猫の診療費は人のような国からの保障もないので、どうしても人の治療費よりは高くなります。そのうえ、自由診療なので病院によって金額も異なります。だからこそ、おおまかな費用を知っておいて、いざというときに愛猫にどのような治療を受けさせるかなどを考えておきたいもの。
そこで、猫がかかりやすい病気のひとつ、膀胱炎の診療費明細からわかる治療内容について獣医師の野矢先生に解説してもらいました。
膀胱炎の治療にかかった診療明細を公開
頻尿と血尿が見られて受診したところ、膀胱炎と診断された理喜くんは、症状が落ち着くまで6回通院しました。それまでにかかった診療費とその明細を紹介するとともに、気になる項目について野矢先生に解説してもらいます。
「尿検査」と「血液検査」で膀胱炎の原因を探る
症状から膀胱炎と推測し、各検査で原因を探ったのでしょう。次に抗生物質を投与しているこ
とから細菌感染によるものと診断されたと推測されます。
「点滴」で水分補給で排尿を促す
皮下点滴で水分を与え、尿をたくさん排出させることで膀胱内を洗浄したのでしょう。点滴の費用は2000~3000円ほどかかるのが一般的。
細菌を殺す抗生物質「コンべニア」を注射で投与
原因となった細菌を消滅させるため、抗生物質が投与されました。投与する量は体重によって変動するため、体重が重いほど費用がかかります。
「超音波検査 」で膀胱内の状態を確認
初見では細菌が原因と診断されましたが、劇的改善がなかったため、膀胱に結石がある可能性を疑ったのでしょう。超音波検査は、検査する部位やその範囲によって金額が変わります。今回のように膀胱のある下腹部のみであれば、1000円ほどでもおかしくはありません。
「リレキシペット」は膀胱内を殺菌する内服薬
理喜くんは再発しやすい体質と診断されたのでしょう。ここまでの経緯から、以降は自宅投薬で様子を見ることになったと考えられます。金額を見る限り、約2週間分処方されていると思われます。投薬の効果を6回目の受診で確認し、経過観察に。療法食も提案されたようですね。
診療費で気になるアレコレを野矢先生に聞きました
診療費明細を見てもわからないことや獣医師に直接聞きづらいことも。診療費の気になることを野矢先生にお聞きしました。
初診料って なぜかかるの?
症状を見ることも診療のひとつだから
愛猫に異変がないかを視診・触診・聴診などで確認する診察料、カルテ作成に料金が発生していると考えてください。そのため異変がなくても費用は発生しますが、「安心を得るための費用」と思ってもらえればと思います。ちなみにかかりつけの動物病院でも初めての病気で受診する場合は、初診扱いとなることがあります。
薬の値段も動物病院によって違うの?
薬の値段も病院次第です
治療費も薬の価格も動物病院ごとに設定するように法律で定められています。つまり、価格の決め方が同じという動物病院はないでしょう。税制優遇のない動物病院を運営していくため、経営的な面から価格を設定している動物病院が多いと思います。
診療費明細はいつまで保管しておくべき?
なるべく長く保管する ことがおすすめ
治療歴を見ることにも役立つ明細は、できるだけ長く保管しておくと安心です。また、保険会社によっては加入前の数年間の治療を適用対象とする場合も。愛猫の健康管理と経済面、どちらの面から見ても長く保管しておくことをおすすめします。
とくにシニア期に入ると、どこかしらの不調がでてくるもの。今は健康でも、動物病院と無縁ではなかなかいられません。病気にかかったときに、どんな治療をしてどのくらいお金がかかるかをなんとなくイメージして備えておきたいですね。
参考/「ねこのきもち」2021年7月号『知りたい! みんなの診療費明細』(監修:ノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生)
文/ハナマサ
※画像はすべてイメージです。
画像/iStock、Getty Images Plus