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【獣医師監修】猫にとうもろこしを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

とうもろこしは、基本的には猫に与えても大丈夫です。ビタミンやミネラル、食物繊維など猫の体に役立つ栄養が豊富で、中毒を起こすような有害物質は含まれていません。ただし、葉やヒゲの部分やアレルギーには注意が必要です。猫の健康に役立つとうもろこしの栄養と、与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

猫にとうもろこしを与えるときはカロリーオーバーやアレルギーに要注意。葉・ヒゲ・芯はNG

天然熟した若い黄色のトウモロコシと甘いトウモロコシを食べる灰色の家畜猫。
Ruslana Chub/gettyimages
猫は元来、肉食動物なので穀類の消化が得意ではありませんが、とうもろこしには、猫が中毒を起こしたりする有害な物質は含まれていないため、市販されているキャットフードには、とうもろこしやとうもろこし粉、コーングルテンがよく使われています。

とうもろこしには猫の体を健康に保つのに役立つ栄養素が豊富に含まれています。とくに、体内の代謝をスムーズに行うために必要なビタミンや、体液のバランスを保ったり、神経や筋肉を正常に働かせたりするのに役立つミネラルが豊富。さらに、肥満気味の猫や便秘しがちな猫には、とうもろこしに豊富に含まれる食物繊維が役立つと考えられます。

ただし、高カロリーなので過剰摂取するとカロリーオーバーになる可能性があります。また、もともと穀類アレルギーやでんぷんアレルギーがある猫にとうもろこしを与えてしまうと、深刻な下痢や皮膚トラブルを引き起こす可能性も。さらに、消化の悪い葉っぱやヒゲ、誤飲しやすい芯などにも注意が必要です。

愛猫の健康を守るために、猫にとってのとうもろこしのメリットとデメリットをよく理解しておくことが大切です。

とうもろこしのおもな栄養素|食物繊維や糖質が豊富でハイカロリー

トウモロコシ柄の黄色の帽子をかぶった可愛い猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
とうもろこしに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー89kal
水分77.1g
タンパク質3.6g
脂質1.7g
炭水化物16.8g
灰分(無機質)0.8g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

猫がとうもろこしを食べるメリット|エネルギー生成、高血圧の予防、便秘の解消など

吊るされているふかふかベッドで気持ちよさそうに寝ているアメリカンショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
とうもろこしに含まれる栄養成分のなかから、猫の体によい影響を与えるものとその働きを紹介します。

ビタミンB群|体内の代謝をサポートし、エネルギーを作り出す

とうもろこしには、ビタミンB1、B6、ナイアシン、葉酸といったビタミンB群が豊富に含まれています。
これらは、炭水化物・タンパク質・糖の代謝をサポートすることにより、生命活動に必要なエネルギーを生成する働きがあります。
さらに、ビタミンB1には、脳や心臓、肝臓、腎臓など大切な臓器の正常な働きを維持する働き、葉酸には、タンパク質や細胞の分裂、DNAの形成に重要な役割を担って胎児の発育に役立ちます。

カリウム|塩分の排出、高血圧の予防

カリウムは細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整する役割を果たすミネラルの一種です。体内の余分な塩分を尿と一緒に排出し、血圧を下げる作用もあります。

食物繊維|腸内環境を整え、便秘を解消

食物繊維には、血糖値の急上昇を抑える働きやコレステロールを体外に出す作用がある「水溶性食物繊維」と、便のかさを増して排便を促したり、腸内の毒素やコレステロールを体外に排出したりする「不溶性食物繊維」の2種類があります。

とうもろこしには、その両方が含まれていますが、不溶性食物繊維のほうが多く、水溶性食物繊維の10倍以上含まれています。そのため、便秘気味の猫には、不溶性食物繊維の働きによる排便促進が期待されます。

猫がとうもろこしを食べるデメリット|肥満、糖尿病、腎臓病、アレルギーに注意

大きなあくびをしている三毛猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
とうもろこしには、中毒の原因となる有害物質は含まれていませんが、猫の体によい成分でも、与える量や猫の体調や体質によっては体調を崩す心配もあります。猫がとうもろこしを食べる際にデメリットとして覚えておきたいことを紹介します。

高カロリー|過剰摂取で肥満や糖尿病リスク

とうもろこしは糖質が多く、比較的カロリーが高い食べ物です。エネルギー源となる一方で、摂取する量が多いとカロリーオーバーになりがちです。高カロリーの食べ物を過剰摂取すると、肥満につながりやすく、肥満は糖尿病などさまざまな病気の原因になるので、猫が欲しがるままに与えるのはよくありません。
あくまでも主食(総合栄養食)の摂取を阻害しないように、おやつとしての適量を守りましょう。

食物繊維|不溶性食物繊維の過剰摂取で排便困難に

とうもろこしに多く含まれる不溶性食物繊維は、便秘の解消に役立つものですが、摂り過ぎると水を吸って膨らんだ便が大きくなり過ぎ、かえって排便が困難になる可能性があります。とくに、とうもろこしの実の皮に含まれている繊維「セルロース」はとても消化しにくいので、整腸作用と便秘の解消を期待するなら、与え過ぎないように注意しましょう。

カリウム|腎臓機能不全の猫は「高カリウム血症」に要注意

通常は、体内で不要になったカリウムは、腎臓で分解され尿として体外に排出されるのですが、多量なカリウムの処理は腎臓に大きな負担をかけることになり、腎臓病を誘発する原因になります。健康な猫であっても、過剰なカリウム摂取は気をつけたいもの。ましてや、加齢で腎臓機能が低下している猫や腎臓病を患っている猫の場合は、カリウムの排出が上手にできない可能性があるので、とくに摂取量には注意しなければなりません。

