人の手や食べ物、猫のお尻など、猫が何かをくんくん嗅ぐ姿をよく見かけますよね。気になるニオイでもするのかと疑問に思いますが、じつは猫ならではの嗅ぐ理由があるんです。今回は、猫がニオイを嗅ぐ理由について、哺乳動物学者の今泉忠明先生に伺いました。
猫はニオイを嗅ぐことでさまざまな情報を得る
猫は視角が人よりも劣り、嗅覚が人よりも数万~数十万倍優れています。そのため、野性時代は嗅覚を頼りにして周囲の状況を把握し、安全かどうかを判断して生きていました。そして、飼い猫になった今でも、その行動は習性として残っています。あらゆるもののニオイを嗅ぐことで、さまざまな情報を得ようとしているのです。
食べる前にフードのニオイを嗅ぐ理由
たいていの猫はフードを出されると、舌先を触れる前にニオイを嗅ぎます。それは、味覚よりも嗅覚の方が格段に発達しているからで、口に入れる前に、腐敗していないかなど安全確認をしているのです。そのため、慎重な性格の猫ほど、よくフードを嗅ぐ傾向にあります。
また、猫は吸い込む以外に、鼻先に吸着させることでニオイを認識します。その機能を備えるのが鼻先の「鼻鏡(びきょう)」。湿っていることで、一瞬で流れ去るニオイ分子もキャッチすることができます。
猫同士でニオイを嗅ぎ合う理由
猫同士が鼻先を近づけて、くんくんとニオイを嗅ぎ合っている姿を見たことはありませんか? 猫にとって、ニオイ交換は「名刺交換」のようなもの。ほかの猫とニオイを嗅ぎ合うことで情報交換をしています。
まずは鼻のニオイを嗅ぎ、穏やかに進めば肛門の左右にある肛門線から分泌されるニオイを嗅ぎ合います。とくに肛門には情報が盛りだくさんで、性別や血縁関係、発情しているかどうかまで知ることが可能といわれています。
ニオイを調べようと口を半開きにすることも
猫は本能的なニオイである「フェロモン」を感じると、前歯の裏にある「鋤鼻器(じょびき)」といわれる穴でニオイを調べようとして、口が半開きになります。この反応を「フレーメン反応」といいます。
新しいグッズのニオイを嗅いだあとスリスリする理由
猫ベッドなどグッズを新調すると、猫がニオイを嗅いでからスリスリすることがありますよね。これは、知らないニオイに「いつもと違うな」と警戒しているから。猫にとって、新しいものは“見知らぬ侵入者”と同じ。初めてのニオイを嗅いで調べたあとに、安心できる自分のニオイをつけているのでしょう。
顔まわりでスリスリしているなら、「フェイシャルフェロモン」という、猫が精神的に落ち着けるニオイをつけていると考えられます。
ニオイを嗅ぐことで、情報収集や情報交換、安全確認など、さまざまなことを行っている猫。猫にとってニオイはそれほど重要なものなので、何かのニオイを嗅ぎ始めたときはそのまま嗅がせてあげてくださいね。
お話を伺った先生/今泉忠明先生(哺乳動物学者 川崎市環境影響評価審議会委員 「ねこの博物館」館長 日本動物科学研究所所長)
参考/「ねこのきもち」2018年2月号『よくする行動の謎にせまる!猫を解き明かす5つのN』
文/宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。