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【獣医師解説】猫の下痢の原因 続くときの食事はどうする?
オシッコやウンチは、猫の体調が表れるバロメーター。だからこそ、愛猫がふだんと違うウンチをしたときに、飼い主さんができることを知っておきたいものです。今回は、猫の下痢の原因や予防法、下痢をしたときの食事や病院へ持っていくものなどを解説します。
この記事の監修

田草川 佳実 先生
聖母坂どうぶつ病院副院長
北里大学獣医畜産学部(現 獣医学部)獣医学科卒業
●資格:獣医師/認定こいぬこねこ教育アドバイザー(JAHA認定)/General Practitioner Certificate IN Small Animal Surgery(小動物外科学)
●所属:日本獣医動物行動研究会/日本獣医がん学会/日本獣医腎泌尿器学会
どんな便が下痢なの?~下痢便の見分け方~

そもそも、どんなウンチの状態なら下痢というのでしょうか? じつはそのポイントは、ウンチの形にあり。ウンチがどんな形かによって水分量が見極められるのです。
正常な便の見分け方

一般的にいいとされる便は写真のように、塊状の便が長くバナナのように連なり、適度な水分でツヤがある状態のもの。トイレ砂がしっかり付く程度の固さをしています。
便秘している便の見分け方
正常な便と形状が似ていますが、表面がカチカチになっているか短くてコロコロしている便は、便秘ぎみか便秘の便といえます。毎日ウンチが出ていても、排便の際に鳴く、トイレで気張っている時間が長い、排便後も気張っている、排便した後で吐くなどの様子が見られたら、便秘していると考えられるでしょう。
下痢している便の見分け方
形が崩れた軟便や、ドロドロ・ユルユルになっている水様便は、どちらも下痢といいます。正常な便より水分を多く含んでいるため、きれいなバナナ形が保てず泥状になります。
ウンチの異常を見分けるために大切なこと
異変に気付くには、ふだんの状態を知ることが大切です。健康管理のためにも、愛猫のウンチの色やニオイ、形、固さを観察してみましょう。トイレ掃除のついでに、割り箸で持ったり割ったりしてみるのもおすすめです。
猫が下痢をする主な要因

猫の下痢には、必ず何らかの原因があります。一例として次のような原因が挙げられますが、なかには病気のサインの場合もあるので、下痢が数日続いたり、ほかにも不調が見られたりする場合は、必ず獣医師に相談しましょう。
食事が合っていない
キャットフードを切り替えたタイミングで下痢をする猫も。この場合は腸内環境の乱れによる消化不良や、食物アレルギーを起こしていることなどが考えられます。
誤食した
おもちゃの一部やひもなどを誤って口にして、腸を通過した際に刺激になって下痢の症状があらわれることがあります。
ストレスを感じている
引っ越しや新しく猫を迎えるなど、環境の変化によって、猫もストレスを感じることが。緊張した状態が一定期間続くと、胃や腸の働きが低下して、下痢を起こす原因になり得ます。
ウイルス感染している
ウイルスに感染し胃腸炎を発症すると、下痢をすることが。とくにパルボウイルスによる「猫汎白血球減少症(ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう)」にかかると、激しい下痢や嘔吐を引き起こします。
寄生虫がいる
腸に回虫や条虫、原虫などが寄生すると、腸内の栄養が横取りされ、下痢を引き起こす原因に。寄生虫は、とくに子猫に多く見られる原因です。
細菌や病気が潜んでいる
細菌が繁殖しているか、膵臓や肝臓、腎臓など消化管以外の臓器に異常がある場合も、下痢を引き起こすことが。さらに悪性腫瘍などがある場合も、ウンチが緩くなることが多いです。
下痢の症状があるときは、食事をどうしたらいい?

フードはパッケージの記載などを参考にして、まず与え過ぎに注意しましょう。フードを替えた直後なら、フードを元に戻すことを試したいです。それでも下痢をする場合は、かかりつけの獣医師に相談して、消化しやすいものや高繊維のもの、低アレルギーのものなど、愛猫に合ったフードを与えてみるのも一案です。
また、飲み水も大事なポイントですので、愛猫が毎日キレイな水を飲めるよう、こまめに水を取り替えるなどの工夫ができるといいでしょう。
病院へ連れていくべき症状と、受診時に持っていくもの

愛猫の下痢を発見したら、すぐに愛猫にほかの症状が出ていないか確認しましょう。嘔吐や食欲の有無を見たら、次に下痢自体の観察をします。下痢以外の異常も見られる場合や、下痢が続く場合は、病院を受診しましょう。
便に異常が見られる場合、最初に行うのは検便なので、できれば便も持参できるとベターです。形が潰れたり、トイレの砂が混じったりしていても問題ありませんので、ポリ袋でつかみとってそのまま病院に持参しましょう。
基本的には新鮮なものを持っていくことが理想ですが、すぐに受診できないような場合は、便を常温で保存します。それも難しい場合は、スマートフォンで撮影したものを獣医師に見せましょう。
飼い主さんができる猫の下痢予防
下痢の中には生活環境を整えることで改善が期待できるものもあります。主に次のことに配慮して、愛猫の健康管理に努めましょう。
適度に運動させる

肥満は、腸の動きを鈍らせるので下痢や便秘の原因に。毎日短時間でもいいので、愛猫と遊んであげましょう。ほかにも、猫タワーを置くなどして、猫が自分で運動できる環境を整えるのも効果的です。
「温活」に努める

猫は体質上、寒さが苦手な動物なので、冷えた環境はストレスになります。冬はもちろん、夏でも1カ所は猫ベッドや毛布を置くなどして猫自身で温まれる場所を作っておくといいでしょう。
ワクチン接種をしっかり受ける

ウイルスの一種・パルボウイルスの感染は、下痢になる一因です。室内飼いだからといって油断せず、かかりつけの獣医師と相談の上、定期的にワクチン接種(3種混合など)を行いましょう。
トイレをこまめに掃除する

こまめにトイレをキレイにするということは、頻繁に排泄物をチェックできるので、いち早く愛猫の異変に気付くことができます。
参考/「ねこのきもち」2017年6月号『体からのお“便”り 大切なことはウンチが教えてくれる』(監修:聖母坂どうぶつ病院獣医師 田草川佳実先生)
「ねこのきもち」2016年2月号『病気につながることもあるから見過ごさないで!ウンチが出ていても便秘かもしれません』(監修:聖母坂どうぶつ病院獣医師 田草川佳実先生)
「ねこのきもち」2019年10月号別冊『気を付けてあげたいことがわかる! 猫ストレス大事典』(監修:帝京科学大学生命環境学部講師 動物看護師 小野寺温先生)
監修/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
文/こさきはな
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