猫のしっぽを見ていると、体の動きや状況に合わせてよく動くことに気が付きます。じつはこのしっぽの動きには、ねこの気持ちがあらわれているのだそう。哺乳動物学者の今泉忠明先生に、猫のしっぽがもつ役割や、しっぽが表す気持ちについて教えていただきました。
猫のしっぽは、3つの“とる”に役に立つ!
1. バランスをとる
猫が、高くて狭いところでもよろけずにスイスイと歩ける理由のひとつに、しっぽの働きがあります。歩くときの体重移動に合わせ、無意識にしっぽを左右に振ることで、うまくバランスをとっているのです。
2. コミュニケーションをとる
後述するように、猫はしっぽを使って多くの気持ちをあらわすため、猫同士のコミュニケーションにも役立ちます。位置や動きによって、相手の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを知らせたりすることができます。
3. 暖をとる
猫は寒いとき、体を丸めてしっぽで鼻と口を覆うようにして眠ることがあります。こうすることにより、自分が吐いた息の熱を外に逃がさず、体を温めるために再利用していると考えられます。
上向きにピンと立てているときは「こっちを見て!」「うれしい!」
しっぽを上向きにピンとたてるのは、もともとは子猫が母猫に自分の存在をアピールしながら近付くときのしぐさ。その名残として、飼い主さんに「ここにいるよ! こっちを見て!」とアピールしたり、うれしい気持ちのときに自然とこの状態になったりするのです。大好きな飼い主さんが外出先から帰宅したときや、お待ちかねのゴハンの時間などに見られやすい動きです。
ゆらゆら揺らすときは「リラックスしていい気分~」
寝転がった状態などでしっぽをゆったりユ~ラユ~ラと揺らしているときは、猫がリラックスしていてご機嫌な証拠。お気に入りの場所で日向ぼっこ中に「あぁ、いい気分だなぁ」と感じたり、そばに飼い主さんがいて「いまいい気分だよ」と伝えたくなったりしたときに、ほぼ無意識に揺らすようです。
左右に大きくぶんぶん振るときは「緊張、興奮、イライラ」
しっぽを力強く左右に大きくぶんぶん振るのは、興奮や緊張で神経が高ぶっているサイン。獲物を見つけて「捕まえたい!」というときなどに見られます。ほかにも「イヤだ」「怒ったぞ」という気持ちをあらわすこともあるので、このしぐさが見られたときは抱っこやお世話をするのは避けましょう。
しっぽにあらわれた気持ちを読み取ることができれば、愛猫との絆をもっと深くできるはず。ぜひしっぽの観察を通じて、愛猫のきもちを想像してみましょう。
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳類学者 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2020年12月号『あのとき、どんな気持ち? マンガで共感 ねこのしっぽ』
文/緒方るりこ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。