猫と暮らす
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海鳥を襲う猫を“害”にしない活動「天売猫」。過去の経験を元に島民全体で取り組んだこととは?
北海道北西に位置する「天売島」の猫"天売猫"をご存知ですか?
北海道の北西に位置する「天売島(てうりとう)」。
海鳥の聖地となっているこの島で、25年以上も前から行われてきた
島の猫「天売猫」に関するプロジェクトを取材しました。
※この記事の情報は、すべて2018年2月10日段階のものです。
海鳥の聖地となっているこの島で、25年以上も前から行われてきた
島の猫「天売猫」に関するプロジェクトを取材しました。
※この記事の情報は、すべて2018年2月10日段階のものです。
海鳥の繁殖が、猫によって激減した天売島
JR札幌駅から、バスとフェリーを乗り継いで4時間半。世界有数の海鳥の生息地・天売島では、ずっと問題になっていることが。それは「ノラ猫の増加」です。
一般的なノラ猫問題というと、田畑を荒らされたり、糞尿のトラブルなど、人の生活への被害。しかし天売島では、さらに、貴重な海鳥が補食される被害も続いています。
「島にある海鳥の繁殖地は、国の天然記念物に指定されています。海鳥が減るのはもちろん、繁殖地に支えられている観光業の点からしても、ノラ猫の問題は、天売島にとって大きな懸案事項でした」と話すのは、羽幌(はぼろ)町にある施設「北海道海鳥センター」のスタッフであり、「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会のメンバーでもある石郷岡(いしごうおか)さん。
一般的なノラ猫問題というと、田畑を荒らされたり、糞尿のトラブルなど、人の生活への被害。しかし天売島では、さらに、貴重な海鳥が補食される被害も続いています。
「島にある海鳥の繁殖地は、国の天然記念物に指定されています。海鳥が減るのはもちろん、繁殖地に支えられている観光業の点からしても、ノラ猫の問題は、天売島にとって大きな懸案事項でした」と話すのは、羽幌(はぼろ)町にある施設「北海道海鳥センター」のスタッフであり、「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会のメンバーでもある石郷岡(いしごうおか)さん。
「この問題を解決すべく、行政や民間の団体が、2回にわたって行ってきたのが、天売猫に関する取り組みです。海鳥を守るためとはいえ、猫を処分することはできません。ですから第1弾では、ノラ猫を一斉に去勢・避妊手術しましたが、満足な結果が得られず……。しかしその後の第2弾の取り組みが、まさに成果をあげようとしているところです」。
去勢・避妊手術だけでは、海鳥への被害は減らなかった
天売島でノラ猫が増え始めたのが、1990年頃。飼い猫が野生化して増えていったと考えられています。「まずはこれ以上ノラ猫を増やさないために、北海道獣医師会と協力し、'92年から5年間に渡って、島内のノラ猫に去勢・避妊手術を行いました」と石郷岡さん。
「結果、この第1弾の取り組みでは、200匹を超えるノラ猫の手術に成功。猫の数の増加を抑えることができました。しかし手術をした猫を島に再び放していた(=TNR)こともあり、海鳥への被害は減らず、取り組みの効果は確認できませんでした。また、未手術の猫が捕獲しにくくなってきたこともあり、'96年にこの取り組みは終了しました」。
「結果、この第1弾の取り組みでは、200匹を超えるノラ猫の手術に成功。猫の数の増加を抑えることができました。しかし手術をした猫を島に再び放していた(=TNR)こともあり、海鳥への被害は減らず、取り組みの効果は確認できませんでした。また、未手術の猫が捕獲しにくくなってきたこともあり、'96年にこの取り組みは終了しました」。
島の“すべての猫”を対象に、2013年から再始動
初回の取り組みもむなしく、島では、2000年に入る頃には以前と変わらないまでにノラ猫が増加しました。そこで、'13年から2回目の天売猫に関する取り組みを始めます。
「前回の反省をもとに皆で意見を出し合って、飼い主のいる猫の飼い方や、去勢・避妊手術をした猫の術後の生活など、天売島の"すべての猫"のことを考えた方法を採用することになりました」(石郷岡さん)。
取り組み開始にあたって、羽幌町はまず「天売島ネコ飼養条例」を制定。島内の飼い猫へのマイクロチップの挿入・登録を義務付け、飼い猫の管理体制を整えました。
「前回の反省をもとに皆で意見を出し合って、飼い主のいる猫の飼い方や、去勢・避妊手術をした猫の術後の生活など、天売島の"すべての猫"のことを考えた方法を採用することになりました」(石郷岡さん)。
取り組み開始にあたって、羽幌町はまず「天売島ネコ飼養条例」を制定。島内の飼い猫へのマイクロチップの挿入・登録を義務付け、飼い猫の管理体制を整えました。
「制定時には、島に臨時の動物病院を開設し、マイクロチップの挿入を実施しました。また、飼い猫が望まない子猫を産んでしまうことを懸念し、やむを得ず屋外で飼う場合は、去勢・避妊手術の実施も義務付けました」(石郷岡さん)。
島の全猫把握は間近! さらに譲渡も進めていく
'13年からの取り組みでは、6年間で、130匹の保護と105匹の譲渡に成功。譲渡を待つ残りの猫たちも、海鳥センターを始めとする協議会の参加団体や預かりボランティアによって、お世話を受けています。「島にはあと10匹程のノラ猫がいると思われます。引き続き、保護に努めていきます」と石郷岡さん。
また、最近協議会では、ノラ猫問題に関する啓蒙にも努めているそう。「より多くの人に、取り組みへの関心をもってもらうために、動物愛護フェスティバルや協議会主催のシンポジウムなど、イベントがある際には天売島の猫に関するブースを出展したり、子供もノラ猫問題に触れられる『天売猫カードゲーム』を製作したり……。島民と取り組みについて話し合うこともあります」(石郷岡さん)。
また、最近協議会では、ノラ猫問題に関する啓蒙にも努めているそう。「より多くの人に、取り組みへの関心をもってもらうために、動物愛護フェスティバルや協議会主催のシンポジウムなど、イベントがある際には天売島の猫に関するブースを出展したり、子供もノラ猫問題に触れられる『天売猫カードゲーム』を製作したり……。島民と取り組みについて話し合うこともあります」(石郷岡さん)。
そもそもは海鳥を守るために始まったこの取り組み。しかし結果、島のすべてのノラ猫に新しい飼い主さんを見つけるという、前代未聞の結果を出そうとしています。「人々の理解と協力、そして実行に移す気持ちさえあれば、猫の問題は解決できる」ということを証明した天売島で、「達成」の声があがるのはもう間近です。
問い合わせ先
「天売島のネコ問題」
URL http://teuri-neko.net/
このサイトには、お問い合わせができるほか、「天売猫」に関する活動内容などについても記載されています。
出典/「ねこのきもち」2018年4月号「猫のために何ができるのだろうか」
文/「ねこのきもち」編集室
カメラマン/石原さくら
URL http://teuri-neko.net/
このサイトには、お問い合わせができるほか、「天売猫」に関する活動内容などについても記載されています。
出典/「ねこのきもち」2018年4月号「猫のために何ができるのだろうか」
文/「ねこのきもち」編集室
カメラマン/石原さくら
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