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【獣医師監修】猫にネギは絶対にNG。食べてしまったときの症状と対処方法

ネギは猫にとって危険な食べ物です。わずかな量でも口にすれば「ネギ中毒」を発症し、最悪の場合は死に至ることもあるので、猫にネギを与えてはいけません。猫がネギを食べたり舐めたりしてしまったときの症状と対処法を紹介するとともに、ネギが猫にとってなぜ危険なのか、理由を解説します。

佐野 忠士 先生

猫はネギを食べてはいけない。命の危険あり

刻んだタマネギます。
amnachphoto/gettyimages
ネギは猫が絶対に口にしてはいけない危険な食べ物のひとつです。
猫はネギを食べると「ネギ中毒」を起こし、下痢や嘔吐などさまざま症状が見られます。最悪の場合には命を落とす事態になりかねません。匂いや辛味成分が強いネギを、猫が自ら好んで食べることはまずありませんが、ネギが入っている料理を猫が誤食する可能性はあるかもしれません。

チャーハン、スープや味噌汁、すき焼き、ネギ入り卵焼きなど、人間の食卓にはネギを使った料理がたくさんあります。飼い主さんがそれらを与えなくても、目を離した隙に愛猫が食べたり舐めたりするケースがありえます。

なお、ネギの致死量は、個体差があるため一概に提示することはできません。ほんの少し食べたり、舐めたりしただけでも中毒症状をきたす場合があるので、微量でも猫にネギは与えないでください。

猫がネギを食べたときに見られる症状|食欲不振、嘔吐、下痢、血尿、発熱、黄疸、呼吸困難など

MIXサバトラのまるしぇくん
ねこのきもち投稿写真ギャラリー

ネギ中毒が考えられる症状

猫がネギを食べて「ネギ中毒」になると、以下のような症状が見られます。すべての症状が現れる可能性があることを覚えておきましょう。

  • 元気がなくなる

  • 吐き気(よだれを垂らす)、下痢、嘔吐する

  • 食欲がなくなる

  • 血尿が出る(尿に血が混じる、茶色く濃くなる)

  • 発熱する

  • ふらついて歩けなくなる

  • 歯茎や目の結膜が白くなる(貧血)

  • 黄疸が出る(白目、歯茎、皮膚など)

  • 脈が弱くなる

  • 呼吸や脈が速くなる

  • 呼吸困難になる

  • 血便が出る

  • 吐血する

  • 意識がなくなる(ショック症状)


なかでも血尿と貧血は「ネギ中毒」で現れる代表的な症状です。愛猫がネギを誤食した可能性があり、ピンク色の尿(血尿)が出たり、ふらつき始めたりしたら、すぐに動物病院を受診してください。

症状が出るまでの時間

症状の出方は、猫の個体差や食べた量などにより異なります。
猫がネギを食べてから中毒症状が現れるまでの時間は、早ければ30~60分ほどで症状が現れますが、なかには食べてから1~3日たって症状が出るケースもあります。

猫がネギを食べてしまった場合の対処方法

ブリティッシュショートヘアのうに。くん
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
万が一、愛猫がネギを食べてしまったら、量の多少や症状の有無にかかわらず、速やかに動物病院に連れて行ってください。
受診前の注意点や受診時に用意しておきたいもの、病院での治療方法について紹介します。

すぐに病院へ。自己流で吐かせるのは危険!

猫がネギを飲み込む前であれば、口から吐き出させることが可能かもしれません。
しかしながら、ネギに限らず、誤飲してしまったものを飼い主が吐き出させるのは、とても危険な行為です。

WEBなどで、オキシドールや塩水を使って吐かせる方法を目にするかもしれませんが、絶対にやってはいけません。
万が一、猫がオキシドールを誤飲してしまうと、肺炎など命にかかわる重篤な状態に陥る危険があります。さらに、オキシドールが胃の粘膜を荒らし、激しい炎症を起こすことも。現在は、オキシドールを使った催吐処置は動物病院においても推奨されていないのです。

また、猫が嘔吐するほど濃い濃度の塩水を飲ませて吐かせる方法は、とくに腎臓に障害をもたらすことがあります。いずれにしても「催吐処置」は医療行為なので、飼い主さん自身が飲み込んだものを吐き出させることは、絶対にしないでください。

とくに猫がネギを多量に食べてしまった場合や、すでに何らかの症状が認められるときは、時間がたって悪化しないうちに病院へ。「ネギ中毒」の自然治癒はありえないので、速やかに獣医師の診察を受けてください。

なお、病院に連れて行く際には、以下をメモにしたためて獣医師に見せると、診察・治療がスムーズに進むでしょう。

  • いつ食べたか

  • 何をどのくらい何を食べた(と思われる)のか

  • 食べたあとに運動をしたか

  • 食べたあとに水を(どれくらい)飲んだか

  • どんな症状が見られたか

病院での治療方法

猫が「ネギ中毒」になった場合、有毒な成分を解毒する薬や効果的な治療法はありません。病院での治療は、中毒によって生じた症状を改善、解消する対症療法が中心となります。

中毒によって生じた症状の原因物質を取り除く

猫がネギを誤食してからあまり時間がたっていない場合は、催吐処置によって食べたものを吐き出させます。
食後約2〜4時間以内で緊急性が高いと判断した場合は、胃洗浄を行います。場合によっては、活性炭などの吸着剤や下剤を使って毒物の除去を図ります。

赤血球やヘモグロビンの酸化を抑える

明らかな中毒症状が見られる場合は、抗酸化剤やステロイド剤を投与して赤血球の破壊を食い止めます。

症状に応じた対症療法を行う

重度の貧血が見られる場合は、輸血を行うこともあります。また、腎臓障害やその他の症状に対して、点滴やビタミン剤の投与を行い、体力の回復を図ります。

猫がネギを食べてはいけない理由|貧血や急性腎不全の原因になる「ネギ中毒」の可能性あり!

