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【獣医が教える】猫の肺炎ってどんなもの? −原因と症状、治療法、治療費まで−

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猫には比較的特徴的な呼吸器疾患がいくつかありますが、今回は「肺炎」について取り上げます。猫の肺炎の原因は多岐に渡り、ウィルス、細菌、誤嚥、薬剤、有毒ガスなどさまざまです。肺炎は重篤化すると発熱や呼吸困難を伴い、命に関わる危険性もあるため、空咳などの初期症状を見逃さないことが大切になります。猫の肺炎について正しい知識を持ち、愛猫の健康を守りましょう。

猫の肺炎とは

肺炎とは、その名の通り肺で起こる炎症のことです。ただし、原因や炎症を起こしている部位によって、さまざまなものに分類されます。「炎症」というものは免疫反応として必要な現象ですが、それが肺で起こると酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなり、結果として呼吸不全に陥ります。
人間で頻発する肺炎ですが、猫においては一般的な疾患というわけではありません。肺炎の原因となるものは多岐に渡りますが、猫の場合、通常は何かしら基礎疾患があったり、鼻、咽頭、喉頭や気管といった上部気道の感染症が悪化することで起こります。
感染性の肺炎が主で、特に免疫力が低い幼少期と高齢期に発症しやすいです。ただし、原因によっては中年期で最も多く見られるものもあります。
原因や猫の健康状態にもよりますが、全体として肺炎の予後は悪く、死亡率が高い傾向にあります。

肺炎の種類とその原因

肺炎の種類とその原因として、主に以下のものが挙げられます。

● 細菌性肺炎
ほかの呼吸器の問題などがあり、二次感染で起こることが多い肺炎です。

● ウィルス性肺炎
猫風邪と呼ばれる上部気道感染の中でウィルス性のものが悪化した場合に起こります。

● 真菌性肺炎
免疫力が低下すると起こることが多い肺炎です。

● 原虫性肺炎
猫ではとくに、トキソプラズマという原虫に感染することで起こり得ます。

● 誤嚥性(吸入性)肺炎
嘔吐物や食べ物のカスなどが、誤って肺に入ることで起こります。

● 特発性間質性肺炎(好酸球性肺炎や特発性肺線維症)
原因不明の肺炎です。主に肺の間質と呼ばれる組織に病変が見られます。好酸球性肺炎に関しては、アレルギーや寄生虫や真菌感染との関係が明らかな場合もあります。

● その他の肺炎
寄生虫に起因する肺炎や、脂質性肺炎と呼ばれるものもあります。
有毒ガスを含むような煙の吸引も、肺や気管支に炎症を起こす原因になります。
また、猫での報告は多くありませんが、薬剤によって好酸球性肺炎が誘発されることもあります。

猫の肺炎の症状と見分け方

咳、努力性の呼吸、呼吸が速い、すぐ疲れる、といった呼吸器症状が見られます。加えて、上部気道のウィルス感染症の症状である くしゃみ、鼻水、結膜炎が伴う場合もあります。また、発熱や食欲不振が見られる場合もあります。ただし、猫の場合には目立った症状が現れないこともあるので注意が必要です。
呼吸器症状だけですぐに肺炎という判断はできませんが、上部気道感染の治療が長引いていたり、嘔吐した直後やご飯を食べたり薬を飲ませた直後に苦しそうな様子を見せる場合は、肺炎の可能性があります。
呼吸器症状の中でも乾いたような咳(空咳)をする場合は、猫の喘息であることがあります。肺炎とは異なりますが、治療が必要な病気です。頻繁に咳をする場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。

猫の肺炎の症状が出た時の対処法

猫は呼吸の状態が悪いと急激に具合が悪くなることがあります。
例え肺炎に至っていなかったとしても、呼吸が苦しそうだとか、咳やくしゃみといった症状が見られる場合には、早めに動物病院で検査してもらいましょう。
興奮すると呼吸が苦しくなるので、病院に行くまではできるだけ安静に過ごせる環境を作りましょう。

猫の肺炎の検査・診断・治療法と治療費

肺炎を疑う場合には、肺炎かどうか、肺炎である場合には原因は何か、どういった治療が適切かを調べるために、以下の検査を行うことがあります。

1.病歴の聴取
もともとの病気の有無や、症状の出たタイミングなどを聴取します。

2.聴診、触診、視診、体温・心拍数・呼吸数の測定
その時点での全身の状態を把握します。

3.X線検査
肺や気管支の病変を見つけます。

4.血液検査
身体での炎症の程度や、他の病気がないか確認します。

5.気管洗浄による細胞診や微生物培養
気管を洗浄して、洗浄液に含まれる細胞や微生物を検査します。全身麻酔が必要です。

6.PCR検査
上部気道感染を起こす病原体の存在を確認します。

7.その他の方法
肺の寄生虫の幼虫が糞便中に出ることがあるので、寄生虫が疑われる場合には糞便検査をします。場合によっては、肺に針を刺して肺の細胞を直接検査したり、肺の一部を切除して病理組織検査を行う必要があることもあります。

