2023年8月、広島空港の近くにリニューアルオープンした広島県動物愛護センター。多くの人に訪れて欲しいと週末イベントにも力を入れています。命を学ぶ場所、譲渡につなげる施設へと新しい歩みを始めたセンターを紹介します。
*記事内容はすべて、2023年10月1日現在のものです。
収容された猫や犬の譲渡を促す施設へ
三原市の広島空港の近くにリニューアルオープンした広島県動物愛護センター(以下センター)。以前のセンターが建設されたのは昭和55年。当時は収容する犬や猫が年間2万匹以上と非常に多く、殺処分を前提につくられた施設でした。そのため、収容した犬や猫は同じ部屋で、檻を隣り合わせに管理されている状況でした。慣れない環境なうえ、ほかの動物がすぐ近くにいることは、猫にも犬にもストレスだったはずです。
新しいセンターは、広島県の目指す「人と動物との調和の取れた共生社会」を実現するための拠点へと変わりました。殺処分する施設ではなく、収容された猫や犬の譲渡促進のための施設です。敷地内には譲渡会やイベント会場になる芝生広場の「ホワイトフォックスふれあいパーク」、木造建ての建物内には譲渡希望者向けの講習会などを開催する「ブルーヴ研修室」、新しい飼い主さんを待つ猫や犬が生活する部屋や触れ合いスペースもある「アイディオー譲渡犬猫展示室・ふれあい室」、図書コーナーなどがあります。一部の部屋に天窓があり、優しい光が室内に広がり、猫たちが快適に暮らせる工夫がされています。
「ふれあい室」で猫と実際に触れ合って
「猫を飼いたいとセンターを訪れる方が、どの猫にしようか迷っている場合は『ふれあい室』で、実際に猫と触れ合ってもらいます。ふだんお世話をしている職員が『このコはこんな性格ですよ』と説明もしています」とセンター愛護管理課主査で、獣医師の森中重雄さん。その時々によって収容している猫の数は異なります。取材当時、センターにいた猫は全部で10匹。うち3匹は収容されたばかりなのでこれから検疫を受けます。残り7匹は健康状態が確認できましたが、まだおびえているコが多いので、譲渡に向けた準備が整っているコは1匹のみでした。譲渡できる猫はホームページに掲載しているので確認して会いにきて欲しいとのことです。
「猫専用の検疫室、保護室、譲渡展示室、隔離室もあり、各部屋には空調を完備しています。旧センターではスペースの関係で使用できなかった3段ケージを設置して、上下運動ができるようにしています。収容された猫の環境を考えるとこうした設備は、私たち職員の念願でもありました」。また、センターをもっと身近に感じて欲しいと作られた図書コーナー。「猫たちの現状を、本を見にきたついでにでも知ってもらえたらと思います」と森中さんは話します。
お話しをお伺いした人/広島県動物愛護センターのスタッフさん
出典/「ねこのきもち」2023年12月号『ねこのために何ができるのだろうか』
撮影/Akimasa Harada 写真提供/広島県動物愛護センター
取材/小出広子
※この記事で使用している画像は2023年12月号『ねこのために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。