし、炭水化物を分解してできる糖は体内で優先的に使われるエネルギー源で、脳は主に糖をエネルギー源として使うほか、授乳期には、良質な母乳をつくるために糖が必要です。ですから、炭水化物は、過剰にならない程度にペットフードに含まれていたほうが、栄養バランスがいいのです。このような目的が、炭水化物の供給源として穀物が使用される理由のひとつです。
 また、猫の健康を維持するために必要な栄養バランスから考えたとき、肉だけのゴハンで必要なエネルギーをまかなうと、たんぱく質や脂肪が過剰になり、ミネラルのバランスがくずれるなど、栄養素の過不足が生じる場合もあります。このため、キャットフードは、さまざまな原材料を加えて栄養バランスを整えています。

【炭水化物以外のさまざまな栄養素の供給源としても】
 また、穀類は、猫が多く必要としているたんぱく質の供給源にもなります。小麦や米、トウモロコシなどの穀類には、炭水化物だけでなく、たんぱく質、繊維質、ビタミン、ミネラルといった、さまざまな栄養素が含まれています。一方で、「小麦グルテン」「コーングルテン」といった、穀類からたんぱく質を取り出した原材料などもあります。

【そのほか】
 栄養以外の話になりますが、キャットフードの原材料に穀類を使う理由には、ドライフードの形を整えたり、ウエットフードにとろみをつけたりする目的もあります。とくに、ドライフードを製造する過程で、粒の形を保ち、砕けないようにするために欠かせません。」

「グレインフリー」のキャットフードのほうがいいのは一部の猫にだけ

 猫が穀物を消化できないのではないかと思っている猫の飼い主さんの間で「グレインフリー(穀物不使用)」のキャットフードへの注目が集まっているようです。しかしこれまでに述べたとおり、キャットフードに使用されている穀物は、消化できるように加熱調理されていますし、体内で利用できる量にとどめられているので問題ありません。

 それでも穀物を避けるべきなのは、穀物に対する食物アレルギーがある場合です。しかし、そのようなケースはあまり多くありません。また、グレインフリーをうたいながらも、コーンなどを独自の解釈で使用している場合もあります。穀物に限りませんが、避けるべき原材料がある場合、それが本当に入っていないか原材料表示をよく確かめて購入する必要があります。

 一方で、穀物の使用をさけたキャットフードは、炭水化物が少ないため、じゅうぶんなエネルギー量を確保するためにたんぱく質が多くなりがちです。そのため、体の機能の衰える高齢期には内臓に負担がかかることもあります。

 愛猫の健康状態にはどのようなキャットフードが適切なのか、メリット、デメリットを正しく把握して選んであげたいものです。

猫の体質に合ったフード選びを

 キャットフードを選ぶうえで大切なことは、愛猫の健康を維持できることです。第一に栄養バランスが整っていること、さらに、体調に合わせたものを選ぶことです。愛猫が現在健康であれば、成長段階(ライフステージ)に合った総合栄養食のキャットフードを選べば問題ないでしょう。

 加熱調理された消化性のいいでんぷんをキャットフードに使用することで、愛猫の栄養環境はバランスのいいものになりました。また、猫の死因の多くを占める慢性腎臓病の場合、食事のたんぱく質をできるだけ少なくする必要がありますが、このような目的の療法食には炭水化物が欠かせません。たくさんのエネルギーが必要となる授乳期の母猫にも、炭水化物を適切に含んだ妊娠・授乳期用のキャットフードを与えることで、授乳能力を上げたり、体重減少を防いだりすることができます。

 一方で、食物アレルギーがある場合には、アレルギーを起こしている物質(アレルゲン)を正しく避ける必要があります。アレルゲンになる物質はさまざまですし、体調に気になる点があっても食物ではなく別に原因がある場合もあります。推測でフード選びをせず、獣医師の診察も受けて不調の原因を正しく診断してもらい、フード選びのアドバイスを受けましょう。

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監修/徳本一義(獣医師)
へリックス株式会社代表取締役社長。大学卒業後、小動物臨床を経て、ペットフード会社で学術部門を担当。現在は、複数の獣医科大学の非常勤講師を兼任。ペット栄養学会理事。ペットフード協会新資格認定制度実行委員会委員長。

徳本先生

【参考文献】
※1: Meyer H, Kienzle E. Dietary protein and carbohydrates: Relationship to clinical disease. In: Proceedings. Purina International Nutrition Symposium, Orlando, FL, 1991: 13-26.
Kienzle E. Carbohydrate metabolism of the cat. 1. Activity of amylase in the gastrointestinal tract of the cat. Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition 1993; 69: 92-101.
Kienzle E. Carbohydrate metabolism of the cat. 2. Digestion of starch. Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition 1993a; 69: 102-114.
※2: Meyer H, Kienzle E. Dietary protein and carbohydrates: Relationship to clinical disease. In: Proceedings. Purina International Nutrition Symposium, Orlando, FL, 1991: 13-26.

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