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【獣医師監修】猫の怪我の主な原因と注意する部位|治療法や費用

愛猫が怪我をした! そんなとき、あなたは冷静に対処できる自信がありますか?今回は、猫の怪我について解説します。原因と症状、怪我の種類、確認方法、応急処置、動物病院での診察や治療費、やってはいけないことや猫の回復力についてみてみましょう。

後藤 瞬 先生

 獣医師
 相模原プリモ動物医療センター第2病院勤務

 東京農工大学農学部獣医学科(現 共同獣医学科)卒業

●資格:獣医師

●所属:日本獣医皮膚科学会日本獣医がん学会動物介在教育・療法学会

●主な診療科目:一般診療(外科、内科)/麻酔科

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猫の怪我|主な原因と症状

治療中の猫
getty
猫の怪我は、咬傷(ケンカ傷)や交通事故、転落などが原因になることが多いです。とくに、外で自由に暮らしている猫や、家の中で飼っていても外に出ていってしまう猫は、怪我をしやすい傾向にあります。まずは、怪我の種類や原因をみていきましょう。

噛み傷や引っかき傷

原因


縄張り争いや発情期のメスの取り合いによって、猫同士がケンカをすることがあります。そのケンカをするのは、去勢手術をしていないオス猫が多いでしょう。猫同士のケンカの場合、武器となるのは歯や爪なので、噛み傷や引っかき傷を負ったり負わせたりすることになります。

症状


・噛み傷
猫の犬歯は、長さがあり鋭く尖っていて噛む力も強いため、犬歯で噛まれた傷は、筋肉まで達する場合があります。しかし、猫の体表は毛に覆われているので、出血を伴わないと傷に気付かないことも。また、すでに傷口がふさがっていても、皮下で細菌感染を起こして炎症をおこしたり膿が溜まって腫れたりするケースも考えられます。傷口が化膿する前に、動物病院を受診するようにしてください。

・引っかき傷
爪で引っかかれた場合は、噛み傷に比べ軽度なことが多いです。しかし、ケンカによって引っかかれやすい目は、角膜に傷がついてしまう恐れがあります。猫にケンカをした様子がみられたら、目に傷を負っていないか、目が閉じたままになっていないかを確認しましょう。

捻挫

原因


捻挫は、高いところからの落下や足場が悪いところで滑る、人に踏まれる、ドアに挟まれるなど原因はさまざまです。家の外だけでなく、部屋の中でも起こる可能性があるので注意してあげてください。

症状


捻挫は、関節を無理に曲げたことが原因で、関節をつないでいる靭帯(じんたい)が引きのばされた状態を指します。靭帯が引きのばされると、その部分が損傷し炎症、そして、痛みや腫れ、発熱を引き起こすのです。
一般的に猫の捻挫は、以下のように3段階に分けられます。

Ⅰ度:靭帯の繊維が細かく引き裂かれた「軽度捻挫」
Ⅱ度:靭帯の一部がちぎれた「部分断裂」
Ⅲ度:靭帯が二つに切れた「完全断裂」

体の内部なので見た目には分からないかもしれませんが、腫れがみられたり熱をもったり、足を引きずって歩くようなら獣医師の診断が必要です。

骨折

原因


交通事故や高い場所からの落下、猫同士のケンカ、人に踏まれる、栄養失調、病気による骨密度の低下、肥満などで骨折することがあります。

症状


骨折とは、骨が損傷を受けた状態を指し、主に以下のような種類に分けらます。

・骨にひびが入った「亀裂骨折」
・骨に付いている筋肉や靭帯が強い力で引っ張られたときに起こる「剥離骨折」
・骨が強い力で押しつぶされる「圧迫骨折」
・折れた骨が皮膚を突き破り外に出てしまう「開放骨折」 など

