猫の「慢性腎臓病」は、発症するとゆるやかに進行し長い付き合いになるのが特徴。シニア猫の2~3匹に1匹はかかっているといわれますが、適切な治療を受ければ長生きできる猫も多くいます。
今回は、王子ペットクリニック院長の重本仁先生に慢性腎臓病にかかりやすい猫の特徴や病気の初期症状、治療法について教えていただきました。
猫の慢性腎臓病ってどんな病気?どうして猫に多いの?
「慢性腎臓病」とは、腎臓を構成する組織である「ネフロン」が壊れ腎臓の機能が低下し、血液中の老廃物を尿として体の外にうまく排出できなくなる病気です。一度壊れたネフロンは再生できないため、病気は徐々に進行していきます。
猫はもともと飲水量が少ないため、尿が濃く、腎臓に負担がかかりやすい動物です。また、肉食動物でタンパク質を多く摂るため、代謝の過程で老廃物が多くつくられ、腎臓の負担が大きくなります。さらに猫のネフロンの数は犬の約半分であることが知られており、これらの理由から猫は腎臓病を発症しやすいとされます。
慢性腎臓病にかかりやすい猫は?
猫の腎臓の機能は、個体差はありますが8才以上になると衰え始める傾向にあります。そのため、8才を超えたころから、慢性腎臓病になるリスクは上がってくるといえるでしょう。
また、以前に尿石症にかかったことがある猫も慢性腎臓病になりやすい傾向があるので要注意です。
ほかにも「遺伝的に腎臓の発達が悪い」「血圧が高い」「自己免疫疾患をもっている」「ウイルス感染症にかかっている」「急性腎不全になったことがある」猫なども慢性腎臓病にかかりやすいようです。
慢性腎臓病の初期にみられる症状は?
水を飲む量が増えた
水を飲む量が増えるという変化は飼い主さんでも気が付きやすい症状。飲む水の量がふだんの1.5倍以上に増えたら、慢性腎臓病などの病気を疑ってください。
オシッコが多く、色が薄い
オシッコの量や回数がふだんの2倍以上になった場合は要注意。その際、オシッコの色が薄くなっていないか注意して見てあげましょう。慢性腎臓病では腎臓機能が低下して尿が凝縮できなくなるため、色の薄いオシッコをたくさんするようになります。
ほかにも、便秘になる、食欲が落ちる、ときどき嘔吐する、貧血になるといった症状がありますが、これらの症状が出るのは腎臓が66%以上機能しなくなってから。少しでも気になることがあれば早めに動物病院を受診しましょう。
慢性腎臓病の治療は?
食事療法が基本
慢性腎臓病の治療は、食事内容を変更して腎臓への負担を減らし、加えて水分補給をして脱水を防ぐことが基本。フードを低タンパク質・低リンの腎臓病の療法食に切り替えるほか、場合によっては補水液を与えて水分補給を行います。
そのほか、脱水症状を改善し尿毒症を防ぐために、皮下輸液(点滴)治療が行われることもあります。また、動物用血液透析装置を導入する動物病院も。人の腎臓病では一般的な血液透析と同様に、本来の腎臓の代わりに機械で人工的に血液の老廃物を除去します。
慢性腎臓病は付き合っていかなければならない病気ですが、早い段階から適切な治療を始めれば長生きできる猫もいます。少しでも早期発見につなげるため、小さな変化を見逃さないよう、ふだんから愛猫の飲水量やオシッコの量などを観察しておきましょう。
参考/「ねこのきもち」2017年11月号『飼い主さんに「できること」が増えている! 慢性腎臓病最前線』
文/Yoko N
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。