猫の「肝リピドーシス」という病気をご存じですか?これは絶食などが原因で肝臓に脂肪が蓄積する病気で、かかると肝臓の機能が低下するため適切な治療が必要です。そこで今回は、肝リピドーシスの原因や症状について獣医師の佐々木文彦先生、重本仁先生にお話を伺いました。
肝臓ってどんな臓器?
まずは、肝臓がどんな臓器かおさらいしましょう。肝臓のおもな働きは、胆汁の分泌、代謝、解毒、ブドウ糖の貯蔵、血液の貯蔵です。肝臓は、消化を助ける胆汁を腸内に分泌し、小腸で吸収された栄養素を取り込み各部位へ送っています。また、血管を通って肝臓へ運ばれてきた有害物質を無毒化するほか、ブドウ糖や血液の一部を貯蔵し、足りなくなると放出して全身のエネルギーや血液量を調節します。
猫の肝臓は6葉に分かれており、1つに問題が起きてもほかの肝葉が機能するようになっていますが、肝リピドーシスなどの病気にかかると、その機能が低下していきます。
猫の「肝リピドーシス」とは
「肝リピドーシス」の原因と症状
肝リピドーシス(脂肪肝)は、猫が何らかの原因で食欲不振、絶食状態になり、体内の脂肪が肝臓に蓄積することで起こります。これは、体内の不足エネルギーを補おうとするものの代謝が追い付かず、肝臓に送られた体脂肪が蓄積されてしまう状態です。肝リピドーシスの多くは、胆管肝炎、膵炎、胃腸炎、糖尿病、腎障害、腫瘍などを原因とする食欲不振や食欲低下に続発します。病気が進行すると、肝臓が腫れて体に黄疸があらわれる場合もあります。
「肝リピドーシス」の治療方法
肝リピドーシスの治療は、適切な栄養補給です。猫が食事をとらない場合は、鼻カテーテルや胃チューブを用いて栄養補給を行います。
飼い主さんに聞いた愛猫の「肝リピドーシス」体験談
ここでは、愛猫が実際に肝リピドーシスにかかったことのある飼い主さんの体験談をご紹介します。
白目や耳に黄疸が出て受診した日に即入院
「食欲がなく、呼吸が苦しそうに見えたので受診したところ、白目や耳が黄色くなっており、黄疸を指摘されました。血液検査の結果、肝リピドーシスと判明。自宅で強制的に食事を与え、うまくできないときは動物病院で対処してもらいました」(オス・10才/メインクーン)
肝臓は“沈黙の臓器”といわれています。病気の早期発見・治療につなげるために、愛猫に少しでも気になることがあれば、早めに動物病院を受診しましょう。
お話を伺った先生/佐々木文彦先生(大阪府立大学名誉教授 医学博士 獣医師)、重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2024年3月号『イラストで、部位ごとによ~くわかる 図解 猫のおなかの働き 病気のしくみ』
文/寺井さとこ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。