捻挫と同じように見た目には分かりづらいことがありますが、猫の歩き方がおかしかったり特定の部位を痛がったりした場合は、動物病院へ連れて行きましょう。

特に注意すべき怪我の部位と種類

包帯猫
getty

眼の怪我

部位にもよりますが、眼の怪我は治りが悪いことが多く、場合によっては失明につながることもあります。眼球や顔の周りに怪我をしている場合は異常がないかを確認し、少しでも様子が変だったら動物病院で検査を受けましょう。注意したい眼の症状は以下の通りです。

・眼をシパシパさせている
・眼が開けづらい(開けられない)
・涙や目ヤニが多い
・眼の表面が白くなっている
・充血している(眼の白い部分が赤くなっている) など

眼に異常がみられた場合は、かいたり擦ったりして傷を悪化させないことが重要です。症状がある場合は、見ていない間に擦ったりすることが多いので、可能な限りエリザベスカラーをつけるようにしましょう。

首の怪我

猫はケンカの際、本能的に首を噛む習性があるため、首は猫同士のケンカで怪我をしやすい場所のひとつです。噛み傷の場合は、小さな傷に見えて実は深い傷であることがあるので、傷の周りが腫れていたり元気がなくなっていたりする場合は病院に連れていってください。
傷が小さく腫れもなくて元気や食欲がある場合は、傷の周りを毛刈りしてから傷を洗浄して様子を見てもよいでしょう。

お腹の怪我

お腹の怪我は多くはありませんが、猫は本能的にお腹を守るため、お腹に怪我をしているときは他の場所にも怪我をしている可能性が考えられます。また、深い傷の場合は、お腹の中まで傷が及んでいることがあり、緊急手術や入院が必要になることもあるでしょう。
お腹に怪我をしている場合は、交通事故や落下事故が原因の可能性もあり、骨折や内出血を起こしていることも。よく注意して猫の様子を観察してください。

手足の怪我

手足の怪我も、交通事故や落下事故の可能性があります。骨折や内出血の可能性があるので、猫の元気がなかったり歩き方がおかしかったりする場合には、必ず動物病院を受診しましょう。

怪我の確認方法と応急処置

眼を拭く猫
getty
それでは、特に注意が必要な怪我の部位と種類について以下解説します。

怪我の確認方法

見て触って確認


猫が怪我をしている恐れがあるときは、全身をよく確認することから始めます。怪我をしている猫は気がたっていることが多いので、人が怪我をしないように十分注意してください。可能であれば全身をよく触って確認していきます。痛がったり嫌がったりする部位があれば、その部分は特に注意して確認しましょう。乱暴に触ったり、猫が嫌がって暴れたりすると怪我を悪化させることになりかねないので、無理のない範囲で行うことがポイントです。

毛を刈って確認・洗浄する


見てわかるような傷を見つけたら、できるかぎりその周りの毛をペット用バリカンなどで刈って、傷の状態を確認します。そして、周囲に傷が無いかを確認しながら、傷と傷の周りを清潔な水で洗浄してください。

猫の怪我の基本的な応急処置

出血が少ない場合は、傷口に清潔なガーゼを当てて止血します。擦り傷のようなものであれば、そのままにしておいてもすぐ良くなってくることが多いですが、噛み傷や引っかき傷などは、小さくても深い傷だったり、化膿する可能性があるので、動物病院を受診するようにしましょう。

応急処置でやってはいけないこと

見つめる猫
getty

無理な体勢を取らせると急変することも

飼い主さんの判断で、絆創膏を貼ったり、包帯を巻いたりするのはやめましょう。また、怪我は見える場所だけとは限りません。傷を確認しようとして無理に押さえつけると余計具合が悪くなってしまうことがあるので注意してください。
さらに、大きな内出血をおこしている場合や、重度の感染を起こして弱っている場合には、無理な体勢を取らせるだけで急変してしまうこともありますので、慎重に様子をみましょう。

飼い主さん判断の投薬は絶対にNG

飼い主さんの判断で、人用の抗生物質や痛み止めなどのお薬を飲ませるのは絶対にやめてください。猫は人より遥かに小さいだけでなく、体内のお薬の代謝や効果が違うことも多いです。そのため、効果が出ないだけではなく、予期せぬ副作用が出てしまうこともあります。必ず獣医師から処方された薬を投与しましょう。