カリウムが尿として排出されず血液中に残ってしまうと、血中カリウム濃度が上がる「高カリウム血症」を引き起こす恐れがあります。高カリウム血症になると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたし、重篤な場合は命を落とす場合もあります。

なお、カリウムなどの電解質への影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。

食物アレルギー|タンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象です。とうもろこしに含まれるタンパク質は、可食部100g中に8gと野菜のなかでも多いほうなので、アレルギーを起こしやすい食材のひとつといえます。
もともと穀類アレルギーのある猫やでんぷんアレルギーがある猫には、とうもろこしを与えてはいけません。

それ以外にも過去にアレルギー(様)反応を示したことのある猫や、ワクチン接種の後に強い反応や、他の薬物接種の際に薬疹を示したことのある場合には注意が必要です。

愛犬に初めてとうもろこしを与えるときは、まず少量から。食べたあとに皮膚の痒みや湿疹、目の充血、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が起こらないことを確認してから、次を与えるようにしてください。もし、何らかの症状が見られたら、とうもろこしを与えるのは止め、かかりつけの獣医師の診察を受けてください。

猫にとうもろこしを与えるときの注意ポイント|加熱してから粒を刻むかペースト状に

トウモロコシ柄の帽子をかぶって不機嫌そうな顔が丸いエキゾチックショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫にとうもろこしを与える前に、部位や適量、調理法をチェックしましょう。

与えてよい部位

猫に与えてよいのは、とうもろこしの実の部分だけです。
外側の葉やヒゲは猫にとって消化しにくいものなので、与えないでください。もし、葉やヒゲを食べてしまった場合は、体調に変化はないかよく観察し、少しでも異常を感じたら動物病院で診察を受けましょう。

また、とうもろこしの芯は猫にとってメリットのある栄養がないだけでなく、噛み砕いて飲み込んでしまうと、気道に詰まって呼吸困難に陥ることも。もし気道を通過して胃まで到達したとしても、うまく消化できずに消化不良を起こし、嘔吐したり、最悪の場合は腸閉塞を引き起こしたりする可能性もあります。そうなると猫が自力で排出するのは困難になり、全身に麻酔をかけて開腹手術をして取り出さなければなるので、猫のおもちゃとして安易に芯を与えるようなことはしないでください。

万が一、愛猫がとうもろこしの芯を食べてしまったら、早めに動物病院へ。症状がすぐに出るとは限らないので、注意が必要です。

与えるときの適量

猫にとうもろこしを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、猫の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
猫の体重目安1日あたりの摂取可能目安
4~5kg27g~32g(1/7本~1/5本)

※数値は、避妊・去勢済みの猫で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理のしかた

最近は生で食べられる品種があるようですが、猫には必ず加熱してから与えます。
とうもろこしの実は生のままでは表皮が固く、猫の消化器官に負担を与えます。与える際には、必ず茹でる、蒸す、電子レンジで加熱するなどして、芯から実を外して与えます。実の皮はとても消化しにくいので、薄皮ごと細かく刻んでキャットフードの上に載せるか、粒を薄皮と一緒にすり潰してペースト上にしてからあげると安心でしょう。
なお、猫には味付けは不要です。茹でるときも、塩は加えないでください。

加工食品は原材料を確認、人用の食品は与えない

とうもろこしを原材料にした食べ物には、ポップコーンやスコーン、クッキー、スープ、パンなどさまざまあります。いずれも人用に作られた食品は、塩分や糖分、脂分が多く、猫の体にはよくありません。人用に加工された食品は与えないでください。

ちなみに、ポップコーンは添加物を一切含まない犬猫用ポップコーンが市販されているので、おやつに与えたい場合はそうしたものを選ぶとよいでしょう。

猫が食べやすいトウモロコシを使ったおすすめレシピ

黄色い袋にすっぽり入って座り、こちらを見ているMIX(サバトラ)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
刻んだりペースト状にしたりした猫が食べやすいとうもろこしは、フードにトッピングする以外にもさまざまな料理に活用できます。その一例を紹介します。


  1. 水を入れた鍋に昆布を入れ、一晩置いておく。

  2. 芯から外したとうもろこしの粒を電子レンジで温める。

  3. 2の粒を薄皮ごとみじん切りにする。

  4. 3の刻んだ粒を1の鍋に入れて火にかける。

  5. 沸騰したら昆布を取り出し、かつお節を少し加えたらできあがり。


水分をあまり飲みたがらない猫の水分補給にも役立つレシピです。十分に冷ましてから与えましょう。

なお、人用にはとうもろこしご飯もありますが、とうもろこしもご飯も炭水化物なので、栄養が偏る可能性があり、猫に与えるのはおすすめできません。とうもろこしを調理するなら、猫にとって栄養バランスが取れていることを大事にしましょう。

猫の体に役立つ栄養が豊富なとうもろこし。過剰摂取とアレルギーに気をつけて

とうもろこしには、猫のすこやかな成長をサポートし、健康を維持するのに役立つ栄養素が豊富に含まれています。しかしながら、その一方で与える量を間違えれば、愛猫の健康を脅かす原因にも。腎臓病、糖尿病などの持病がある猫やアレルギー体質の猫に与えるのも要注意です。体調や体質に心配がある場合は、とうもろこしを与える前にかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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