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猫が「慢性腎臓病」になると便秘しやすい?|獣医師が解説します
猫がかかりやすい病気のことは、飼い主さんならよく知っておきたいもの。
この記事ではそんな病気の解説のほか、実際に体験した飼い主さんの疑問について、獣医師の重本先生が回答します。
今回は「慢性腎臓病」なった猫のお世話や検査に関する疑問を取り上げます。

重本 仁先生王子ペットクリニック院長(東京都北区)
腎臓の働きが悪くなり、老廃物を体外に出せなくなる病気
腎臓は、ネフロンと呼ばれる構造の集合体です。ネフロンが壊れると腎臓の働きが低下し、血液中の老廃物を体外に出せなくなります。これが慢性腎臓病です。壊れたネフロンは再生しないため、病気は徐々に進行していきます。
もともと飲水量が少ない猫は体外への水分の喪失を減らすために、代謝の過程で生じる老廃物を濃縮した尿として排泄するため、腎臓に負担をかけやすいのです。そのため個体差はありますが、8才頃から腎臓の機能が衰え始め、慢性腎臓病にかかる猫が増える傾向に。また、これまでに尿石症にかかった経験のある猫は、よりリスクが高くなるとされています。
この病気は早期に発見して、進行を遅らせることが大切です。定期的に健康診断を受けて、下記の症状が見られたら早めに受診を。
慢性腎臓病の初期症状
・オシッコの量や回数が増える
・ふだんの1.5倍以上、水を飲む
・食欲が落ちてやせる

飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」①
宮崎県 S・Mさん Mちゃん(メス・11才)
※慢性腎臓病と診断されたのも11才
飲水量を増やす工夫をし、輸液の量や回数を獣医師に相談して
慢性腎臓病の猫は、オシッコの量が多いため脱水しやすく、便の水分量も少なくなるので便秘になりがちです。また、病気が進行するとやせて筋肉量が落ち、充分にふんばれずに便秘になる猫も。
便秘を予防するには、水分をしっかり摂取できる環境づくりが大切です。水に風味付けすると嫌がる猫なら、新鮮な水道水を用意しましょう。寝床の近くや、通りすがりにも水が飲めるよう、多くの水飲み容器を置いてください。なお、脱水症状を起こしていたら、皮下輸液による水分補給が効果的。かかりつけの獣医師に相談のうえ、1回の量や、回数を見直してもらうと安心です。

皮下輸液は脱水症状の改善と尿毒症を防ぐのに効果的な治療法。皮膚の下の隙間に針を刺して、体内に100~300㎖ほどの水分を注入
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」②
福島県 M・Oさん Gくん(オス・6才/スコティッシュフォールド)
※慢性腎臓病と診断されたのは2才当時
残念ながら慢性腎臓病が完治することはありません
慢性腎臓病は血液検査やその他の検査をしたうえで、「IRIS」という基準でステージ分けします(下図参照)。ここで指標となるSDMAは、早期の腎疾患の発見を可能にする腎機能マーカーのこと。病気を診断するうえで重要ですが、この数値のみで確定するのではなく、腎臓の画像、尿比重、血圧などと組み合わせて総合的に判断します。一度壊れた腎臓の組織は再生しないため、慢性腎臓病が完治することはありません。今後も腎臓の状態を確認するため、定期的に検査を受けましょう。
IRISによる慢性腎臓病のステージ分け

Cre(クレアチニン)は腎臓から排泄される代謝産物で、腎機能が激しく低下すると上昇します※2019年度にSDMAの基準値が変更になりました。
先生、ご回答いただきありがとうございました。
ご紹介した飼い主さんのエピソードは、あなたの愛猫に起こる可能性もあります。
いざというときに思い出し、役立ててくださいね。
監修
重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/2020年10月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』
文/SAY
イラスト/みやしたゆみ
※この記事で使用している画像は2020年10月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
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