猫の怪我の治療法・治療費

診察中の猫
getty

動物病院での治療法

動物病院では全身をよく検査し、怪我の大きさや種類を見極めたうえで必要な処置を検討します。状況によってはレントゲン検査や超音波検査、血液検査、さらには手術が必要になることもあるでしょう。
また、病気が原因で怪我をしてしまったという場合もあります。今までかかったことのある病気や、怪我の前後で様子が変わったことがあれば必ず獣医師に伝えてください。その場合は、手術などのリスクも変わってきますし、治療方針も変わる可能性があります。

猫の怪我の治療費

怪我の治療は、傷の大きさや種類によってさまざまです。また、費用は病院や地域によっても異なりますので、あくまで目安としてお考え下さい。

小さな外傷であれば毛を刈って洗浄する程度で、費用は1,000円~3,000円程度。加えて、抗生物質等の飲み薬が必要だと判断されれば、薬代として1週間分で1,000円~3,000円程度かかるでしょう。薬の種類によってはもう少し費用がかかることもあります。

大きな怪我の場合は費用がさらに上がることが考えられます。必要な処置に応じて獣医師に相談しましょう。主な治療法としては、傷んだ組織の除去や縫合、さらに手術前後の管理として、感染防御と全身状態の安定化が必要です。場合によっては数日から数週間程度の入院が必要になるケースもあります。

猫の怪我の回復力

伸びる猫

エリザベスカラーの重要性

猫は傷が気になると、引っ掻いたり舐めたりします。猫の口の中や爪の間には、多くの雑菌がいるため、傷口から菌が入り込んで感染した個所が腫れたり化膿したりする場合があるので注意しましょう。そんなときに役立つのが、エリザベスカラーです。
動物病院で治療した後につけてくれますが、固いプラスチック製のものは、慣れない猫にはストレスになるかもしれません。その場合は、柔らかい材質のエリザベスカラーもあるので、検討してみてもよいでしょう。

回復力

病院や自宅で行う治療のほとんどは、猫自身の回復力を助けてあげるに過ぎません。そのため、損傷が大きいと猫自身の回復力では間に合わないこともあります。また、回復力はあくまで体調が良く免疫力が十分にある状態で発揮されるので、体調が良くない猫や高齢の猫、もともと何かしらの病気を抱えている猫は回復が遅れるケースもあります。

しかし健康な猫は、小さな怪我程度なら自然に治せる回復力を持っています。猫の回復力には驚かされることも多く、怪我や手術後の傷であっても、予想を上回る速さで治癒することもあります。まずは、獣医師から適切な治療をしてもらい、愛猫の回復力を上げ怪我を早く治してあげましょう。

小さな怪我でも気付いてあげたい

外の猫
getty
外に出てしまう猫にとって、怪我は日常茶飯事かもしれません。しかし怪我は、見た目より大きなダメージを猫に負わせている可能性もあります。猫は怪我や病気を隠すのが上手な動物なので、小さな傷でも油断せずに、猫の食欲がなかったり、いつもと違う様子だったりするときは、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。
また、傷口から雑菌が侵入する感染症にはワクチンで予防出来るものもあるので、外に出てしまう猫の場合には獣医師と相談しながら、ワクチンを接種することも大切です。

間違った知識で手当てをしては、回復が遅れるばかりでなく状態を悪化させかねません。愛猫と健やかに過ごすために、正しい知識を身に付け、迷ったら獣医師へ相談してください。
参考/「ねこのきもち」2016年9月号『相場や、気になるペット保険についても 読者DATAからわかる 治療費事情のホント』(監修:Pet Clinicアニホス院長 獣医師 弓削田直子先生)
監修/後藤瞬先生(相模原プリモ動物医療センター第2病院勤務)
文/HONTAKA
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
※治療費についてはあくまで目安なので動物病院にご確認ください。
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