猫と暮らす
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ストレスや不安が原因に…猫の「心の病気」に見られる症状とは
愛猫が困った行動をして、悩んでいる飼い主さんもいるかもしれませんね。その困った行動は、じつは猫なりの理由があって、放っておくと「心の病気」になる可能性もあるようです。
猫の「心の病気」とは?
- 噛む・引っかくなどの「攻撃」
- トイレ以外の場所での「不適切な排泄」
- 同じ行動を執拗に繰り返す「常同障害」
これらの行動は、猫と一緒に暮らすうえで、飼い主さんが困ってしまうと感じるものでしょう。
困った行動の原因のひとつとして、ストレスや不安などの関与が疑われる行動をする状態を、今回は「心の病気」として解説していきます。
猫が「心の病気」になったときに見せる行動3つ
ストレスや不安が一因とされる「心の病気」になったとき、猫は具体的にどんな行動を見せるのでしょうか?
とくに多く相談されるものについて、まとめてみました。
とくに多く相談されるものについて、まとめてみました。
①飼い主さんや猫への「攻撃」
自分の身を守ろうとして……「恐怖性/防御性攻撃行動」
- 「苦手な同居猫が近付いてきた」
- 「来客に抱えられそうになった」
など、猫が強い恐怖を感じたときに、身近な人や猫に噛み付いたり、引っかいたりして、攻撃を加えようとすることがあります。
なんらかの刺激で興奮し……「転嫁性攻撃行動」
- 「とてつもなく大きな音がした」
- 「窓越しにノラ猫を見てしまった」
など、なにかに刺激されて興奮したとき、たまたまそばにいた人や猫を思わず噛んだり引っかいたりする行動をします。
自分の縄張りに入ってこられて……「縄張り性攻撃行動」
自分の縄張りに入ってきた相手に噛んだり引っかいたりして、攻撃することがあります。とくに複数飼いの家で、猫同士の仲が悪いときに見られることが多いかも。
攻撃行動をする猫への治療は
治療としては、「行動療法」「環境改善」「投薬」などを行います。攻撃行動の治療では、攻撃行動が起こる状況を回避するのが、なによりも重要に。
そのほか、苦手なものに慣れさせたり、たくさん遊ぶなどして刺激を増やしたりする「行動療法」や、猫の居場所を安心できるものにする「環境改善」が中心に。
不安が原因による心の病気であれば、心を落ち着かせる薬を用いることもあります。
そのほか、苦手なものに慣れさせたり、たくさん遊ぶなどして刺激を増やしたりする「行動療法」や、猫の居場所を安心できるものにする「環境改善」が中心に。
不安が原因による心の病気であれば、心を落ち着かせる薬を用いることもあります。
注意:攻撃でも「心の病気」ではないことも
獣医師の菊池亜都子先生によると、「攻撃行動のすべてが心の病気ではない」といいます。
スキンシップの途中や遊びの延長で
ストレスや不安とは関係がないとされる猫の攻撃行動はいろいろありますが、たとえば……
などは見かけることがあるかもしれませんね。このほか、体の痛みから身を守ろうとする「疼痛性攻撃行動」などもあります。
- なでられている途中にやめてほしくてする「愛撫誘発性行動」
- 遊びがエスカレートしてする「遊び関連性攻撃行動」
などは見かけることがあるかもしれませんね。このほか、体の痛みから身を守ろうとする「疼痛性攻撃行動」などもあります。
脳の病気の可能性も
猫の攻撃行動は、脳神経の異常によって引き起こされることも。なんのきっかけもなく、いきなり噛み付いたり引っかいたりするケースなどは、これに該当する可能性があるかもしれません。
脳の病気だった場合は投薬が必須になるので、定期的に受診しながら付き合っていくことになるでしょう。
脳の病気だった場合は投薬が必須になるので、定期的に受診しながら付き合っていくことになるでしょう。
②猫トイレ以外の場所での「不適切な排泄」
粗相
トレイ以外の場所での「不適切な排泄」のうち、猫の一般的な排泄と体勢や量がほぼ同じなのが、いわゆる「粗相」。
オシッコやうんちに関係する病気でなければ、
などの理由が考えられるでしょう。
オシッコやうんちに関係する病気でなければ、
- 現状のトイレに不満がある
- 粗相の場所や素材が好き
などの理由が考えられるでしょう。
マーキング
