猫の顔にちょこんと置かれた三角の耳。かわいいだけじゃなく、じつはとんでもない能力を秘めた部位なのです。表情が豊かで、小さな物音も聞き漏らさない猫耳のすごさを、哺乳動物学者の今泉忠明先生にお聞きしました。
猫は耳を自在に動かせる
猫は耳だけを後ろに向け、効率よく音をキャッチすることができます。また、音がする方向へ瞬時に両耳(もしくは片耳)をクルッと動かすことも得意で、自分の意思で自在に耳が動かせるのです。
理由は、耳介筋が発達したおかげ
猫の耳介(耳の内側の部分)には約30本もの耳介筋という筋肉があり、それらによって耳介を270度回転させることができるのだそう。この能力は、狩りで獲物に集中しながらも、後方の状況を把握するために進化したとものと考えられています。
猫は犬よりも広範囲の音が聞き取れる
猫の聴神経は4万本あり、人よりも1万本多いそう。これにより、天井裏に潜むねずみの足音も聞き逃しません。それどころか、正確な位置までわかるというから驚きです。
優れた聴力で、犬よりも高音をキャッチしていた
猫の聴力は、虫の羽音やネズミの鳴き声などの高い音を聞くために発達しました。そのため猫は、60~6万ヘルツの音まで聞くことが可能です。人の可聴域が20~2万ヘルツ、犬が15~4万ヘルツなのに比べると、猫の方がより高い音が聞こえているのです。
猫は感情を耳で表現できる
自在に動かせる猫の耳は、その瞬間の気持ちが出やすい部位。人は耳の変化を見れば、気持ちを推測することができるのです。
気分によって耳の向きと立ち方が変わる
猫は新しいおもちゃなどの興味があるものを見ると、気持ちが高ぶり、顔全体に力が入って耳がピンと立ちます。反対に安心やリラックスしているときは、少し力が抜け気味になるため、耳が左右に自然に開いているでしょう。
また、恐怖を感じたときは、大切な自分の耳介を守るために、伏せて防御することも。恐怖から威嚇や攻撃の気持ちに転じると、さらに後ろに反らせます。
機敏かつ自在に動き、犬よりも広い可聴域をもつ猫の耳。かわいいばかりじゃなく、今後はその能力にも注目です。
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳動物学者 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2023年3月号『3月3日は耳の日 優れた能力の話とお手入れ法も 猫の耳3つのスゴイ!』
文/小崎華
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。