猫の困った行動としてお悩みの飼い主さんも多い“噛み癖”。一度ついた噛み癖を直すのは大変ですが、正しい対処法を根気強く続けていれば、直すことも可能だそう。
今回は、猫が飼い主さんを噛んでしまう理由や噛み癖の直し方について、ねこのきもち獣医師相談室の藤井亜希奈先生に教えていただきました。
猫が噛む理由は「怖いから」「お願いしたいから」「獲物みたいだから」の3つ
「怖い」と思って噛む場合
警戒心の強い猫は、過去に怖い目にあったことがある場合や、危険があると判断したときに、身を守ろうとして相手を噛むことがあります。たとえばお手入れをしているときや、抱っこしたとき、寝ているところを起こしたときなどが当てはまります。
「お願い」したくて噛む場合
自分がしたいことがあったときに、たまたま噛んだらその欲求が満たされたという経験があると、これを学習して繰り返すようになることがあります。たとえば飼い主さんを起こすときや、フードを欲しがっているとき、遊んでほしいときなどが当てはまるでしょう。
「獲物みたい」と思って噛む場合
飼い主さんの手や足が獲物のように見えて、噛んだり追いかけたりしてしまうことがあります。飼い主さんと遊んでいるときやじゃれているときなどが当てはまります。
噛む理由それぞれに合った対処をしよう!
「怖くて噛むコ」には、怖いものとの距離を縮めさせよう
怖さが原因で噛んでしまう場合は、怖いものとの距離を少しずつ縮めさせましょう。たとえばブラシが怖い猫には、逃げなかったらおやつを与えるなどして徐々に慣れさせます。また、必要なお手入れは最小限にして分割して行いましょう。
「お願い噛みするコ」には、噛まれる前に欲求を満たそう
愛猫の欲求が高まる前に先回りして、欲求を満たしてあげるようにしましょう。たとえば空腹を感じる時間を減らせるようにフード量を細かく分けて与えたり、しっかりと遊んで狩猟本能を満たしてあげたりするのもよいですね。
「獲物と思って噛むコ」には、遊び方を工夫しよう
飼い主さんの手や足を獲物と思って噛んでしまう場合は、飼い主さんの手や足で直接遊ばないようにしましょう。おもちゃはひもや竿が長いものを使うのがおすすめです。
噛み癖は、正しい方法で根気強く対応すれば修正可能!
噛んできた愛猫に対して叩き返したり、大きな声や身振りで「ダメでしょ○○ちゃん!!」と言ったりすると、愛猫が「怖い」「近づくと嫌なことが待っている」と感じてしまい、信頼関係が悪化するだけでなく、噛む行動がひどくなる場合があります。噛み癖を矯正させることは容易ではありませんが、根気強く対応することで修正は可能でしょう。
ただし、家族一丸となって対応しなければ愛猫も混乱してしまうため、対応方法については家族で話し合い、統一する必要があります。
もしも噛まれてしまったら……小さな傷も侮るべからず!
猫の歯は細長く、噛まれた跡も一見すると小さな傷に見えてしまいがちです。そのため表面は治っているように見えても、より深部のほうで細菌感染などが起きると膿んだりひどく腫れ上がったりすることがあるのです。また、人にも感染してしまうような人獣共通感染症と呼ばれる病気になる危険性もあり、なかには非常に重篤な症状のために亡くなってしまうケースもあります。自己判断はせず、必ず病院を受診し、「猫に噛まれた」ということを伝えましょう。
猫の噛み癖は、子猫時代の社会化がうまくいかなかった場合や、噛みつきに間違った対応をしてきた場合についてしまう傾向があります。
一度ついてしまった癖を直すのは大変ですが、噛み癖をそのままにしておくのも困りもの。家族の協力も得ながら、改善していけるといいですね。
(監修:ねこのきもち獣医師相談室 獣医師・藤井亜希奈先生)
取材・文/緒方るりこ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。