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「にゃんとかせんば!」と立ち上げた地域猫活動

「猫の街」と称されることの多い、長崎県長崎市。観光客にとっては猫と出会える楽しみがありますが地域住民にとっては大きな課題が…。「にゃんとかせんば!」と新たな活動を立ち上げたナガノユウコさんに話をお聞きしました。

*記事内容はすべて、2024年4月1日現在のものです。

大きく膨れ上がった〝猫″という町の課題

長崎港を中心に三方を山に囲まれた坂の街・長崎市で、異国情緒あふれる長崎居留地を臨む斜面に広がるのが出雲町です。8年前、出雲町の西地区に引っ越してきたナガノユウコさんは、すぐに気付いたことがあったそう。それは、高齢化と目立つ空き家、そして増え過ぎた猫という地域の課題。

「猫に関して、住民は糞尿の問題や発情期の鳴き声、次々と生まれる子猫に困っていました。一方、猫は人に追い払われながらも懸命に生きていて、何も悪くありません。それなら、私が人と猫が共存するための仲介役になれないか、と」 。

聞けば、ナガノさんはその数年前に迷い猫を保護し、生まれて初めて猫の可愛さを知ったのだそう。出雲町に住み始めてから何かできることはないかと調べ、世間にはTNR(捕まえ、不妊手術し、元の場所へ戻す)という活動があることを知ったと言います。

「まずは身近にいた猫のお世話をしながら、TNRを実践してみました。最初は捕獲器を使うのが怖かったので、何カ月もかけて猫と仲よくなって、キャリーバッグに入れて捕獲して (笑) 。でも、しばらく1人でやってみて、労力も金銭面も大変だし、何より私だけの力では課題の根本的な解決にはつながらないと思いました」 。

そこで、ナガノさんが訪れたのは自治会長のもとでした。ナガノさんの「一緒にやりませんか?」という提案に、猫対策に苦慮していた自治会長も「じゃあ、やってみるか」と即答。かくして’21年10月、地域猫活動「にゃんとかせんば出雲西」が始動しました。
写真提供/nfs cats
自宅の庭で地域猫にゴハンをあげる、ナガノユウコさん。この家に引っ越してきたとき、すでに何匹かの猫が庭に住み着いていたそう 撮影/栗田萌瑛

地域猫活動の第一歩、TNR活動

自治会とともに「にゃんとかせんば出雲西」を立ち上げたナガノさんが、最初に取り組んだことはTNRの促進。それまで、自治会としては「猫に〝えさ″を与えないように」と注意喚起してきましたが、地域住民の中には肩身の狭い思いをしながらも、こっそりと猫にゴハンを与えている人たちがいました。そのうち3名の方に会いに行ったナガノさんは、「いつもゴハンをあげてくださっているのですね」と感謝の言葉を添えながら、TNR活動について説明し、今後の協力を仰いだそうです。

「猫をかわいそうに思ってゴハンをあげてくださっていた方々ですが、不妊手術まではなかなかできず、数が増えていくことに不安を感じていた人もいました。そこで私たちが不妊手術を担い、その後のお世話は続けていただくことに。活動開始から2年間は、長崎市の助成制度『まちねこ不妊化推進事業』(自己負担額1匹2千円)と長崎県獣医師会の支援制度(全額補助)を利用して、計70~80匹をTNRしました。3年目となる’23年度は、全35匹。獣医師会の支援が休止してしまったので、市の助成のみで乗り切りました」。

ちなみに、にゃんとかせんば出雲西の活動費は、すべて自治会が負担することになっているそうです。そんなTNR活動と並行して、ナガノさんは地域みんなで猫を飼うための〝仕組み作り″を進めていきました。
写真提供/nfs cats
発見したときはガリガリだった母猫も朝夕のお世話で回復
写真提供/nfs cats
自治会の「定例ねこ会議」の帰り道の風景。以前は猫を見かけると追い払っていた自治会長も、今ではすっかり猫を愛でるように
お話をお伺いした人/nfs cats ナガノユウコさん
出典/「ねこのきもち」2024年6月号『猫のために何ができるのだろうか』
写真提供/nfs cats
取材/野中ゆみ
※この記事は2024年6月時点の情報であり、現在と異なる場合があります。
※この記事で使用している画像は2024年6月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。
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