猫は、ほかの動物と比べて吐きやすいといわれています。飼い主さんは愛猫のおう吐に慣れてしまうと、吐いても「いつものこと」と思ってしまいがちですが、病気の兆候であるケースもあるため甘く考えてはいけません。
そこで今回は、おう吐の症状から考えられる病気の種類について、獣医師の田草川佳実先生に伺いました。
夏のおう吐は熱中症のおそれアリ!
猫が熱中症になったときの症状のひとつに、おう吐があります。愛猫が突然吐いてぐったりしている、体が熱い、口呼吸をしているなどの症状がある場合は、熱中症を疑いましょう。
まずは濡れたタオルなどで猫の体を冷やし、動物病院に至急連絡をして指示を仰いでください。
おう吐で疑われる代表的な病気・トラブル6つ
胃炎
胃が炎症を起こす病気で、食欲や元気がなくなっておう吐を繰り返します。原因はさまざまで、感染症、アレルギー、異物の誤食、免疫の病気などです。
慢性腎臓病
腎臓の機能が低下し、血液中の老廃物を尿中に排出できなくなる病気です。進行して重症になると、血液中の毒素が増加する「尿毒症」になり、食欲が低下して痩せる、頻繁におう吐や下痢をする、脱水症状になるなどの症状が出ます。
毛球症(もうきゅうしょう)
毛づくろいで飲み込んだ毛が大きな毛玉になり、体内から排出できなくなる病気です。食欲や消化機能の低下、おう吐などの症状が出ます。毛玉が詰まって腸閉塞を起こすこともあり、病状によっては開腹手術が必要な場合も。長毛の猫は特に注意しましょう。
便秘
腸の異常や便が硬いなど、猫はさまざまな理由で便秘になります。ウンチをしようと力を入れたときに吐く場合は、腸閉塞を起こしているおそれも。たかが便秘と思わずに、排便姿勢をとっているのにもかかわらず便が出ずに吐いてしまうときは、すぐに受診してください。
三臓器炎
猫の体は、十二指腸・膵臓・胆のうが隣接しており、これらのうち1カ所に炎症が起こると、ほかの2つの臓器にも波及しやすいのが特徴です。炎症性腸疾患・膵炎・胆管肝炎を併発している状態を「三臓器炎」と呼び、おう吐の症状がよくあらわれます。
回虫・条虫など
回虫や条虫といった寄生虫は、猫がおう吐する原因になりますが、猫のおう吐物によくみられるのは主に回虫です。回虫はヒモのような見た目の細い虫で、外で暮らしていた猫や子猫に比較的多くみられます。内服薬などの駆虫薬の投与で治療できるため、気になる場合は動物病院で相談をしてみてください。
おう吐の症状があるシニア猫に多い病気2つ
膵炎(すいえん)
膵臓に炎症が起き、食欲や元気が低下して、激しいおう吐や下痢の症状がよくみられる病気です。膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、猫では慢性膵炎が多いと考えられています。中高齢の猫に多い病気です。
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
高齢の猫に多くみられる、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。代謝が上がるため、活発になるなど一見元気になったように見えがちですが、おう吐や下痢、多飲多尿、食欲が増すのに痩せるなどの症状が出ます。
猫は吐きやすい動物ですが、おう吐が病気のサインである場合もあります。少しでも愛猫の様子がおかしいなと感じたら、早めに動物病院を受診して検査をしてもらうといいでしょう。
お話を伺った先生/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
参考/「ねこのきもち」2024年7月号『何を? どうして? 対策は? 見極め方付きで 猫の「吐く」が、わかる!』
文/東里奈
※記事と写真に関連性がない場合もあります。