猫と暮らす
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【獣医師監修】猫がミネラルウォーターを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
猫にミネラルウォーターを与えるなら、硬水は避けましょう。硬水には、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルを多く含んでいて、猫の尿路結石の原因になりかねません。猫にはどんな水を与えればよいのか、ミネラルウォーターの選び方を含めて紹介します。

佐野 忠士 先生
獣医師
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
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酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫にミネラルウォーターを与えるときは尿路結石に要注意。与えるなら軟水がベター
猫にミネラルウォーターを与える場合は、種類を選ぶ必要があります。猫に適しているのは軟水。外国製のミネラルウォーターの多くは硬水なので、猫に与えるのは避けましょう。
では、なぜ猫には硬水のミネラルウォーターは好ましくないのか。それは、ミネラルウォーターにはマグネシウムやカルシウムなどのミネラル分が多く含まれているため、長期間にわたり飲み続けると、尿路結石の原因になると考えられています。明らかな研究結果があるわけではありませんが、尿路結石になる危険性がゼロというわけではないので、あえてそのリスクを冒す必要はないでしょう。
また、水道水は塩素によって殺菌されていますが、ミネラルウォーターの多くは加熱処理による殺菌にとどめられているので、暑い部屋に長時間放置しておくと雑菌が繁殖する心配もあります。塩素(次亜塩素酸ナトリウム)によって消毒されている水道水に比べて、ミネラルウォーターにはカルキ臭がなくて猫が飲みやすいという利点はありますが、硬水を選んで与えたのではかえって健康を損なうことになりかねません。猫にミネラルウォーターを与えるなら、軟水を選びましょう。
では、なぜ猫には硬水のミネラルウォーターは好ましくないのか。それは、ミネラルウォーターにはマグネシウムやカルシウムなどのミネラル分が多く含まれているため、長期間にわたり飲み続けると、尿路結石の原因になると考えられています。明らかな研究結果があるわけではありませんが、尿路結石になる危険性がゼロというわけではないので、あえてそのリスクを冒す必要はないでしょう。
また、水道水は塩素によって殺菌されていますが、ミネラルウォーターの多くは加熱処理による殺菌にとどめられているので、暑い部屋に長時間放置しておくと雑菌が繁殖する心配もあります。塩素(次亜塩素酸ナトリウム)によって消毒されている水道水に比べて、ミネラルウォーターにはカルキ臭がなくて猫が飲みやすいという利点はありますが、硬水を選んで与えたのではかえって健康を損なうことになりかねません。猫にミネラルウォーターを与えるなら、軟水を選びましょう。
ミネラルウォーターのおもな栄養素|カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどミネラルが豊富

農林水産省食品流通局が定めている「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」では、ミネラルウォーター類を以下の4つに分類しています。
ナチュラルウォーター
特定水源から採水された地下水で、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理は行われてない水。
ナチュラルミネラルウォーター(天然水)
特定水源から採水された地下水で、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外に、複数の原水の混合やミネラル分の微調整などを行った水。
ミネラルウォーター
特定水源から採水された地下水で、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外に、原水の成分を大きく変化させた水。
ボトルドウォーター(または飲料水)
原水が地下水以外で、食品衛生法に基づく殺菌処理がなされた水。
一般的なミネラルウォーターは、「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」「ミネラルウォーター」の3種類。この3種は地下水を原水としているので、自然の恵みともいえるミネラル分を多く含んでいる水であるといえます。では、どんなミネラル分が含まれているのか、おもな栄養素を紹介します。
カルシウム|丈夫な骨や歯を作る。過剰摂取で結石や高カルシウム血症の可能性あり
カルシウムは、「リン」と共に骨や歯を作り、健康を保つのに欠かせない栄養素です。また、筋肉をスムーズに動かす作用もあります。
ただし、摂り過ぎは腎臓結石や尿路結石の原因となるほか、血中のカルシウム濃度が上がる「高カルシウム血症」になると便秘や吐き気、嘔吐、尿の増加、脱水、喉の渇きなどの症状を引き起こす可能性があります。
ただし、摂り過ぎは腎臓結石や尿路結石の原因となるほか、血中のカルシウム濃度が上がる「高カルシウム血症」になると便秘や吐き気、嘔吐、尿の増加、脱水、喉の渇きなどの症状を引き起こす可能性があります。
マグネシウム|骨を丈夫に。神経伝達や筋肉収縮をスムーズに
マグネシウムには、丈夫な骨をキープし、神経の伝達や筋肉の収縮をサポートする働きがあります。多量に摂取すると「ストルバイト結石」を形成しやすくなると考えられています。
ナトリウム|体内の水分量の調整。過剰摂取は高血圧やむくみの原因に
ナトリウムは、カリウムとバランスを取りながら、体内の水分を一定に保つほか、神経や筋肉をスムーズに働かせるのに役立ったりします。過剰摂取によってカリウムとのバランスが崩れると、水分を体内にため込んでしまうことで血圧が上昇したり、むくみの原因になったりします。
カリウム|利尿作用と高血圧の予防。ただし腎臓病、心臓病には注意
カリウムには、体の中の余分な塩分を尿として排出し、血圧を下げる作用があります。ただし、腎臓機能が弱ってくると、使い切れなかったカリウムを尿として体外に出す能力が低くなり、血中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる可能性があります。
高カリウム血症は、四肢のしびれや筋肉のけいれん、不整脈などを引き起こすので、腎臓病の猫や加齢で腎機能が低下している猫、心臓が弱っている猫にカリウムが含む食品を与える際は、注意が必要です。
高カリウム血症は、四肢のしびれや筋肉のけいれん、不整脈などを引き起こすので、腎臓病の猫や加齢で腎機能が低下している猫、心臓が弱っている猫にカリウムが含む食品を与える際は、注意が必要です。
猫には「硬水」「軟水」どっちがよい?
