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猫の腎臓病 早期発見・早期治療が進む獣医療の進化

猫がかかることが多い病気のひとつが腎臓病です。徐々に腎機能が低下していくため、早期発見と早期治療が大切です。また、近年は、人と同様に人工透析を行うケースも。腎臓病の検査を提供するアイデックスラボラトリーズと、東京都北区にある王子ペットクリニック院長の重本仁先生にお話を聞きました。

従来よりも17カ月早く腎機能の低下を検出

撮影/栗林愛
血液で腎臓の健康状態を調べる場合、BUN(血清尿素窒素)やクレアチニンといった成分で腎機能を評価するのが一般的ですが、2016年に、より優れた検査項目が加わりました。それが「SDMA(対称性ジメチルアルギニン)」です。

SDMA検査を提供するアイデックスラボラトリーズによると「BUNやクレアチニンは、腎機能の75%が失われて初めて異常が検知できます。また、腎臓以外の要因でも数値が上昇することがあります。一方、SDMAは腎機能が平均40%、早ければ25%低下した時点で数値が上昇します。また、SDMAはほかの臓器からの影響を受けにくいこともわかっています」とのこと。

このためSDMAは、猫では従来の検査よりも平均17カ月早く腎臓の異常を発見できるという報告があります。

SDMAの検査数は日本だけでも累計148万検体以上にのぼります。国際獣医腎臓病研究グループでは、慢性腎臓病を診断する場合には、SDMAとクレアチニン両方の検査を推奨しています。

ヒトではよく行われている血液透析が猫にも!

画像提供/王子ペットクリニック
透析器と、尿管結石で急性腎臓病になった猫。血液透析が適応されるのは、猫の場合、急性腎臓病のときがほとんどだそうです
腎機能が低下すると、尿毒症などを回避するためにヒトでは血液透析(人工透析)を行うことがありますが、じつは猫の腎臓病の治療にも血液透析を導入するケースがここ数年で増えてきたそうです。

血液透析とは、血液を体外に取り出し、透析器(人工腎臓)に通すことによって血液を浄化し、老廃物を除去すること。水分バランスなども改善してくれます。

5年前より透析器を導入したという重本 仁先生は、「透析器の性能も上がり、動物病院への普及も進んできたので治療に使われるケースも出てきたのだと思います」と言います。実際、重本先生が血液透析を行った例としては、猫の尿管結石の手術をしたくても腎機能が低下していて麻酔がかけられず、まずは血液透析で腎臓の状態を改善したことがあったそう。手術は無事成功したとのことです。「ヒトでは慢性腎臓病に適応されますが、猫の場合、体の負担を考えると定期的に長い期間にわたって血液透析をするのは難しいでしょう。また、高額な医療なのでコスト面でもかなりの負担になり、適応できる例は限られると思います。猫がなりやすい尿石症、あるいは誤食などでの中毒では急性腎臓病を併発することがあります。そうしたピンポイントで人工透析を行うことは、今後、増えていくかもしれませんね」

撮影/中川文作
いかがでしたか。早めに猫の腎臓病の徴候を捉えられ、万一のときは人工透析もできる獣医療。今後の発展に期待がかかります。

参考/「ねこのきもち」2022年1月号『猫の最新医療2022』(おはなし:アイデックス ラボラトリーズ/王子ペットクリニック院長 重本 仁先生)
文/犬神マツコ
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