飼い主さんのお悩みで、上位にあがることが多いという愛猫の「噛む、引っかく」行為。これには、理由を知ることで防ぐことができるものや、意外な原因から噛む行為につながりがちなものもあります。今回は、動物看護師の小野寺温先生に、愛猫が噛む理由についてお聞きしました。
愛猫は仕方なく“攻撃”してしまうことがある
猫が噛む理由には、「自己防衛」「アピール」「無意識」があります。そのため、猫の噛んだり引っかいたりする行為は、厳密には「攻撃」とは違うそう。猫は飼い主さんを傷つけたいわけではなく、習性や気持ちを伝える最終手段として噛んでしまうことがあるようです。
例えば、長時間拘束されたり急所を触られたりすると、耳をそらして「イカ耳」になるなど、猫なりに「イヤ!」のサインを出しているので、サインが見られたらすぐにやめましょう。
フードの催促や遊んでアピールがエスカレートして噛んでしまう場合は、そもそも愛猫が欲求不満にならないよう工夫が必要です。
また、遊びに興奮しすぎて無意識のうちに興奮スイッチが入り、噛んでしまうことも。そんなときは愛猫が落ち着くまで別室で過ごすなどして、猫の様子が通常に戻るまで待ちましょう。
噛んでしまうのにはこんな意外な理由も……
外で暮らしていた猫
外暮らしの経験がある猫は、食べ物の確保を自分でしなければならなかったり、ほかの猫と縄張り争いがあったりと、過酷な生活をしてきたことから警戒心がとても強め。また、人との関わり方を知らずに生きてきたことで、恐怖心から人を“攻撃”してしまう場合があります。
オスの猫
オスは本来、メスや縄張りをめぐってライバルとケンカすることが多く、遊び好きでやんちゃな性格からもメスよりも噛んだり引っかいたりしやすい傾向があります。
とくに、未去勢(もしくは去勢が遅かった場合)だとホルモンの影響で野性的になり、“攻撃”しやすくなります。
子猫
猫は、生後約2カ月までの「社会化期」に学んだことが、性格のベースになります。いろいろな経験から「加減」を学んでいる最中なので、「これを噛んだらどうなるかな?」と人を噛んでしまうこともあります。
体に異変がある猫やシニア猫
「今まで触っても平気だったのに噛まれた」などという場合は、その部分に痛みを感じているのかも。猫の様子を見て、心配があればすぐに獣医師に相談しましょう。またシニア猫の場合は、イヤなことがあっても体力温存のために「イヤ!」のサインを省き、代わりに噛むこともあります。
1匹飼いの猫
飼い主さんからしか刺激を得ることができない家の中の猫は、安全である反面、退屈に感じていることも。そのため、刺激を求めて飼い主さんを噛んでしまうことがあるようです。
もしも噛まれてしまったら
噛んだり引っかいたりしたとき、猫は大抵興奮しているので、まずは落ち着かせるために猫の気をそらしましょう。同居している人がいるなら遠くで音を鳴らしてもらったり、「あ!」など大きく短い声を出したりして猫を我に返らせます。
なお、噛まれたときにしてはいけないのが、フードを与えるなど、猫にとって「イイコト」をしてしまうこと。「噛む、引っかく」と結び付けて繰り返すようになってしまいます。
猫が「噛む」理由を知ることでできる対策もあります。猫の習性や気持ちを理解して、よい関係を築いていきたいですね!
お話を伺った先生/小野寺温先生(帝京科学大学助教 動物看護師)
参考/「ねこのきもち」2018年3月号『猫の“しちゃう”ワケを知って“させない”! 噛む引っかく「0」飼い主宣言』
文/小林けい
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。