「がん」とは、悪性腫瘍のこと。体のさまざまな部位で発症し、猫の命を脅かす怖い病気です。猫も加齢などで免疫力が低下すると、がんになりやすくなるといわれています。
がんには多くの種類がありますが、今回はその中でも特に猫がかかりやすい5つのがんについて、獣医師の服部幸先生に伺いました。
乳腺がん
乳腺とは、お乳を分泌する組織のことです。猫の場合は、お腹の左右に4つずつ、計8つの乳腺があります。この乳腺に腫瘍ができたときは、8割以上が悪性腫瘍(がん)。しかも、肺やリンパ節などへ転移しやすいのが特徴です。
乳腺がんにかかるのはほとんどメスで、避妊手術をしておらず発情経験があるメスほど、リスクが高いそう。そのため、最初の発情がくる前に避妊手術をすることが、乳腺がんの予防につながるといわれています。
リンパ腫
白血球の中にあるリンパ球ががん化する病気です。皮膚、リンパ節、内臓など、体中場所を選ばずに発症します。猫に多いのは、腸などにできる「消化器型リンパ腫」。血液のがんなので代謝に大きく影響し、発症すると急に体重が落ちたり、食欲不振・下痢・嘔吐などの症状が現われたりします。
猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染している猫は、リンパ腫にかかりやすいというデータがあるそうです。
肥満細胞腫
血中にある肥満細胞ががん化する病気です。内臓に発生する内臓型と、皮膚に発生する皮膚型があります。内臓型は脾臓や消化器にできやすいのが特徴で、元気消失や食欲不振などの症状が現われます。皮膚型は、脱毛を伴うしこりができたり、その部分にかゆみが出たりするようです。
扁平上皮がん
皮膚の表層にある扁平上皮細胞ががん化する病気で、猫は顔面に多く発生します。被毛の薄い部分にできやすく、白猫や白色の被毛を含む猫に多く見られる傾向があります。
扁平上皮細胞は粘膜にも存在しているため、口の中や舌にできることも。がんの場所によっては、治療が難しいケースもあります。
線維肉腫
体のやわらかい部分の組織にある線維芽細胞ががん化する病気で、体幹、乳腺、四肢、顔面での発生が多いようです。主な治療方法は、外科手術による腫瘍の切除。再発はしやすいものの、転移しにくいのが特徴です。
猫白血病ウイルスとの関連や、免疫力の低下、ストレスなどの影響が指摘されていますが、明確な原因はわかっていません。
がんは怖い病気ですが、治療が可能なケースも少なくありません。愛猫の体にしこりがあったり、体調に違和感を覚えたりしたら、早めに動物病院で診察を受けてくださいね。
お話を伺った先生/服部幸先生(東京猫医療センター院長)
参考/「ねこのきもち」2022年9月号『獣医師の最新トピックス&読者体験談も 猫に多い病気、その理由は?』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。