猫の手術前後は、誰より愛猫のそばにいてあげられる飼い主さんによるケアやサポートが必要となってきます。今回はもしものときのために知っておきたい、猫の手術理由の変化と術前術後に気を付けること、「術前給与」の考え方についての最新情報を解説します。
猫の手術の近況
飼い方の変化で手術の理由は「ケガ」から「泌尿器系の病気」に
一昔前の日本では猫を室外へ自由に出す飼い方が多かったため、手術の理由もほかの猫とのケンカや交通事故など、ケガによるものが多く見られました。しかし近年は室内飼いが普及したことでケガのリスクが減少し、泌尿器系の病気や誤食による手術が増加傾向にあります。これは室内飼いによって飼い主さんが愛猫の異変に気付きやすくなったために病院の受診回数が増え、さまざまな病気が発見されやすくなったことが理由です。
状態の程度によっては猫も手術や入院が必要になる
猫に手術を行う際も、人と同様に難易度や切開部分の大きさ、猫の状態、麻酔の強さなどによっては手術の前後に入院が必要になることがあります。しかし猫は慣れない環境に非常にストレスを感じやすい動物です。猫の体に配慮するといった意味でも、入院の日数はできるだけ短く、可能であれば日帰りで行える手術方法が望ましいといわれています。
愛猫の手術前後に飼い主さんがしてあげられること
術前は「いつも通り」を心がける
猫がよりよいコンディションで手術を受け、術後の回復をはかるためには、手術前後の飼い主さんによるサポートやケアが欠かせません。手術前に大切なのは、飼い主さんがなるべくソワソワしないように気を付けることです。
猫は急な変化や飼い主さんの異変に敏感ですので、たとえ飼い主さん自身も愛猫の術前で緊張していたとしても、なるべくいつも通りの行動を心がけるようにしてください。キャリーケースは直前ではなく前もって猫が見える場所に置いておくのがよいでしょう。
術後は抜糸が済むまではなるべく安静に
手術を終えたとしても、傷口がふさがるまでには数日かかります。少なくとも抜糸が済むまでは愛猫を激しい遊びに誘うのは控え、ゆっくりと休める場所をつくってあげたり、痛がる様子はないかしぐさや表情に注意したりすることが重要です。
手術前の食事「術前給与」が注目されている理由
術中の体力を守り回復を助ける「術前給与」
以前まで、麻酔や鎮静剤を投与するときに胃に食べ物が入っていると嘔吐してしまう危険性が高いことから、手術の前は猫に12時間ほど絶食させるのがよいとされていました。しかし最近は絶食させるとかえって体の負担になるということと、栄養成分によっては事前に摂取することで術中の体温低下を防ぎ、術後の回復につながることが分かっています。そのため手術前に猫に適切な食事を与える「術前給与」という方法が、徐々に注目されつつあるのです。
食事の内容・量・時間はケースバイケース
手術の前に与えるべき食事の内容や量、手術の何時間前まで与えていいかというのは、猫の状態やフードの種類、受ける手術によって異なります。術前給与をする場合は、必ず事前に獣医師に相談や確認をするようにしましょう。
手術の成功を左右するポイントは猫の体力と体調
病気や誤食による手術は、猫の体力を非常に消耗させる行為です。そのため手術のなかには、生まれて間もない子猫や超高齢の猫は受けられないものもあるので注意しましょう。手術の成功は猫自身の体力と当日の体調面によって左右されますので、手術前はストレスなどで体調を崩さないよう、飼い主さんが愛猫の様子を注意深く観察してあげるようにしてくださいね。
参考/「ねこのきもち」2018年6月号『最新情報や気になるワードも 新連載 猫医療の現場から』(監修:酪農学園大学准教授 日本獣医麻酔外科学会 麻酔疼痛管理専門委員会委員長 獣医師 佐野忠士先生)
文/子狸ぼん
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