先述したとおり、猫に与える場合は軟水を選びましょう。ここで、硬水・軟水の違いについて見ておきましょう。
軟水と硬水の違いは、水1リットルあたりに含まれるミネラル分(カルシウムとマグネシウム)の濃度で決まります。その算出方法は国によって違いますが、WHO(世界保健機関)の規定では、120mg/L未満の水を軟水、120mg/L以上の水を硬水と定めています。日本では一般的に、硬度0~100mg/Lを軟水、101~300mg/Lを中硬水、301mg/L以上を硬水としています。原水を採水する地域によって一部、中硬水の部類に入るものはありますが、ほとんどが軟水です。
硬水に含まれるミネラル分は、地下の岩石から長時間かけて溶け出したものですが、日本は地層的に水が地下に滞留している時間が短いため、天然の水に含まれるミネラルは少なくなります、それに対して、石灰地質のヨーロッパ大陸などでは、水が地下に滞留する時間がひじょうに長く、その分多くのミネラルが水に溶け込みます。そのため海外製のミネラルウォーターは、硬度が高い硬水が主流となっているのです。
硬水は天然のミネラル成分を摂取できる利点はあるものの、過剰に摂取すると腸が刺激されて下痢を引き起こす場合があります。また、硬水のミネラルウォーターを毎日与え続けると、おしっこ中のカルシウムやマグネシウム、リンといったミネラル成分が増えすぎて体液が強いアルカリ性に傾き、腎臓や膀胱内に結晶や結石ができやすくなります。とくに、以前に結石を患ったことのある猫や余分なミネラルを体外に排出する役割を果たす腎臓が弱っている猫には、硬水のミネラルウォーターは与えてはいけません。
軟水と硬水の違いは、水1リットルあたりに含まれるミネラル分(カルシウムとマグネシウム)の濃度で決まります。その算出方法は国によって違いますが、WHO(世界保健機関)の規定では、120mg/L未満の水を軟水、120mg/L以上の水を硬水と定めています。日本では一般的に、硬度0~100mg/Lを軟水、101~300mg/Lを中硬水、301mg/L以上を硬水としています。原水を採水する地域によって一部、中硬水の部類に入るものはありますが、ほとんどが軟水です。
硬水に含まれるミネラル分は、地下の岩石から長時間かけて溶け出したものですが、日本は地層的に水が地下に滞留している時間が短いため、天然の水に含まれるミネラルは少なくなります、それに対して、石灰地質のヨーロッパ大陸などでは、水が地下に滞留する時間がひじょうに長く、その分多くのミネラルが水に溶け込みます。そのため海外製のミネラルウォーターは、硬度が高い硬水が主流となっているのです。
硬水は天然のミネラル成分を摂取できる利点はあるものの、過剰に摂取すると腸が刺激されて下痢を引き起こす場合があります。また、硬水のミネラルウォーターを毎日与え続けると、おしっこ中のカルシウムやマグネシウム、リンといったミネラル成分が増えすぎて体液が強いアルカリ性に傾き、腎臓や膀胱内に結晶や結石ができやすくなります。とくに、以前に結石を患ったことのある猫や余分なミネラルを体外に排出する役割を果たす腎臓が弱っている猫には、硬水のミネラルウォーターは与えてはいけません。
「硬水」と「鉱水」は同じ?
「硬水」は、水に含まれるミネラル分(カルシウムとマグネシウム)の濃度で分類された分類です。
一方「鉱水」というのは、原材料としての定義で、「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によると、「ポンプ等により取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水」と定義されています。その他、井戸水、涌水、伏流水などがあります。
つまり、市販されているミネラルウォーターは水の種類としては「鉱水」、含まれるミネラル分の成分濃度からは「硬水」「軟水」どちらもあるといえます。つまり、猫に与える場合は、硬度を基準にして軟水を選ぶことになります。
一方「鉱水」というのは、原材料としての定義で、「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によると、「ポンプ等により取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水」と定義されています。その他、井戸水、涌水、伏流水などがあります。
つまり、市販されているミネラルウォーターは水の種類としては「鉱水」、含まれるミネラル分の成分濃度からは「硬水」「軟水」どちらもあるといえます。つまり、猫に与える場合は、硬度を基準にして軟水を選ぶことになります。
猫に適した「pH(ペーハー)値」とは?
