猫の10才は、人の年齢に換算すると56~60才、いわゆる“アラ還”です。人はこの年齢になると体の不調が表面化しやすくなりますが、猫も同じように、徐々に肉体的な衰えが見え始めます。
そこで今回は、10才のシニア猫にあらわれやすい健康面の変化やお世話の工夫などについて、獣医師の椎木亜都子先生に伺いました。
10才のシニア猫に起こる「体の変化」
個体差はありますが、猫は7才くらいから内臓機能や身体機能が低下していきます。10才はそれらの不調が徐々に表面化してきて、愛猫の加齢を実感し始める年齢でしょう。具体的には、以下のような変化が起こります。
10才のシニア猫に起こる主な体の変化
- 代謝の低下
- 免疫力の低下
- 心肺機能の低下
- 脂肪の消化吸収率の低下
- 皮膚の弾力性の低下 など
これらに加え、さまざまな病気のリスクも高くなっていることも認識しておきましょう。
10才のシニア猫が気を付けたい「体の変化」に伴うリスク
先述のとおり、10才のシニア猫は、加齢に伴い病気にかかるリスクが高くなります。慢性腎不全、甲状腺機能亢進(こうしん)症、がんなどが主な例です。猫によっては初期症状があらわれることもありますが、健康診断で病気が見つかるケースも増えてくるでしょう。
肥満にも要注意
そのほか、代謝が低下しやすい10才のシニア猫は、肥満にも気を付けましょう。肥満の猫は、糖尿病や尿石症、肝リピドーシスなど、さまざまな病気のリスクが高くなります。
10才のシニア猫の「体の変化」に合った対応やお世話
さまざまなリスクが高まる10才のシニア猫には、以下のようなお世話の工夫を取り入れるとよいでしょう。
健康診断は年に2回
加齢に伴って発症しやすくなる病気は、健康診断で見つかりやすいものも少なくありません。病気のリスクが高い10才のシニア猫の場合、年に2回は定期的な検査を受けるようにすると、病気の早期発見・早期治療につながります。
異変を感じたら早めに受診を
愛猫の体調に異変を感じた際、若いうちだと「様子見でいいかな」と考えることもあるかもしれませんが、10才のシニア猫の場合は、なるべく早めに受診するのが安心。健康管理には十分気を配りましょう。
月に1回は体重をはかろう
高齢の猫は、代謝が落ちて太りやすくなります。また、やせていくのは病気のサインであることも多いため、月に1回は体重を計測し、大きな変動がないかを確認しましょう。
できるだけ寒暖差の少ない環境を作ろう
体温調節機能が低下しがちな10才のシニア猫にとって、気温の変化は不調や病気、持病の悪化などを引き金になりやすいもの。季節の変わり目など、1日の寒暖差が大きい時期は、防寒対策を徹底しましょう。
ウエットフードを積極的に与えてみて
ウエットフードを与えると飲水量を無理なく増やせるため、腎臓病や尿石症の予防につながります。また、ドライフードよりも満腹感を得やすいというメリットもあるため、積極的に与えてみるのもよい方法です。
加齢とともに体に変化が出てくるのは仕方のないこと。高齢になった愛猫が元気に暮らしていけるよう、適切なサポートを取り入れてあげたいですね。
お話を伺った先生/椎木亜都子先生(ペット問題行動クリニックBLISS 獣医師)
参考/「ねこのきもち」2024年3月号『まだまだ元気だけど、いろんな変化が見えてきます 10才猫ってこんなかんじ』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。