肺炎はどれか一つの検査で診断がつくものではなく、いくつかの検査の結果から総合的に判断して診断を行っていきます。
一概には言えませんが、いわゆる町のお医者さんである一次病院では、1〜4の検査を基本に診断を立てて治療を行っていき、状況に応じて5〜7を取り入れ、症状がかなり重篤だったり治療しても症状が良くならなければ、最終的に大学病院など二次病院への紹介という流れになります。

猫の肺炎の治療法

治療は大きく分けて、以下のような流れになります。

1.感染している病原体および二次感染を防ぐための治療薬の投与
抗菌薬や抗真菌薬、虫下しなどを投与していきます。猫ではウィルスに対して、抗ウィルス薬やウィルスへの抵抗力を高めるインターフェロンを使うことができます。

2.感染以外の肺炎であれば、アレルギーや薬剤など除去可能な原因を取り除く
アレルギーの原因になるアレルゲン、薬剤、有害ガスとの接触を取り除きます。

3.呼吸器症状に対する対症療法
気管支拡張薬や、鎮咳薬を使うことがあります。

4.点滴や給餌などの支持療法
ご飯が食べられない場合は、食道チューブや胃瘻チューブを設置したり、点滴を行って体力が落ちないようにサポートします。

5.酸素の吸入
肺の状態が悪いと低酸素状態になるため、酸素濃度を高くした入院室で管理します。症状がひどい場合には、入院での治療が必要になります。

猫の肺炎の治療費

治療費は、症状や原因、使う薬によって変わってきます。また、動物病院は自由診療なので、病院のある地域や規模によっても価格は変わってきます。
1~4の検査では、数千円から1万数千円ほどで収まることが多いでしょう。ただし、他の検査が追加で求められることはあり得ます。
あまり重症でなく自宅で治療できる場合には、治療期間によりますが、薬と経過を見るための検査で数万円ほどでしょう。
入院が必要な場合には、症状が重篤であると考えられます。命にも関わるため、厳重な管理と検査・治療が必要とされます。そのため、費用は十数万~数十万に至る可能性があります。

猫の肺炎の予後

肺炎の原因によって予後は変わってきます。

● 細菌性肺炎
適切な抗菌薬による治療と、支持療法により予後が良いことが多いです。

● ウィルス性肺炎
上部気道感染が肺炎まで悪化する場合、予後はあまり良くありません。

● 真菌性肺炎
原因真菌によりますが、基本的に予後は悪いです。

● 原虫性肺炎
肺炎になるような状況では、基本的に予後は悪いです。

● 誤嚥性肺炎
誤嚥した物質の量や特性によります。胃から逆流した胃内容物を誤嚥した場合は、重症化しやすいです。

● 特発性間質性肺炎
治療に反応するかどうかによります。もともとの病気が悪化して肺炎にまでなってしまう状態だと、あまり予後は良くないようです。

猫の肺炎の予防法

細菌性肺炎や真菌性肺炎、原虫性肺炎は免疫力の低下などにより引き起こされることが多いです。猫の免疫力低下を引き起こすものとして特に注意が必要なのはウィルス疾患です。
具体的なものとして、猫免疫不全ウィルス(FIV)を筆頭に、猫白血病ウィルス(FeLV)や上部気道感染の原因になる猫ヘルペスウィルス(FeHV-1)、猫カリシウィルス(FCV)が挙げられます。
これらのウィルスは、ワクチン接種や感染猫との接触を避けることで、感染や重症化を防ぐことができます。仮に上部気道感染や病気になっても、早いうちに治療を行うことで、肺炎になる前に適切な治療を施すことができます。
たばこや一部のアロマは、呼吸器の病気が悪化することがあるので避けた方が良いでしょう。
誤嚥や特発性の肺炎を防ぐのは難しいですが、誤嚥に関しては、嘔吐を伴ったり寝たきりになっている場合かかりやすいため、急に苦しそうにしたり咳込むようであれば、すぐに病院へ連れて行きましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ご覧いただいた通り、猫の肺炎はさまざまな原因によって起こります。肺炎は一度なってしまうと、命に関わることもある怖い疾患です。
大抵の場合には、元ある病気が悪化したり、免疫力が低下することをきっかけに発症しますので、呼吸器症状が出た時点で早めに治療を行うことで、肺炎が重篤化するのを防ぐことができます。特に、子猫や高齢猫で何かしらの病気を患っている際には、呼吸の様子にも注意して観察するようにしましょう。


参考:
長谷川篤彦・辻本元 監訳『SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICIN 第4版』, interzoo
Lesley G.King著/多川政弘・局博一 監訳『犬と猫の呼吸器疾患』, interzoo
長谷川篤彦 監訳『クリニカルベテリナリーアドバイザー』, intersoo


監修/見津友啓(獣医師・
パティ動物病院 院長)

※治療費はあくまで目安です。動物病院にお問い合わせください。

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