環境の変化や獣医療の進歩により、健康で長生きする猫はここ数十年で大幅に増加している傾向にあります。その一方で、過去よりも現在のほうが増えている病気やトラブルもあります。現在の生活において注意すべきことを、獣医師の田草川佳実先生に伺いました。
おもちゃや小物の誤食
ここ数十年間で増加傾向にある誤食。誤食したものは、運がよければ吐き出したり、ウンチとともに排出されたりしますが、そうでない場合は腸閉塞や腹膜炎の原因となることもあり、命にもかかわります。
おもちゃで遊ぶときは人がいる場所で使わせたり、使わないときはふだんから片付けたりするなど、ルールを徹底することが大切です。
腎結石・消化管腫瘍・すい炎などの病気
腎結石や消化管腫瘍、すい炎なども増加傾向に。ただ、これは病気そのものの発生数が増えたのではなく、以前は診断できなかった病気が診断可能になったことで検出数が増えたのだそうです。
以前は原因不明で命を落としていたかもしれないケースも、現在は診断・治療が可能になったことで、健康長寿につながっているのでしょう。
肥満は減少傾向にあるものの“肥満予備軍”に注意
一時期より減少傾向にある猫の肥満。これは、「食事の与えすぎは愛猫のためにならない」という考え方が飼い主さんに浸透してきた結果ともいえるようです。とはいえ、肥満予備軍の猫がいるのも事実。今後の病気予防のためにも、食事管理は重要です。
愛猫の健康寿命を延ばすためにできること
ストレスのない受診対策
猫の体調の変化に気づいても、「動物病院に行くことが愛猫にとってストレスになるかも」と考える飼い主さんも少なくないかもしれません。
しかし、猫を動物病院に連れて行かないと病気を見つけることができませんし、自宅で様子見をしているあいだに病状が進行してしまうおそれもあります。
ストレスが心配だから受診をしないのではなく、なるべくストレスなく受診できるように、自宅でキャリーケースに慣れさせる練習などをしておくといいでしょう。
ストレスのかからない生活環境づくり
猫がゆっくりくつろげる高い場所や、安心して気持ちよく排泄できる場所、外の景色を眺められる場所、思い切り爪をとげる場所など、猫が猫らしく暮らすことができる環境が充分整っているか、あらためて見直してみましょう。
愛猫が安心して暮らせる環境づくりと、スムーズに動物病院で受診できるような対策をして、愛猫といつまでも仲よく暮らしていきたいですね。
お話を伺った先生/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
参考/「ねこのきもち」2022年10月号『お世話・環境・獣医療が大きく変化! この数十年で健康で長生きする猫が増えた10の理由』
文/小林けい
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。