猫と暮らす
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NPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」の活動。不幸な猫を1匹でも減らしたい、増やさないという想い
※記事内容は2022年9月10日現在のものです。
猫の諸問題に取り組む。拠点はツキネコカフェ
代表の吉井美穂子さんは、NPOの立ち上げ以前から、保護猫カフェを運営していました。じつは手探り状態での船出だったそうです。カフェとしての赤字はかさむ一方でしたが、保護猫活動の仲間は増え、2012年、仲間たちの後押しを受けNPOを立ち上げ、保護猫活動を本格化させることに。するとメディアでも取り上げられ、猫のために活動したいというボランティアさんも急増しました。
元々美容室の経営者でもある吉井さんは、お客さんの話を聞き、人と人を繋ぐアンテナと行動力がありました。まず、猫の相談窓口や話を聞いてくれる場所の必要性を実感して、北海道で初めての電話相談窓口を設けます。猫を飼いたいけれど年齢を理由に断られ悲しんでいた高齢者の話を聞き、譲渡ではなく猫を預ける制度も始めました。経営的には赤字続きで、苦しいことが多くても、「辞めたいと思ったことはなかったですね」と吉井さん。
コロナ禍で店舗の休業が続くと、早々にスタッフたちとそれまで以上に議論を重ね、SNSの更新や配信に力を入れ、オンライン譲渡会、オリジナルグッズの制作・販売等を行い、2020年度は猫の保護数も譲渡数も例年数を上回ったのです。
たくさんの仲間と不幸な猫を減らす活動
奥行きがあるツキネコカフェの店内は、入り口付近でグッズなどの販売があり、その奥に子猫がメインの部屋、2階にはエイズキャリアの猫が暮らす部屋、子猫から成猫までが暮らす大部屋、ケアルームがあります。どの部屋も清潔で、朝夕に清掃を行うボランティアさんの活躍が光ります。
2021年度、新しい飼い主さんの元へ巣立った猫は477匹いますが、保護されてやってきた猫は558匹。保護数が多くなると猫たちもストレスを抱えるので、子猫が増えると、預かりボランティアさんの元でお世話をしてもらいます。
猫の世話以外にも、脱走猫の捕獲、TNR活動(ノラ猫を保護し不妊手術をして元の場所に戻す)、多頭飼育崩壊現場でのレスキュー、寄付された荷物の仕分け、百貨店などで行うイベントの準備、SNSでの情報発信など、活動は多岐にわたります。
「飼う」ではなく「預かる」という制度
そこで猫を譲渡ではなく、預けるというカタチにして、もしも年齢や病気が理由で猫を飼えなくなったら、再び引き取ればいいと、独自の「永年預かり制度」(面談有)をつくったのです。
この制度を使って、2021年度までの6年間に230匹の猫が新しい飼い主さんの元へ。戻ってきた猫は6匹だけ。譲渡とほとんど変わりませんが、飼い主さんにとっては、ツキネコ北海道の「猫の永年預かり証明書」を持っていることが大きな安心なのです。猫を預かりたい方は、まずスタッフと面談。ご本人が猫を選ぶのではなく、スタッフがその方に合った猫を紹介するというやり方。「永年預かりは人も猫も幸せになれる制度。全国に広がるといいですね」とは利用者さんの言葉。シニア世代に喜ばれています。
北海道で初めての保護猫相談窓口を開設
最近増えているのが、飼育放棄、飼育継続困難の相談で、飼い主本人、家族、近所の方だけでなく、ケアマネージャーさん、包括支援センターなどの福祉に関わる方たちからの相談も多くなりました。「相談を受けるたびに、猫の問題の解決の難しさを感じます。猫の問題の根底には、必ず人間サイドの問題がある。人間が猫の適正飼養をすれば多くの猫の問題が解決へと向かうはず」と吉井さん。
スタッフは相談に応えようと各地を走り回っています。うれしいことに現在、北海道内には利尻島、せたな町、千歳市、北広島市、小樽市などにツキネコ北海道と志を同じくする仲間グループが増え、連携しての活動もできるようになってきました。道内の保護猫活動も少しずつ広がり始めています。「不幸な猫を1匹でも減らしたい、増やさない」。この願いのため、ツキネコ北海道は活動を続けます。
出典/「ねこのきもち」2022年10月号『ねこのために何ができるだろうか』
撮影/後藤さくら
構成/犬神マツコ
※この記事で使用している画像は2022年10月号『ねこのために何ができるだろうか』に掲載しているものです。
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