お腹にたるみのある猫の姿は、愛らしくも思えますよね。タプタプしていて、触ったときの感触も気持ちよくて…魅力に感じる飼い主さんもいるでしょう。
猫のお腹がタプタプしているワケ
猫のタプタプしているお腹のことを「ルーズスキン」と呼ぶことがあるようです。これは英語で「締りのない・だらしないさま」の意味で、ぜい肉や余分な皮でできています。
お腹がタプタプしていることによって、外敵に噛まれたときなどに腹部の内臓を守る役割があるともいわれているそうですが、本当のところはわかりません。
猫のお腹のたるみは肥満の可能性も
猫のお腹のたるみが目立って気になるときは、運動不足や筋力不足の可能性も考えられます。とくに肥満の猫や高齢の猫にできやすいです。
「どのくらいだと肥満なのか?」について、動物の場合は理想体重よりも15〜20%体重が増加した状態を指すのが一般的に。猫の体重には個体差がありますが、1歳ごろの成長が止まった体重を目安に考えるのがよいそうです。
ここからは、猫の「肥満」についてくわしく見ていきます。
代表的な猫種の適正体重目安
猫種によっても体重に差があります。例として、代表的な猫種を「小型・中型・大型」に分けて体重を比較すると、下記のようになります。(ねこのきもち WEB MAGAZINE
「ねこ図鑑」参照)
小型
・シンガプーラ/2.0~3.5kg
・ロシアンブルー/3.0~5.5kg
・アメリカンカール/3.0~5.0kg
中型
・アメリカンショートヘアー/3.0~7.0kg
・ペルシャ/3.5~7.0kg
・ヒマラヤン/3.0~5.5kg
大型
・メインクーン/4.0~10.0kg
・ベンガル/5.0~10.0kg
・ラグドール/4.5~9.0kg
上記を見ると、同品種でも体重の数値にかなりの開きがあるのがわかります。猫の個体差によって適正体重は変化するため、数値はあくまで目安と考えてください。
簡単にできる猫の肥満チェック
愛猫が肥満かどうか、体重だけでは判断が難しいこともあるかもしれませんね。ここでは、見たり触ったりすることで愛猫が「標準体型」か「ぽっちゃり体型」か「肥満体型」かがわかるポイントを紹介します。
下記で取り上げる3つの部位に注目してみてください。
①肋骨→前足の付け根〜腰にかけて、手のひら全体で触ってみる
猫が机や床などの平らな場所で伏せているときに確認してみてください。猫の前足の付け根にある肩甲骨の後ろくらいから腰までを撫でるように、両手で触ってみましょう。
肋骨の存在がどの程度感じられるかで、あなたの猫の体型の判定ができます。
□肋骨の凹凸が感じられる→「標準体型」
□かろうじて肋骨を感じられる→「ぽっちゃり体型」
□肋骨がどこにあるのかわからない→「肥満体型」
②腰のくびれ→立っている猫の真上から、腰のくびれを確認する
猫が床に立っているときなどに確認してみてください。ポイントは、必ず真上から猫を見るようにすること。ウエスト部分にくびれがどの程度あるかで判定します。
□くびれの位置がなんとなくわかる→「標準体型」
□くびれの位置がわからない→「ぽっちゃり体型」
□ウエストが膨らんでいる→「肥満体型」
③お腹→立っている猫の真横から、お腹の膨らみ具合を確認する
猫の立ち姿が真横から見られるのであれば、場所はどこでもOKです。お腹の膨らみ具合で判定します。張りのない膨らみは皮膚が垂れているだけで肥満ではないので、触って診断をしましょう。
□お腹のラインが床とほぼ平行→「標準体型」
□下腹部がぽっこり膨らんでいる→「ぽっちゃり体型」
□お腹全体が大きく膨らんでいる→「肥満体型」
上記の①〜③の判定で、「✓」マークが一番多く付いたものが愛猫の体型です。①〜③のすべてが異なる体型の判定になった場合は、愛猫の体型はどれに当てはまるか、獣医師に確認してもらうとよいでしょう。
猫の肥満の原因
猫が肥満になる原因は、
「食事で摂取するエネルギーが、消費するエネルギーよりも多くなる」こと。具体的な原因としては……
- 高カロリーのフードを食べる
- 飼い主さんが人の食べ物をあげてしまう
- おやつをあげすぎてしまう
など、過食が考えられるでしょう。このほか、避妊・去勢手術後や老齢期の猫などは、運動量の減少によって太りやすくなります。
猫の肥満のリスクとは
猫が肥満になると、あらゆる病気になってしまうリスクも。肥満が原因となってかかりやすい猫の病気には、下記のようなものが挙げられます。
- 糖尿病:インスリンが体内でうまく作用せず、高血糖になる。
- 肝リピドーシス:肝細胞の中に中性脂肪が過剰に溜まることで起こる機能障害。
- 呼吸器疾患:肥満によって肺の運動に負担がかかり、息が上がるなど呼吸器に影響が出る。
- 皮膚病:肥満によって全身の毛づくろいがままならなくなる結果、不衛生となり、脱毛症などにつながる。
- 膀胱炎、尿結石:肥満で動くのがつらくなることからトイレに行く回数が減り、さらに運動不足で水を飲む量が減ることで、膀胱で尿が凝縮される。
もしなにか愛猫に異変を感じたら、すぐに獣医師へ相談してください。
猫の肥満対策
猫の肥満の程度が軽度である場合には、食事管理や生活環境を変えることで改善が見込めるでしょう。家族の中に隠れてこっそりおやつを与えている人がいる場合もあるので、確認してみてくださいね。
食事管理では、愛猫の1日に必要なエネルギー量を把握することや、体重別の1日のフードの適正量をきちんとはかって与えること、年齢に合った低カロリー設計フードを選ぶことなど、見直せる部分はたくさんあります。
ダイエットのためにはフードの量を減らせばいい、と考える飼い主さんもいるかもしれませんが、量を減らすだけでは猫に必要な栄養素まで不足してしまう可能性もあります。動物病院では、エネルギー量の少ない療法食なども出してもらえるので、食事に関して相談してみるとよいでしょう。
ストレスの少ない減量と適度な運動で目標体重を目指そう
愛猫を目標体重に近づけるためには、「ストレスの少ない減量」と「適度な運動」が大切に。室内飼いの猫の運動不足対策として、部屋の中に上下運動ができるようなキャットタワーなどを設置してみるなど工夫をしてみてくださいね。
(監修:いぬのきもち・ねこのきもち獣医師相談室 担当獣医師)
文/柴田おまめ