猫が痙攣を起こしている! こんなとき、あなたならどうしますか? 猫の健康トラブルが起きた際、まず役に立つのは知識です。今回は、愛猫が痙攣を起こした場合の対処法や痙攣の原因、痙攣から考えられる病気や予防法を解説します。
猫の痙攣への正しい対処でパニックを回避!
愛猫が突然痙攣を起こしてしまった場合、普段と異なる様子にパニックになってしまう飼い主さんもいるでしょう。正しい対処法を知っておくことは、いざというときの冷静な対応につながります。具体的にどのように対応すればいいのか確認していきましょう。
周りにあるものを片付ける
痙攣中の猫は予測のできない動きをします。猫の周囲を見渡して、ぶつかったらケガをしてしまいそうなものがあれば、遠ざけておきましょう。キャットタワーなど高所で痙攣を起こした場合は、落ちてしまわないように気をつけてあげてください。
落ち着いて観察する
痙攣の原因は脳の問題(脳炎、脳腫瘍、脳梗塞など)によるものと、脳以外の問題によって引き起こされるものがあります。大きな声を出したり、ゆすったりして刺激してしまうと、より状態を悪化させてしまうおそれがあるので、まずは落ち着いて見守りましょう。
時間を計り、できれば動画撮影を
痙攣中はとにかく慌てず、猫の様子を冷静に観察することが重要です。もし余裕があれば、痙攣の状態を動画で撮影しておきましょう。受診時に口だけで説明するよりも、正確に獣医師に症状を伝えることができます。
痙攣が1分以上続いたら緊急受診
緊急性が低いケース
- 痙攣が1分以内でおさまる
- おさまった後、痙攣を繰り返さない
- 痙攣が起きたあと、猫のようすがいつもと変わらない
痙攣を繰り返さないときは無理に夜間救急まで行かず様子を見てもいいですが、痙攣が1分以上続いた場合はすぐに受診を検討してください。
緊急性が高いケース
- 痙攣が1分以上続いている
- 何度も痙攣を繰り返す
- 痙攣がおさまったあと、ぐったりしていて元気がない
- 痙攣後意識が戻らず、声をかけても反応がない
こういった症状が表れた場合は、放っておくと後遺症が残るおそれもあります。最悪の場合、命にもかかわるため、できるだけ早く獣医師の診察を受けて適切な処置をしてもらいましょう。
猫の痙攣の診断・治療・予防について
猫の痙攣で受診した場合、まず問診、身体検査、神経学的検査、血液検査などをおこなうのが一般的です。また、「症候性てんかん」と「特発性てんかん」を判断する際はMRIが必要となります。
痙攣の治療法
痙攣発作が脳の病気によって引き起こされる場合、多くは“抗てんかん”薬を使用して治療をしていきます。加えて病気に応じてステロイドや利尿薬の処方、脳腫瘍の場合は手術や放射線治療などをおこなうことも。
治療には原因を治療する「根本的治療」と、症状を抑えたり緩和したりする「保存療法」がありますが、現状として根本的治療は難しく、保存療法が中心となります。また「特発性てんかん」の根本的治療はいまのところ存在しません。
痙攣発作の予防法
とくに異常がなくても年に一度は健康診断を受けること、猫が食べてはいけない食べものを遠ざけ誤飲誤食をさせない、高い音を出すときは猫がそばにいないか確認するなど、日ごろから気にかけておきましょう。また、てんかん発作はストレスが関係しているともいわれています。猫がストレスをためない環境づくりも大切です。
猫の痙攣ってどんな症状?