グリーンのチェック柄のリボンを首につけ、床に座って上を仰ぎ見ているマンチカン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
人間はネギを食べても問題がないのに、なぜ猫はダメなのでしょうか。ネギに含まれる成分のうち、猫にとって危険なものを紹介します。

「有機チオ硫酸化合物」が中毒のおもな原因

ネギには「アリルプロピルジスルフィド」という成分が含まれていて、長らくこれが「ネギ中毒」の原因であると考えられていました。しかし、研究が進むにつれ、本当の原因は「有機チオ硫酸化合物」という物質であることがわかってきたのです。

赤血球の中にある「ヘモグロビン」という物質は、体の隅々に酸素を届ける役割を担っています。そうした重要な役割を担う物質を酸化して「メトヘモグロビン」という物質に変化させ、効力を失わせてしまうのがネギに含まれる「有機チオ硫酸化合」という物資です。「有機チオ硫酸化合」によって赤血球は壊れやすくなり、溶血性貧血や血尿、さらには急性腎不全を引き越すことに。重篤になれば、命を落とす事態を引き起こすこともあります。

辛味成分「硫化アリル」から転じた「アリシン」は貧血や胃の不調の原因

ネギを刻むと目に染みるような強い匂いがありますね。それが、辛味成分の「硫化アリル」という物質です。硫化アリルは、空気に触れることで「アリシン」という物資に変化し、さらに猫の体内で「二流化アリル(ジアリルジスルフィド)」という物質に変化します。

猫はこの二流化アリルを消化できないため、二流化アリルによって赤血球が破壊されてしまい、貧血を起こすことがあります。また、アリシンの強い殺菌作用が猫の胃壁を傷めたり、腸内細菌を死滅させてしまうケースもあります。

部位別のリスク

ネギは部位や種類に関係なく、青いところも白いところも、すべて猫に害を及ぼすリスクがあります。

状態別のリスク

ネギに含まれる有機チオ硫酸化合物やアリシンは、熱に強く、加熱しても消失しません。茹でる、炒める、揚げるなどの加熱調理をしても、猫にとって有害な成分は残っています。

危険な量の目安

どれくらいネギを食べたら危険なのか、明確な数値があるわけではありませんが、一般的には玉ねぎを食べた場合と同じと考えられています。玉ねぎの場合は、体重1kgあたり玉ねぎ約5gを食べると血液の性状に異常をきたすとされていて、体重の0.5%にあたる量の玉ねぎを食べると中毒を引き起こすという報告もあります。

とはいえ、年齢や体重、体質や体調などによって個体差があるため、ほんの少し誤食しただけでも命を脅かす事態に陥ることがあります。微量でもネギは絶対に与えないでください。

ネギ中毒を起こす危険な食材

段ボールの箱の中から顔だけ出しているロシアンブルーの子猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ネギ中毒の原因になる食材は、長ネギや青ネギ、万能ネギなど「ネギ」と名のついている野菜だけではありません。ネギ科の野菜は全般、それらを使ったさまざまな料理にも注意が必要です。危険な食材と料理のおもなものを紹介します。

  • ニラ

  • 玉ねぎ

  • ニンニク

  • らっきょう

  • すき焼きやしゃぶしゃぶなどの鍋物

  • 野菜ジュース

  • カレーなどのルウ

  • ネギを煮たスープや味噌汁

  • オニオンスープ

  • ケチャップやソースなどの調味料

  • ドレッシング

  • ハンバーグ

  • 赤ちゃん用のレトルトフード など


ほかにも、惣菜パン類や丼ものなど、ネギ類を使った食べ物はたくさんあります。ネギやネギ科の植物の臭みは猫が好むものではありませんが、肉や魚と一緒に調理されているネギを誤飲してしまう可能性はあります。目を離した隙に猫が誤食しないよう、料理の置き場所やゴミの管理にはくれぐれも気をつけましょう。

猫のネギ誤飲を防ぐ方法

前足を出して腹這いになり体をもたげて、まっすぐ前を見ているサイベリアン
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
愛猫をネギ中毒から守るためには、飼い主さんが食べ物の管理をきちんと行うことが大切です。愛猫の命を守るために、以下のことを心がけましょう。

ネギの調理中は猫をキッチンに入れない

料理をしているときは、猫がキッチンに入れないよう、柵をするなどの対策を。料理中に床に落ちたネギを放置せずにすぐに片づけることも猫の誤食を防ぐうえで大切です。

ネギを触った手で猫に触れない

猫はネギのエキスを舐めるだけでも危険です。ネギを触った飼い主さんの手や、飼い主さんが触れた体を舐めることで、ネギの有毒物質が猫の体内に入ってしまいます。ネギ類を触ったり調理したりしたあとは、きれいに洗ってから愛猫を触るようにしてください。

猫にネギはNG! ネギの仲間の野菜はすべて中毒の危険性あり

長ネギや青ネギ、玉ねぎなど「ネギ」と名がつくものはもちろん、あさつき、わけぎ、ニラ、ニンニク、らっきょうなど、ネギの仲間の野菜は、すべて猫の命を脅かす危険な食べ物です。少し舐めるだけでも危険なので、愛猫が舐めたり誤食したりしないよう、くれぐれも注意してください。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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