かかりつけ医から紹介を受けて、別の動物病院がより専門的に検査や治療などを行うことを「二次診療」といいますが、どのような病気や症状がその対象になるのでしょうか。
この記事では、猫に二次診療が必要になるケースについて、獣医師の金園晨一先生にお話を伺いました。飼い主さんの二次診療体験談もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
猫に二次診療が必要になるケース
まずは、二次診療の対象となる病気や症状(一例)をみていきましょう。
原因不明の不調
「元気がない」「食欲が落ちている」など、なんとなく様子がおかしいのに病気が特定できないケースは珍しくありません。二次診療でMRI検査などをしてようやくわかる病気としては、脳腫瘍、鼻や口腔内の腫瘍、門脈シャント、慢性鼻炎、気管支炎などが挙げられます。
がん(悪性腫瘍)
がんは、腫瘍の種類、発生した部位や大きさによっては、高精度な放射線治療や外科手術が必要になるケースがあります。猫に多いのは、鼻のがんや脳のリンパ腫のほか、下垂体腫瘍によって成長ホルモンが過剰になり、難治性糖尿病を引き起こす先端巨大症などです。
慢性的な炎症
放射線治療の対象となるのは、がんだけではありません。感染症ではない慢性的な炎症も、種類によっては放射線治療の対象となります。たとえば、遺伝が関連している関節炎の痛みを緩和したり、特発性膀胱炎の症状を改善したりするのに効果的なケースがあります。
次からは、実際に二次診療を受けたことがある猫の飼い主さんの体験談をご紹介します。
体験談(1)尿管の難所に結石が詰まり二次診療病院を紹介してもらいました
「かかりつけ医で尿管結石との診断を受け、治療については難しい手術が必要になるとのことで、二次診療病院を紹介していただきました。
二次診療でさらに詳しく検査をすると、腎臓や膀胱にも結石があり、また、右の尿管に詰まった結石によって右の腎臓が機能していないことが発覚し、緊急入院。腎臓から膀胱へのバイパス手術、手術をせず腎臓をケアする方法など、治療法をいくつか提案されましたが、尿管結石だけを摘出する手術をお願いしました。
膀胱の結石は入院中に自然排出されたものの、右の腎臓は機能不全のままです。現在は通いなれているかかりつけ医の指導のもと食事療法を行いながら、定期的に検査を受けています」
東京都Y・Iさん/愛猫蘭ちゃん(メス・7才)
体験談(2)膝関節を脱臼して専門病院で手術を受けました
「じゃらしおもちゃの遊びで、ストップ&ゴーを繰り返していたら、足を引きずるようになった愛猫。しばらく歩いていると治るのですが、遊ぶたびに足を引きずるのでかかりつけ医で受診したところ、脱臼していることがわかりました。
紹介状をいただき、整形外科手術ができる専門病院へ。術後は抜糸のために専門医へ行く以外は、かかりつけ医で診てもらっています」
東京都W・Yさん/愛猫ぱんぷくん(オス・2才)
体験談(3)好酸球性角結膜炎で眼科専門の二次診療病院に通院中です
「愛猫はかかりつけ医からの紹介で、2カ月に1回眼科専門の二次診療病院に通っています。病名は好酸球性角結膜炎です。目ヤニや涙目がひどかったのですが、点眼薬や眼軟膏による治療でだいぶ症状がやわらぎました。
目に関わることは二次診療病院で、それ以外の健康で気になることはかかりつけ医で診てもらっています」
東京都I・Mさん/愛猫ルルちゃん(メス・16才)
二次診療を受けた経緯や治療内容などは、さまざまであることがわかりました。愛猫に万一のことがあったときは、獣医師と相談しながら、最善の治療を受けさせてあげられるとよいですね。
お話を伺った先生/金園晨一先生(どうぶつの総合病院専門医療&救急センター病院長 獣医師 米国獣医神経科専門医 アジア獣医神経科専門医)
参考/「ねこのきもち」2023年12月号『愛猫が万一のとき最善の医療を届けるために「二次診療」を知ろう』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。