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小笠原諸島で捕獲された猫 野性化した猫が人と暮らせるようになるまで

2011年にユネスコの世界自然遺産に登録された小笠原諸島。この美しい島々でしか暮らせない野生動物を守るため、野生化した猫を捕獲し、都内の動物病院で新しい飼い主さんを探すプロジェクトが行われています。東京都獣医師会が行う、島民の適正飼養を後押しする活動と、野生化した猫が人と暮らせるようになるまでの道のりを紹介します。
写真提供/小笠原ネコプロジェクト

島内の飼い猫の適正飼育を後押し

プロジェクトの発足当時、問題のひとつとなっていたのが、飼い猫を家の外へ出していたり、不妊手術が行われていなかったりなどによって野生化した猫が増えてしまっていることでした。そこで2008年、自然保護助成基金の支給を受けた小笠原自然文化研究所が事務局となり、東京都獣医師会による「動物派遣診療」が開催。年に一度、飼い猫の診療や不妊手術、マイクロチップの装着、猫の飼い方についての指導などが行われ、適正飼養の推進を図ってきました。派遣診療は、2016年まで計9回開催され、翌年からは小笠原世界遺産センターに設けられた「動物対処室」に獣医師が常駐し、引き続き猫の適正飼養の強化が続けられています。
写真提供/小笠原ネコプロジェクト
動物派遣診療で行われる不妊手術の様子

野生化した猫を人と暮らせる猫に

島から受け入れ先の動物病院へ到着した猫は、健康チェックが行われます。猫の性格や、野外で暮らしていた期間などで、馴化にかかる期間はそれぞれ。ケージの中で過ごしながら、人目や触れられることになれさせ、少しずつ人への警戒心を解いていきます。人になれ始めたら、新しい飼い主を探し始めます。譲渡条件はさまざまですが、おもに都内在住の方に譲渡されることが多いといいます。なかには動物病院や動物病院のスタッフの猫が迎えることも。こうして猫たちの第二の“猫生”が始まります。
写真提供/小笠原ネコプロジェクト
写真提供/小笠原ネコプロジェクト
野生化した猫も数カ月すれば抱っこできるほど馴化するのだとか

ネコ条例からペット条例へ

保護された猫を都内へ連れ出すことで、野生化した猫は年々減少していきました。「小笠原村は、飼いネコ適正飼養条例の改正や派遣診療などによって、島の猫の野生化は止めることに成功しました。しかし、すでに野生化してしまった猫の捕獲は15年経っても終わっていません。猫が一度野生化すると、その対策に多くの労力と予算が必要になるのです」とプロジェクトメンバーの佐々木哲朗さん(小笠原自然文化研究所副理事長)はいいます。この経験から、小笠原村役場は条例をペット全体に広げたペット条例に改定。猫以外のペットの登録や島にもち込めるペットの種類の検討により、島全体の生態系をより一層守る対策も進められています。
写真提供/小笠原ネコプロジェクト
譲渡先で幸せに暮らす猫。すっかり人との暮らしになじんでいます

野生動物の回復に兆しが

写真提供/小笠原ネコプロジェクト
島内で「赤ぽっぽ」と親しまれるほど姿を見せるようになってきたアカガシラカラスバト
プロジェクトの効果は絶大で、繁殖地の消滅を危ぶまれていた母島では、オナガミズナギドリやカツオドリ、アカガシラカラスバトの姿が多く見られるように。「自然と共存する小笠原諸島の未来のために、これからも活動を続けていきたいです」と話す佐々木さん。自然豊かな美しい島は、今日も島民たちの手によって確かに守られています。
参考/「ねこのきもち」2020年10月号『猫のために何ができるのだろうか』
文/carrie-the-cat
※この記事で使用している画像は2020年10月号「猫のために何ができるのだろうか」に掲載しているものです。
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