連載の終了で僕は、燃え尽きた。布団をかぶって横向いて、昔の動画を見返す。子猫のころから今日までの、ししまるをめぐる旅の始まりだ。
動画をコマ送りすると、いろんな顔のししまるがいた。撮影当時も見ていたはずなのに。発見の喜びの数だけ、忘れていた記憶があった。
楽しかった思い出は、どうしてかぼんやりしてしまう。苦しかったことはずっと忘れないんだけれど。いつかはししまるのことさえも、ぼんやりしてしまう日が来るのだろうか。
すねが痒くなって手を伸ばすと、指先にフワッと毛がふれた。ししまる⁉︎と思ったら自分のすね毛だった。寝室のドアが開き、息子が出ていった。いつのまにやら朝だ。
朝食を運ぶ妻の足の間を、まるこに追われたししまるが抜けていった。いつもの猫たちのいつもの光景。そんないつもが、ずっと続けばいいと思った。
いつもの心地よさに包まれながら、僕は箱に飛び込むししまるをじっと見守った。
カーテンを開けると、朝日に照らされた猫の毛が舞った。くたくたの段ボールをはしによせる。くぼんだ座布団を拾い上げると、まだ温かだった。我が家には、ししまるの跡がいっぱいだ。
「渋ネコししまるさん」の連載は今回で終わる。4年間、ししまると向き合った良い時間だった。そんな事を書いているうちに僕は、また前向きな気持ちになった。こうしていつもししまるに助けられているのだ。これからも。
Taco(たこ)プロフィール
東京在住の漫画家・イラストレーター・キャラクタデザイナー。びゅうたびライターとしても活動中。
「ちいさな猫を召喚できたなら」「3匹のちいさな猫を召喚できたなら」「ぷっちねこ。」(徳間書店)など、好評発売中。「ちいさな猫を召喚できたなら」は重版後、中国版・韓国版・インドネシア版も発売。
現在、Web上では不定期に新作漫画を更新中。詳しくは以下のSNSへ。
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Tacoのインスタ:
@tacos_cat
ししまるのインスタ:
@emonemon
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@taco_emonemon