猫がかかりやすい病気の事は、飼い主さんならよく知っておきたいもの。この記事ではそんな病気の解説のほか、実際に体験した飼い主さんの「気になりながら聞けずにいた疑問」について重本先生が回答!
今回は「肛門嚢炎」の予防法や気を付けるべきことは?といった疑問を取り上げます。
お話をお伺いした先生
重本 仁先生王子ペットクリニック院長(東京都北区)
「肛門腺」という分泌物をためる袋が炎症を起こした状態です
猫の肛門をよく観察すると左右に小さな穴があります。その奥には、強いニオイの分泌物がたまる袋が2カ所あり、肛門腺(肛門嚢)と呼ばれています。肛門腺は猫の体内にあるため、体の外からは肛門腺の開口部だけが見え、猫によっては肉眼では見えにくい場合も。
通常、分泌物は排便や興奮したときなどに自然と出ますが、何らかの原因で詰まったり、細菌感染が起こったりして炎症を起こすケースがあります。その状態が「肛門嚢炎」で、動物病院での治療が必要に。また、悪化すると肛門腺が破裂して、お尻の皮膚に穴があく恐れがあるので放置は禁物です。
分泌物がたまって違和感があると、猫はお尻を気にするそぶりを見せるもの。肛門をしきりになめているなどの症状が見られたら、動物病院で受診しましょう。
おもな初期症状
◦お尻まわりを集中的に、頻繁になめる
◦ お尻を床などにこすり付け、その体勢でズリズリ歩く(お尻歩き)
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」①
ミドリが"お尻歩き"をしていたので受診すると、肛門腺が詰まっていました。獣医さんに肛門腺を絞ってもらい、治療費は3000円。再発が気になりますが、またお尻歩きをしたら肛門腺が詰まっているということですか?
東京都 Y・Oさん
ミドリくん(オス・7才)
※肛門嚢炎で受診したのは5才当時。
猫のお尻歩きには、肛門腺詰まり以外の病気も考えられます
肛門腺が詰まったままにしておくと、肛門嚢炎が悪化する恐れがあるので、ミドリくんのように肛門腺を絞る必要があります。やり方は、人の指で肛門をつまむように押し上げて、左右の肛門腺の開口部から分泌物を出します。基本的に、左右どちらからも分泌物は出るでしょう。
猫のお尻歩きは、肛門腺が関係している場合が多いですが、そのほかに皮膚炎や寄生虫が原因のこともあります。いずれにしても健康な猫には見られない動作なので、自己判断で肛門絞りをする前に獣医師に相談しましょう。
飼い主さんからの疑問「そこが知りたい」②
排便のときに変な声で鳴き、見ると右側の肛門腺が破裂していました。獣医さんに「次は左側が破裂するかもしれないから、自宅で肛門絞りしてみて」と言われましたが、自分たちでは無理そう…。お尻を洗うなど自宅でケアできることはありませんか?
東京都 M・Kさん
ラムちゃん(メス・10才/オシキャット)
※肛門嚢炎で受診したのは8才当時。
肛門まわりをシャワーで洗い流すなどして清潔に保つと、予防につながります
左右どちらかの肛門腺が破裂した場合、もう片方もそうなる可能性は充分にあります。しかし、まずは消毒するなどして、患部をしっかり治療することが先決です。痛みが残ったまま、もう片方の肛門腺を絞ることは絶対にしないでください。猫は肛門まわりを触られるのを嫌いますから、不安があれば動物病院で絞ってもらいましょう。その際、正しい方法をレクチャーしてもらい、できそうであれば飼い主さんがやってみることも。
自宅では、肛門腺の開口部まわりを清潔に保つことを心がけて。まめにお尻をチェックして、汚れていたらシャワーで洗い流すなどするといいでしょう。
先生、ご回答いただきありがとうございました。ご紹介した飼い主さんのエピソードは、あなたの愛猫に起こる可能性もあります。いざというときに思い出し、役立ててくださいね。
お話を伺った先生/重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2022年1月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』
文/Monika
イラスト/はなさきロージー
※この記事で使用している画像は2022年1月号『ねこに多い病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。