粗相とは異なり、立ったままでの状態での少量のオシッコを瞬間的に吹き付けるように排泄する「マーキング」。この場合、通常の排泄はトイレで行うのが特徴に。
縄張り意識をはじめさまざまな不安などから生じるので、オスでもメスでも見られます。
縄張り意識をはじめさまざまな不安などから生じるので、オスでもメスでも見られます。
不適切な排泄をする猫への治療は
治療としては、「行動療法」「環境改善」「投薬」などを行います。
不適切な排泄に対する治療は、まず粗相なのか、マーキングなのかを判別して、ストレスや不安の原因を極力取り除くところから始めます。
また、トイレを好きになってもらうために、トイレ環境を改善して、粗相などをするトイレ以外の排泄場所は丁寧な掃除で完全にニオイを取り除くことが必要になります。
なお、マーキングの場合、不妊手術をしていない猫は手術を勧められることも。
不適切な排泄に対する治療は、まず粗相なのか、マーキングなのかを判別して、ストレスや不安の原因を極力取り除くところから始めます。
また、トイレを好きになってもらうために、トイレ環境を改善して、粗相などをするトイレ以外の排泄場所は丁寧な掃除で完全にニオイを取り除くことが必要になります。
なお、マーキングの場合、不妊手術をしていない猫は手術を勧められることも。
③同じ行動を繰り返す「常同障害」
過剰に毛づくろいをする
「なめる」のような猫本来のしぐさでも、執拗に繰り返すのは異常な行動といえます。はっきりとした原因はわかりませんが、これもストレスや不安が根底にあると考えられています。
過剰な毛づくろいでは、お腹や太ももなど同じ箇所を集中的になめ続ける場合と、全身をなめ続ける場合があります。
結果、脱毛して「心因性脱毛症」になることも。
過剰な毛づくろいでは、お腹や太ももなど同じ箇所を集中的になめ続ける場合と、全身をなめ続ける場合があります。
結果、脱毛して「心因性脱毛症」になることも。
布などを口にしてしまう
たとえば毛布など、本来猫が口にしてはいけないものを吸ったり、食べたりしてしまう行動を頻繁に繰り返します。別名、「ウールサッキング」とも。
しっぽを追いかけ回す
自分のしっぽを追いかけて、ずっとグルグル回る行動を見せます。実際に自分のしっぽを捕まえて傷つけてしまったり、しっぽを見た際に唸ったり、シャーッと威嚇したりすることも。
常同障害の猫への治療は
治療としては、「行動療法」「環境改善」「投薬」などを行います。
常同障害の治療では、きっかけとなるストレスや不安の原因を特定して、それを取り除くことを心がけます。
また、布を口にする場合は、布を片付けるなど問題となる行動をできないようにするだけでなく、代わりになる行動を取らせるようにしましょう。
多くの場合、「投薬」も併用します。
常同障害の治療では、きっかけとなるストレスや不安の原因を特定して、それを取り除くことを心がけます。
また、布を口にする場合は、布を片付けるなど問題となる行動をできないようにするだけでなく、代わりになる行動を取らせるようにしましょう。
多くの場合、「投薬」も併用します。
相談例は少ないけれど…飼い主さんがそばにいないと不安になる「分離不安」も
猫の飼い主さんからは相談が少ないですが、「分離不安」も心の病気のひとつと考えられています。
飼い主さんと一瞬でも離れると不安になって、行動に落ち着きがなくなったり、大きな声で鳴き続けたりする症状が見られます。
猫と人との距離が近くなった昨今、注目されるようになりました。
飼い主さんと一瞬でも離れると不安になって、行動に落ち着きがなくなったり、大きな声で鳴き続けたりする症状が見られます。
猫と人との距離が近くなった昨今、注目されるようになりました。
愛猫がストレスや不安を感じないで暮らせるように
愛猫がストレスや不安と無縁で暮らせるように、日頃から飼い主さんができることはしておきたいですよね。
ぜひ、以下のことを実践してみてください。
ぜひ、以下のことを実践してみてください。
トイレ容器をはじめ「猫モノ」の見直しを!
猫トイレ、フード、水、おもちゃなど、猫グッズが揃っていて不自由なく過ごせる環境になっているか、見直してみて。そのうえで、猫が気持ちよく過ごせる状態になっているかも確認しましょう。
たとえば……
など。
たとえば……
- 猫トイレを掃除して清潔に保つ
- 水をこまめに替え、鮮度を保つ
- 好きなおもちゃを用意する
など。
より安心できるスペースづくりを!
