「マンソン裂頭(れっとう)条虫」という寄生虫を聞いたことはありますか? カエルやヘビを中間宿主とする平べったいヒモ状の条虫で、なかには1mを超える成虫も。それらを捕食することで、猫もこの条虫に感染してしまうことがあります。特に外で暮らした経験のある猫は、気をつけておきたい寄生虫です。
今回は獣医師の小林清佳先生が、「マンソン裂頭条虫」を含む条虫について解説。飼い主さんから伺った、実際のエピソードも交えてご紹介します。
条虫について
条虫には、それぞれの種に固有の中間宿主がいるのが特徴です。条虫の幼虫を宿したノミ・カエル・ネズミなどを猫が口にすることで感染します。猫は毛づくろいをするので、その際にノミをなめとって瓜実条虫に寄生されるケースが多いでしょう。また、外暮らしの経験のある猫はカエルやネズミを捕食し、マンソン裂頭条虫や猫条虫に寄生されます。
実録エピソード:マンソン裂頭条虫の原因はカエル!?
「ドブにはまっていた子猫を保護したところ、翌々日に血便が出ました。動物病院へ連れて行き、綿棒を肛門に入れる検査をすることに。その結果、マンソン裂頭条虫の卵を発見しました。ドブにいたことを説明すると、『ドブにいたカエルを口にしたのでしょう』と獣医さん。ほかの内部寄生虫より生命力が強いと説明があり、2週間治療を続けて、やっと完治しました」
飼い主さんが見つけた片節(へんせつ)で診断も可能
条虫は片節というパーツでつながっていて、その一部がウンチと一緒に出たり、おしりに付いていたりすることもあります。とくに瓜実条虫の片節は、白ゴマのような特徴のある見た目から飼い主さんでも気づきやすい傾向にあります。便検査で見つかるケースもありますが、動物病院でも条虫の片節が付いていないか、猫のおしりまわりを確認します。
症状としては、寄生数が多ければ下痢や便秘、嘔吐などが見られますが、寄生数が少なければ無症状であることがほとんどです。治療には、スポットタイプ、飲み薬タイプ、注射薬があり、条虫の種類や症状によって獣医師が選択します。また、瓜実条虫の場合、ノミがいればノミの駆虫薬も同時に使います。
なお、条虫は人も中間宿主を口にすることで感染します。とくに幼児はノミを誤って口に入れる可能性があるので注意しましょう。
中間宿主となる生き物を猫が口にしてしまうと、条虫が体内に入り寄生してしまうようです。外で暮らしていた猫だけでなく、室内飼いの猫も寄生虫対策をしっかりしてあげましょう。
お話を伺った先生/小林清佳先生(モノカどうぶつ病院院長)
参考/「ねこのきもち」2024年4月号『成猫も、室内飼いも油断できない!<実録>寄生虫13のエピソード』
文/宮田あゆみ
※※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。