ミネラルウォーターの原材料表示を見ると、「pH値」も表示されています。pH(ペーハー)とは、酸性とアルカリ性の度合いを表す尺度で、水に含まれる水素イオン濃度を表す数値です。1~14の数値で度合いが表示されますが、pH値7は中性、それ未満は酸性、それ以上はアルカリ性となっています。
硬度が高いミネラルウォーターはヨーロッパなどの海外製のものに多く、体に素早く吸収される、便秘の解消が期待できるなどのメリットがある一方、苦みがあり飲みにくい、胃腸障害を起こす可能性がある、などのデメリットも。対して、硬度の低い軟水は、口当たりがよく飲みやすく素材を生かす料理に向いていて、胃腸の未熟な乳幼児にも安心ですが、積極的にミネラルを摂取することはできません。
いずれにしても、アルカリ性・酸性でのどちらかに極端に偏った水は、猫の体には好ましくないものです。
硬度が高いミネラルウォーターはヨーロッパなどの海外製のものに多く、体に素早く吸収される、便秘の解消が期待できるなどのメリットがある一方、苦みがあり飲みにくい、胃腸障害を起こす可能性がある、などのデメリットも。対して、硬度の低い軟水は、口当たりがよく飲みやすく素材を生かす料理に向いていて、胃腸の未熟な乳幼児にも安心ですが、積極的にミネラルを摂取することはできません。
いずれにしても、アルカリ性・酸性でのどちらかに極端に偏った水は、猫の体には好ましくないものです。
猫にミネラルウォーターを与えるなら「軟水」「中性」
猫に与えるなら、中性の軟水が適しています。日本製のミネラルウォーターは、ほとんどが軟水なので、猫に与えても大丈夫です。ただし、原水の取水地によっては硬水の部類に入る商品もあるので、猫に与える場合は必ず成分表示を確かめて、軟水を選びましょう。
もちろん、硬水を少し飲んでしまったというくらいでは、すぐに体調を壊す心配はありませんが、水は猫が生きるために必要不可欠なものなので、毎日硬水を与え続けるということは避けてください。
もちろん、硬水を少し飲んでしまったというくらいでは、すぐに体調を壊す心配はありませんが、水は猫が生きるために必要不可欠なものなので、毎日硬水を与え続けるということは避けてください。
猫に「水道水」を与えても大丈夫?
猫に水道水を与えるのは、まったく問題ありません、日本の水道水は、おいしさの面から硬度の目標値が10~100mg/Lに設定されていますが、東京都では平均60mg/L程度というデータがあります。地域によって取水するもとが異なるので、硬度の違いはありますが、厚生労働省の水質基準ではpH値を5.8以上.6以下と定めているので、日本の水道水は硬度を適度に含んだ軟水であるといえます。
つまり、水道水は塩素消毒がなされ、猫にとって安心な軟水。水飲みの容器に半日程度入れたままにしてあっても、水質が悪くなる心配が少ないので、安心して与えられます。
つまり、水道水は塩素消毒がなされ、猫にとって安心な軟水。水飲みの容器に半日程度入れたままにしてあっても、水質が悪くなる心配が少ないので、安心して与えられます。
猫に軟水のミネラルウォーターを与えるときの注意ポイント
軟水であっても、ミネラルウォーターを猫に与える際には、以下のような注意が必要です。
水を放置しない
水道水と違い、塩素による消毒はされていないので、長時間放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。とくに、一度口を付けた水や容器には菌が繁殖しやすいので、放置しないよう水の管理には注意を払いましょう。
常温で与える
ミネラルウォーターを冷蔵庫に常備しているお宅も多いかもしれませんが、猫によっては冷えた水を飲むことでお腹を壊す場合があります。猫が好むのは、平均的な猫の体温である38℃くらいといわれていますが、温度管理をするのは難しいので、常温の水を与えればよいでしょう。
猫にミネラルウォーターを与えるなら軟水を選ぼう
猫が飲む水としては、水道水でまったく問題はありませんが、ミネラルウォーターの場合は軟水が最適です。硬水のミネラルウォーターはミネラルを補給できるものの、胃腸への負担が重く、長期間飲み続けるとミネラルの過剰摂取で結石や腎臓病の原因になる可能性もあります。市販のペット用のミネラルウォーターは猫が飲んでもよい軟水なので安心。人間用のミネラルウォーターを与える場合は、成分表示をしっかりチェックし、硬度の低い軟水を選びましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
CATEGORY 猫と暮らす
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