猫がストレスなく過ごすためには、家の中に安心できる場所が必要です。
快適に過ごせるお気に入りの場所はもちろん、なにかあったときにしっかり隠れられる場所があるかどうかも確認しましょう。
たとえば……
など。
快適に過ごせるお気に入りの場所はもちろん、なにかあったときにしっかり隠れられる場所があるかどうかも確認しましょう。
たとえば……
- 好みの猫ベッドをたくさん置く
- 猫タワーの上など見渡せる場所を用意する
- 部屋の隅などに隠れられる場所を確保する
など。
困る行動をあらかじめさせないように!
噛む・引っかくなど困ることをされて叱ったり、叩いたりしてはいけません。人を怖がるようになるほか、よりエスカレートさせることにもなります。
されて困る行動は、あらかじめ原因を取り除いたり、される前に気をそらしたりして、猫にさせないようにしてください。
されて困る行動は、あらかじめ原因を取り除いたり、される前に気をそらしたりして、猫にさせないようにしてください。
遊びの時間や場所をできるだけ増やして!
飼い猫は狩りに出ないため、狩猟本能が満たされにくいものです。日頃から遊びなどで刺激を与えるようにしましょう。
忙しくて相手ができないときは、1匹で遊べるおもちゃを利用してもいいですね。
たとえば……
など。
忙しくて相手ができないときは、1匹で遊べるおもちゃを利用してもいいですね。
たとえば……
- じゃらしおもちゃなどで遊ぶ
- 猫タワーを置き、上下運動できるようにする
- フードを取り出して遊べるおもちゃを利用する
など。
強いニオイなど苦手なものは遠ざけて!
香水や芳香剤のように香りが強いなど、猫が好まないニオイのものは置かないようにしましょう。そばにあるだけで猫を刺激するので、ストレスの要因に!
また、掃除機など大きな音が出るものも要注意です。かける前に、猫を別の部屋に移動させるなどしましょう。
また、掃除機など大きな音が出るものも要注意です。かける前に、猫を別の部屋に移動させるなどしましょう。
猫の心の病気 飼い主さんが知っておきたい一問一答
最後に、猫の心の病気についての飼い主さんのよくある疑問をQ&A形式で紹介します。
Q1.愛猫が「心の病気かも」と思ったときは、どうすればいい?
A.まずは、かかりつけの獣医さんに相談を。
やめさせたい行動があるなら、まずはかかりつけの獣医さんに相談してみて。
「日本獣医動物行動研究会」のウェブサイトを見ると、行動治療ができる獣医師のリストがあるので直接連絡してみてもいいかもしれません。
やめさせたい行動があるなら、まずはかかりつけの獣医さんに相談してみて。
「日本獣医動物行動研究会」のウェブサイトを見ると、行動治療ができる獣医師のリストがあるので直接連絡してみてもいいかもしれません。
Q2.猫を連れ出すのが難しいとき、話を聞いてもらうだけでもいいの?
A.もちろん大丈夫!
まずは、状況を伝えるだけでも大丈夫です。猫の様子をよく観察しておき、その行動が見られるようになったきっかけや、起こる頻度などを把握して、可能なら動画を撮っておくと診断の手がかりにもなります。
まずは、状況を伝えるだけでも大丈夫です。猫の様子をよく観察しておき、その行動が見られるようになったきっかけや、起こる頻度などを把握して、可能なら動画を撮っておくと診断の手がかりにもなります。
Q3.治療を受ければ、困ることはなくなるの?
A.なにもしないよりは、改善に向かう可能性はあるでしょう。
心の病気は、ストレスや不安などに起因します。そのため、必ず改善すると言い切るのは難しいです。ただ、なにもしないよりは、改善に向かう可能性は高まります。
猫のストレス緩和にもつながるので、気になるなら必ず専門家に相談しましょう。
心の病気は、ストレスや不安などに起因します。そのため、必ず改善すると言い切るのは難しいです。ただ、なにもしないよりは、改善に向かう可能性は高まります。
猫のストレス緩和にもつながるので、気になるなら必ず専門家に相談しましょう。
ストレスや不安などが原因となる、猫の心の病気。もしも愛猫に似たような症状が見られて気になるようであれば、獣医師さんに相談してみてくださいね。
参考/「ねこのきもち」2019年5月号『猫にも五月病はある? その困った行動、ストレスからくる心の病気かも』
(監修:獣医師、東京大学附属動物医療センター行動診療科にて、犬猫の治療に従事。 菊池亜都子先生)
イラスト/mollydomon
文/sorami
(監修:獣医師、東京大学附属動物医療センター行動診療科にて、犬猫の治療に従事。 菊池亜都子先生)
イラスト/mollydomon
文/sorami
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