猫が特定の場所のニオイを念入りにかいだあと、口を半開きにして“フガ~”とフリーズする「フレーメン反応」。そもそもなぜ猫がフレーメン反応をするのかご存じでしょうか。
今回は、哺乳動物学者の今泉忠明先生に、猫のフレーメン反応について詳しく解説していただきました。
そもそもフレーメン反応って?
フレーメン反応は、フェロモンを確認するときに見せる反応です。
フェロモンとは、同種の動物同士で情報を伝え合い、特有の行動を引き起こすニオイ物質のこと。猫のフェロモンは顔まわり、足先、お尻まわりなどにある臭腺から出されます。
猫はほかの猫の気になるニオイをかぎ、フェロモンかどうかを確認するときに、フレーメン反応をするのです。
フレーメン反応に関する気になる3つの疑問
(1)変顔になるのはなぜ?
猫の上あごには2つの穴があり、鋤鼻器(じょびき)という器官につながっています。猫は「フェロモンがついているかも」と興味をもつと、口を開けて上あごの穴から鋤鼻器にニオイを取り込み確認します。このときの顔が、人には“変顔”のように見えるのです。
なお、鋤鼻器にフェロモンを取り込むと、そのフェロモンの持ち主の性別、発情の有無、年齢などの情報を分析することができるとされています。
(2)クサイと思っているの?
フレーメン反応のときの猫の表情は、「クサイ」と思っているようにも見えますが、実は違います。フェロモンをなるべくたくさん取り込んで真剣に分析しようとしている、真面目な表情なのです。
(3)フレーメン反応をしない猫もいる?
フェロモンは、主に単独行動をする猫同士が繁殖期に出会うためのもの。現代の飼い猫には不要なので、フェロモンを確認しようとしない猫もいるかもしれません。ただし、反応が控え目で、目立たないだけというケースも。
猫はどんなものにフレーメン反応する?
(1)自分のニオイ
毛づくろい中などに、自分のお尻まわりのニオイをかいでフレーメン反応をする猫は多いようです。フェロモンを感じると、自分のものであることはわかっているのに、念のために確認してしまうのでしょう。
また、現代の飼い猫の生活では、ほかの猫のフェロモンをかぐ機会がほとんどないので、自分のフェロモンを確認することが習慣のようになっているケースも。
(2)ほかの猫のニオイ
同居猫のお尻まわり、座っていた場所、排泄物のニオイなどをかいで、フレーメン反応をする猫も多いです。そこにあるフェロモンが、同居猫のものかどうかを確認しているケースもあれば、オスがメスの発情の有無をチェックしているケースもあるでしょう。
(3)フェロモンのニオイがついていそうなモノや場所
猫は「フェロモンがついているかも」と興味をもてば、何でもニオイをかいでフレーメン反応をします。人の汗にも猫のフェロモンに似た成分が含まれているので、猫が衣類や床などをかいでフレーメン反応をした場合は、飼い主さんの汗に反応している可能性があるでしょう。
そのほか、猫はハッカ系のニオイをかぐと、フレーメン反応をすることも。これはハッカ系のニオイが猫のフェロモンに近い成分を含んでいるからと考えられています。みなさんの愛猫は、どんなものにフレーメン反応をしますか?
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳動物学者 「ねこの博物館」館長 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2019年11月号『3号連続 ねこの摩訶不思議反応企画 第2弾 見られるとうれしい、この変顔 フレーメン♡ファンクラブ通信』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。