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【獣医師監修】7才以上のシニア猫がかかりやすい病気は?原因・症状・治療法
一緒に暮らす愛猫には、健康で長生きしてほしいものですよね。猫には、年齢によってかかりやすいといわれているさまざまな病気があります。ここでは、7才以上のシニア猫がかかりやすい病気を紹介します。

長谷川 諒 先生
株式会社Ani-vet 代表取締役
保護猫施設専門往診病院 下京ねこ診療所 院長
動物病院京都 ねこの病院 所属獣医師
北里大学獣医生化学研究室 研究生
●所属:日本猫医学会/日本獣医腎泌尿器学会
●書籍(監修):『知っておきたい ネコの多頭飼いのすべて 獣医師が教える 幸せに暮らすためのポイント』メイツ出版 /『いちばんよくわかる猫種図鑑 日本と世界の60種』メイツ出版
慢性腎臓病
主な症状は?
初期のうちは元気も食欲もあるので気づくのが遅れがちです。多飲多尿のサインを見逃さないようにしましょう。
どんな病気?
病気が進行すると嘔吐や下痢が見られるようになり、元気や食欲がなくなりやせてきます。重篤になるとオシッコをつくれなくなり、亡くなることもあります。
治療法は?
具体的には、腎臓に負担をかけない療法食を与えて、脱水傾向であれば点滴を定期的に行うのが一般的です。初期のうちに発見できればより病気の進行を遅らせることができるので、多飲多尿の症状に気づいたらなるべく早く受診しましょう。
糖尿病
主な症状は?
肥満の猫や運動不足の猫は、糖尿病になりやすい傾向があります。以前より多飲多尿が見られるようであれば、すぐに受診をしましょう。
どんな病気?
治療法は?
進行する前に病気を発見し、早く治療を始めることができればうまく付き合って寿命を全うできます。しかし、症状が進んでしまうと、血糖値のコントロールが難しくなり、安定させられないうちにほかの合併症を引き起こすこともあります。
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
主な症状は?
初期には落ち着きなくウロウロと動き回ったり、興奮しやすくなったりすることもあります。食欲は増すのにやせてくるのが特徴です。
どんな病気?
甲状腺は、新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌するところです。甲状腺機能亢進症とは、この甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されて、代謝が異常に活発になってしまう病気です。
この病気になるのはほとんどが10才以上の猫ですが、初期は活発になり食欲が増すため、飼い主さんはむしろ「最近、愛猫が元気になった」と感じることも。しかし、この状態は心臓をはじめとするさまざまな臓器に負担をかけて、寿命を短くしてしまいます。
治療法は?
甲状腺機能亢進症自体はすぐに命にかかわることはなく、治療をしながらうまく合っていける可能性があります。しかし、心不全、腎不全、肝不全などの合併症を起こすと食欲がなくなって衰弱し、命にかかわることもあります。合併症を起こす前に治療を始めることが大切です。
心臓病
主な症状は?
少し動いただけで息切れしたり、うずくまってしまったりするなどの様子が見られたら受診しましょう。
どんな病気?
心臓は、全身や肺に血液を送り出すポンプのような役割をしているところです。心臓病になって心臓の働きが悪くなると、酸素を多く含んだ血液が全身に行きわたらなくなり、猫は動きたがらなくなったり、疲れやすくなったりします。また、ハァハァと呼吸が荒くなったり、咳をしたりすることもあります。
症状が進むと肺に水がたまり(肺水腫)、呼吸困難になるおそれもあります。さらに、心臓内に血の塊(血栓)ができやすくなり、これが全身のどこかの血管で詰まると、突然命を失う可能性もあります。
治療法は?
具体的には、心臓の働きを助ける薬や血圧に作用して心臓の負担を軽くする薬などを与えます。血栓が詰まってしまった場合は、緊急的に血栓を溶かす点滴や取り除く手術をすることもありますが、何よりも血栓ができにくい状態を維持することが治療の中心です。
また心臓に負担をかけないように、自宅ではなるべく猫を安静に過ごさせて、リラックスできる環境をつくってあげることが大切です。
口腔内疾患
主な症状は?
口内に痛みを感じると、フードを食べなくなるほか、食べるときに顔を傾けたり鳴くなどの様子が見られることもあります。
どんな病気?
口内の病気は重症化すると口内に激しい痛みが起こるだけではなく、フードが食べられなくなり、やせて衰弱することもあります。また前足でしきりに口の周りに触るなど、口を気にする様子を見せることもあります。
歯周病
歯肉口内炎
歯頚部吸収病巣(しけいぶきゅうしゅうびょうそう)
治療法は?
ただし麻酔をかけての抜歯は、高齢の猫には負担になることも。猫の状態によっては、抗生剤や鎮痛剤による治療が選択されるケースもあります。
腫瘍性疾患
主な症状は?
(内臓系腫瘍の場合)下痢をする、吐く。
内臓系腫瘍では、初期のサインとして元気・食欲があっても下痢が続くことがあります。慢性的な下痢をしていたら、早めに受診をしましょう。
どんな病気?
その中でもいわゆる「がん・肉腫」は、しだいに大きくなったり全身に転移したりして命にかかわる悪性腫瘍です。悪性腫瘍は、体のどの部位にもできる可能性があり、加齢によって発症率が上昇します。
ここでは、猫に特に多く見られる悪性腫瘍を紹介します。
リンパ腫(りんぱしゅ)
乳腺(にゅうせん)がん
扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん
治療法は?
とはいえ、悪性腫瘍の治療は猫への負担が重く、そのほとんどが完治しない病気なので、猫の体力や飼い主さんの意向を踏まえて方針を決めます。
そのほかシニア猫がかかりやすい病気
関節炎
痛みが強いようなら鎮痛剤を投与したり、サプリメントを用いたりすることもあります。
便秘
文/ねこのきもちWeb編集室
参考&画像・イラスト出典/「ねこのきもち」本誌、ムックより
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