三重県津市にある「あすまいる」は人と動物の共生を目指し、2017年5月に開所した、動物愛護推進センターです(以下、センター)。猫と人、お互いが幸せに暮らすために考えられた、センターの取り組みなどを取材しました。
※記事内容はすべて、2020年4月10日現在のものです。
アニマル・スマイルを増やすために…
センターでは、飼い主のいない猫を保護し、新しい飼い主さんとつなげる譲渡活動のほか、飼い主のいない猫を捕獲し、不妊手術後、もとの地域に戻して一代限りの命を見守るという「TNR活動」も行っています。
この活動の継続のため、2018年から手術等に必要な費用の一部を募るクラウドファンディングを実施。周辺の動物病院から集まった獣医師がセンターで一斉に手術を行うほか、この活動に賛同する動物病院約30軒でも行われています。無償にすることで、県民のノラ猫に対する理解につながり、人と猫のお互いが幸せに暮らせる地域づくりにも貢献していると、所長の久米さんは言います。
不妊手術の実施にあたり、直面したのが、センターで働く獣医師の多くは、公衆衛生を専門としており臨床経験がほとんどなかったこと。そこで、活動に賛同する公益社団法人三重県獣医師会の協力も得て、何とか実施にまでこぎつけられたのだとか。
こうした苦労もありながら、昨年までにセンターで426匹、協力動物病院では、175匹、計601匹の不妊手術に成功しました。「募金によってやっと続けられている取り組みなので、正直、この活動がいつまで続けられるかわかりません。ですが、この活動を通じて猫と人がうまく共生する地域づくりにつながれば」とスタッフの中野さんは前を向きます。
施設では子供向けに、動物愛護の想いを育てるイベントも開催
譲渡活動やTNR活動のほかに力を入れているのが、県内の子供たちへの啓発活動。センターでは、動物への理解を深め、優しい心を育んでもらうために、施設で行われる愛護教室に参加した小学生たちに猫へ食事を与えてもらったり、学校に赴いて動物愛護に関する授業を行ったりと、さまざまな取り組みを行っています。
「動物愛護の未来を担う子供たちが、動物を大切にすることを学べば、自然と殺処分なんて言葉がなくなると思います」と久米さんは言います。
今後の展望をうかがうと、「災害時の動物救護体制の整備や、保護した子猫を救うために一時預かりを行う飼育ボランティアの制度づくりなどを検討しています」とのこと。“アニマル・スマイル”を増やすため、センターは今日も新たな試みに挑戦し続けます。
参考/「ねこのきもち」2020年6月号『猫のために何ができるのだろうか』
文/ねこのきもち編集室
撮影/尾﨑たまき
※この記事で使用している画像はねこのきもち2020年6月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載されているものです。