猫の痙攣は、猫が意識のない状態となり、ピクピクと小刻みに震えるような動作をして泡を吹くなどする症状です。前兆となるようなものはほとんどなく、突然起こることが多いよう。多くの場合は、数分程度で治まります。
猫の痙攣の原因となるおもな病気や刺激とは
猫の痙攣はおもに「脳の異常・病気」「脳以外の異常・病気」「痙攣ではない場合」の3つに分けられます。
病気以外では熱中症によって起こる場合や、低血糖による場合も。とくに子猫などは下痢や食欲不振によって低血糖になりやすく、すぐに治療することが大切です。
ほかにも、ワクチンの接種でアレルギー反応を起こしたり、イギリスの研究では甲高い金属音に対し高齢の猫が発作を起こしたりする可能性があることもわかっています。(「FARS」猫科動物聴覚原性反射発作)
腎臓病(尿毒症)
急性、もしくは慢性の腎不全などの腎臓病になると、体外に排出されなければならない有害な物質が体の中に溜まってしまいます。ひどくなると嘔吐や下痢などの症状をともない、急性の場合はけいれんなどを起こすことも。このような症状が出てくると死に至るおそれもあるため、早急な治療が必要とされています。
脳炎
真菌やウイルスへの感染など、何らかの原因によって脳に炎症が起こる病気です。炎症が起きている部位によって症状は変わってきますが、元気がなくなる、痙攣、食欲不振、歩行の異常などがあげられます。
脳腫瘍
高齢の猫に多くみられる脳腫瘍。腫瘍の種類によっては、若齢から中年までの猫で発生が多いものもあります。特徴的な症状が出にくく、なんとなく元気がなかったり、痙攣やしゃっくりが増えたり、視力や歩行に異常がみられたりするようです。
水頭症
水頭症とは、脳脊髄液が何らかの原因で脳室に過剰に溜まってしまい、脳内を圧迫して障害を起こす病気です。猫の場合は先天的なものが多く、子猫によくみられます。痙攣をはじめ、元気がなくなる、視力の異常が起きる、頭の上の部分がドーム状に膨らむなどの症状があらわれます。
てんかん
- 症候性てんかん(脳炎・脳腫瘍・水頭症・脳出血・脳梗塞・外傷等による)
- 特発性てんかん(明らかな原因がない)
てんかんとは、
突然意識を失って倒れて痙攣を起こす病気で、痙攣中によだれや泡が出てくることがあります。てんかんには、原因不明の「特発性てんかん」と、ウイルス感染症や水頭症などが原因で起こる「症候性てんかん」の2種類があり、特発性てんかんには遺伝的素因もあると考えられているようです。
中毒
中毒は、アボカドなどの食品による自然毒や、殺虫剤などの薬品、細菌の毒素などの影響によって起こります。カフェイン入りの飲み物を口にしてしまった場合、量によっては急性中毒になり、痙攣を起こすおそれも。
痙攣ではない場合
- 睡眠中のピクピク
- 震え(寒さ・高齢の猫の筋力低下)・病気や炎症による痛み
睡眠時のピクつきは基本的に問題ありませんが、起きているときにピクつきがある場合は神経症状の可能性もあるので注意が必要です。
震えが見られる場合、重要になってくるのは
意識があるかないか。もし猫が意識を失い震えているようなら、痙攣の可能性が高いです。高齢の猫であれば筋肉量の低下による震えもあるので、まずは落ち着いて意識の確認をおこないましょう。
受診しなくても問題がないケース
寝ている間に、ピクピクと痙攣のような動きをすることがありますが、ほとんどの場合これは痙攣ではなく「夢を見ていて少し動いているだけ」だと考えられています。
その他、痙攣を伴うことのある病気についてはこちらもご覧ください。
猫の痙攣は病気の末期症状の可能性も
死亡率の高い猫伝染性腹膜炎(FIP)では、痙攣などの神経症状がみられることがあります。また先述したように、腎不全による尿毒症末期で痙攣が引き起こされることも。日ごろから 食欲の低下や体重の減少、口臭がないかなど日常的に気にかけてあげてください。
痙攣が直接死亡原因になる場合
“てんかん重積”といって、てんかん発作が長時間続いたり、反復して繰り返したりするような場合は、身体がショック状態になり死に至る危険性がありますので、発作が長く続く場合は動物病院を受診しましょう。また、てんかんなどによる痙攣時は体の自由がきかず意識がなくなることも。このため、落下やケガなどのリスクがあり、安全な場所で見守ってあげることが必要です。
心配であれば迷わず受診を
猫が痙攣を起こした際、すぐに病院に行ったほうがいいのか気になりますよね。もし判断に迷う場合は、ためらわず動物病院に行くことをおすすめします。もし心配のいらない痙攣だった場合でも、獣医師に「心配いらない」という診断をもらえたほうが、自己判断で大丈夫だと思いこむよりも安心できるはずですよ。
参考/「ねこのきもち」2015年9月号『3号連載 猫に多いオシッコ系の病気シリーズ 第3回(最終回) 若い猫でもシニア猫でも 飼い主さんが一番わかっておきたい 慢性腎不全という病気』
「ねこのきもち」2016年6月号『空前の猫ブーム! 人は一体、猫のどこまで知っているの? 11年でわかった猫のこと』
「ねこのきもち」2017年4月号特別付録『シーン別 愛猫の緊急時対策マニュアル』
「ねこのきもち」2018年9月号『重症になりやすいから知っておきたい”アルファベット”感染症』
監修/草場宏之先生(横浜戸塚プリモ動物病院院長)
文/kagio
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。