猫のしっぽは感情表現をはじめ、さまざまな役割をもつツールです。この記事では、しっぽの状態や動きから猫の気持ちを読み取る方法を写真付きで解説。さらに、猫のしっぽの種類やそのほかの役割、気になるしっぽの異常や病気についてもご紹介します。
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今どんな気持ち?しっぽの状態・動きと猫の感情を写真で解説
猫はしっぽの角度や形、動きでさまざまな感情を表現しています。ここでは、しっぽの状態と仕草がわかる写真を使って、猫の気持ちを読み取るポイントをご紹介します。
ピンと立てる:上機嫌
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
しっぽが上にピンと伸びているのは、機嫌がよいサイン。気分が高揚してしっぽの先まで力が入り、上向きに立ちます。
最高にうれしいときは先端だけ震えることも
最高潮にうれしい気分のときは、さらにしっぽに力が入り、先端をプルプルと小さく震わせることがあります。
水平/やや下に伸びる:平常心
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
平常心のときはしっぽに力が入っていないため、猫が立っている姿勢であれば水平かやや下方に伸びた状態に。座っている場合は、床に伸びた状態になります。
ゆっくり左右に振る:リラックス
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
猫がリラックスした気分のときは、穏やかな気持ちを表すようにしっぽをユラユラと左右に揺らします。しっぽに力は入っていないため、くねらせながら揺らす場合もあります。
先だけパタパタ振る:興味・迷い・返事代わり
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
しっぽの先だけをパタパタと振るのは、何かに興味をもっているときや、気になりながらも行くかどうか迷っているときに見られます。また、名前を呼ばれたとき返事代わりに振ることもあります。
力強くブンブン振る・叩き付ける:不満
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
猫がしっぽを力強くブンブン振って床に叩き付けているときは、不満やイライラの表れです。苛立ちがつのるほど、音を出して叩き付け、テンポも速くなります。また、ゴハンのときなどに「早く~!」とアピールする場合にも見られることがあります。
体に巻き込む・体に沿わせる:恐怖・緊張
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
猫は恐怖や緊張を感じると、しっぽを体に巻いたり沿わせたりします。この行動は、肛門まわりにしっぽでふたをしてニオイを消し、敵から身を守る役割もあるといわれています。
根元が上がり、先が垂れる:怒り・攻撃
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
しっぽの根元が上がり、先が垂れた“弓なり”の形になっているときは、「怒ったぞ!攻撃するぞ!」というアピール。猫同士で優位なほうが力を誇示する際に見せることが多いです。
しっぽの毛が膨らむ:驚き・抵抗
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
驚いて緊張が高まったときは全身に力が入り、しっぽの毛が大きく膨らみます。また、猫同士の場合はしっぽを膨らませ、体を大きく見せることで「怖いけど負けないぞ!」という意思表示にもなります。
シチュエーションによっては違う気持ちを意味することも
これまでご紹介したしっぽの動きも、シチュエーションによっては違う気持ちを意味する場合もあります。耳などのほかのパーツや周囲の状況などもあわせて総合的に見ることで、より正確に猫の気持ちを知ることができます。
感情表現だけじゃない、猫のしっぽのさまざまな役割
しっぽは猫の気持ちを表す大切なコミュニケーションツールですが、それ以外にもさまざまな役割をもっています。
バランスをとる
しっぽにはバランサーとしての機能もあります。猫が狭いところを歩いているとき、よく見てみるとしっぽを左右に動かしているのがわかります。これは人が平均台を渡るとき無意識に腕を広げるのと同じで、無意識のうちにしっぽを動かしながらバランスをとっているのです。
保温する
寒い時期には、自分のしっぽに顔をうずめて眠る猫の姿を見ることがあります。これは、自分が吐いた息の熱を逃がさないようにするため。まるでマフラーのように、しっぽが保温の役目を果たしています。
長さ・カタチは猫それぞれ、個性豊かなしっぽの種類
そもそも、猫のしっぽはどうなっているの?
猫のしっぽは18~20個の椎骨が連なった尾椎を中心に、そのまわりを12の筋肉が花びらのように取り囲んだ構造をしています。この筋肉のおかげで、猫の繊細なしっぽの動きが生まれているのです。また、しっぽには先端まで神経が通っているので、とても敏感です。
短いしっぽ
一般的に猫のしっぽといえばスラリと長いイメージがありますが、中には遺伝的に尾椎の数が少なかったり、癒合したりすることで、短いしっぽをもつ猫もいます。ミックスの猫によく見られますが、「ジャパニーズボブテイル」のように短いしっぽが特徴の猫種や、「マンクス」のような尾がない猫種も存在します。
これらの猫種については、下記の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
短いしっぽの猫は日本に多い!?
短いしっぽの猫は日本に多く存在するといわれています。その理由のひとつに、「長い尾をもつ猫は“猫股”という妖怪になる」という迷信があり、長い尾よりも短い尾の猫が日本人に好まれたからという説があるようです。
かぎしっぽ
しっぽの先がカギのように折れたり曲がったりしている“かぎしっぽ”は、「半椎骨」というクサビのような特殊な骨により、しっぽが曲がることで形成されます。かぎしっぽも短いしっぽと同様に、遺伝的な要因によって生まれます。
かぎしっぽの猫は長崎県に多い!?
長崎県には、かぎしっぽをはじめとした“尾曲がり猫”が多いといわれています。これには、江戸時代に長崎の出島で海外との交易が行われていた際、外国からの船にネズミ捕り要員として乗ってきた猫がかぎしっぽの遺伝子をもっており、そのまま長崎に居着いたからという説が唱えられています。
気を付けたいしっぽの異常・病気
しっぽのケガで神経を傷つける場合も
猫のしっぽには先端まで神経が通っており、後ろ足や肛門、膀胱などの神経とも連結しています。そのため、事故などでしっぽをケガした際に神経が傷ついてしまうと、後ろ足や排せつ機能にも影響が出る場合が。猫のしっぽは非常にデリケートな部位ですので、くれぐれも注意してください。
スタッドテイル
尾の付け根周辺にある脂を分泌する腺(尾腺)が炎症を起こす病気で、しっぽの付け根がベタベタと固まるなどの症状が見られます。詳しい症状や治療方法は下記の記事で紹介していますので、ぜひご確認ください。
猫が自分のしっぽをかじるのは、ストレスが原因の可能性も
猫が自分のしっぽを執拗にかじる場合は、皮膚のトラブルやストレスによる心理的な疾患を抱えている可能性があります。一時的な行動であれば問題ありませんが、頻繁に自分のしっぽをかじるようであれば、獣医さんに相談することをおすすめします。
しっぽは猫にとって、とても重要なパーツです。しっぽの機能や役割を知って、大切にしてくださいね。
参考・写真/「ねこのきもち」2018年9月号『キホンからカンチガイしやすいものまで パーツでわかるねこのきもち』
参考/「ねこのきもち」2018年7月号『いつまでも眺めていたいな癒しっぽ』
「ねこのきもち」2016年9月号『読者の猫の身体的特徴を分析!マイニャー猫白書』
監修/ねこのきもち相談室獣医師
文/terasato
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。