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猫の腎臓病とキャットフードについて|症状や対処法、療法食まで

猫の腎臓病、腎不全は、長い付き合いになる病気です。その病気の進行を遅らせるためにも、食事管理は欠かせません。今回は、猫の腎臓病を解説し「慢性腎臓病」の検査内容と治療法、そして必要な栄養素を紹介します。獣医師と相談して適切な療法食を選びましょう。

徳本 一義 先生

 獣医師
 有限会社ハーモニー代表取締役
 日本ペット栄養学会理事
 ペットフード協会新資格検定制度実行委員会委員長
 日本獣医生命科学大学非常勤講師
 帝京科学大学非常勤講師
 など

●資格:獣医師 経営学修士(MBA)

●所属:日本ペット栄養学会

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猫の腎臓病について

Getty
とくにシニア猫がかかりやすいといわれる「慢性腎臓病」は、進行を遅らせることが対策のため長い付き合いになる病気です。そのため、「慢性腎臓病」は不治の病と言われることも多い病気です。
腎臓は「ネフロン」という組織の集合体です。そのネフロンが何らかの理由で壊れると、腎臓の機能が低下して、血液にたまった老廃物を体外に出せなくなります。ネフロンは壊れてしまうと、再生しないため病気は徐々に進行してしまうのです。

こんな症状は「慢性腎臓病」かも
・水をよく飲むようになる
急にふだんの1.5倍以上、水を飲むようになったら「慢性腎臓病」を疑ってください。飲水量の変化には気づきにくいかもしれませんが、トイレの猫砂の固まりが増えたり大きくなったりすることで気づくこともあります。

・オシッコの量や回数が多くなり、尿の色が薄くなる
オシッコの量や回数が、ふだんの2倍以上になったら注意が必要です。腎臓機能が低下すると尿が凝縮できなくなるので、色は薄くなります。
・便秘になる
・食欲が落ちる
・ときどき嘔吐する
・痩せる
薄い尿をたくさんするようになるので、脱水気味になり便秘に陥る猫もいるでしょう。また、体内の毒素が排出しにくくなるため、食欲不振や嘔吐などの症状がみられるケースもあります。

猫が腎臓病になる原因は?
・年齢(高齢化)
 原因のメインは加齢によるものです。高齢期とされる7才以上になると、ほとんどの猫が腎臓の機能が衰え始め、徐々に「慢性腎臓病」になっていくと⾔えます。

年齢以外のケースも見てみましょう。
・尿道閉塞
 尿道栓子や結石などにより、猫の尿道が詰まった状態のこと。排尿が難しくなり、腎臓病や尿毒症を引き起こします。

・急性腎障害(毒物、薬物による中毒や交通事故)
 尿路の異常、毒物による中毒や交通事故による障害などさまざまな原因により、急激に腎臓の機能が低下していく病気です。毒素や老廃物が体中を巡るので、早急な処置ができないと命にかかわることも。回復した場合も、後遺症として慢性腎臓病になってしまうおそれが大きいとされています。
 また、毒性のあるものを口にしたことによる中毒症状として、腎臓病に陥ることも。腎毒性のある薬物の投与により、腎臓病を発症する場合もあるようです。

・炎症/感染
尿路の炎症や細菌・ウイルス感染がきっかけとなり、腎臓病を引き起こすこともあります。

・免疫介在疾患
 体内の免疫システムがうまく働かなくなり、正常な細胞や組織を攻撃する病気のことです。この病気にかかっていると、腎臓病の発症率が高くなる傾向にあります。

・うっ血性心不全(高血圧)
 心不全や高血圧により腎臓に負担がかかると、腎臓病を引き起こしやすくなるといわれています。

・糖尿病
糖尿病の猫は、合併症として腎臓病を発症することがあります。

・腫瘍
 悪性リンパ腫、胃腺がん、腎芽腫猫などの腫瘍ができると、尿道がふさがれたり腎機能が低下したりして、腎臓病の症状があらわれます。

・脱水
 脱水症状により腎臓に流れ込む血液量が低下するため、腎臓病の原因となります。

・品種・遺伝
 猫種や家族性など腎臓病に遺伝的な素因がある猫もいます。

腎臓の病気には食事管理が大切|検査内容と治療法

「慢性腎臓病」と診断されたら、まずは腎臓への負担を減らす食事に変更し、次に水分補給をして脱水を防ぐことが基本になります。定期的な検査や体調から、病気の進行具合を判断して治療法を変えることもあるでしょう。完治しない病気なので治療は続きますが、症状を和らげたり進行を遅らせたりすることはできます。
気になる症状がでたら、まずは動物病院で相談してください。その際にどんな検査をするのかみていきましょう。

「慢性腎臓病」を知る検査内容は?
・尿検査
「慢性腎臓病」を疑われたらまずは尿検査をします。「慢性腎臓病」の場合、早い段階から尿が薄くなってくるので、尿の濃さを表す「尿比重」などが指標になります。腎臓の働きが悪くなると、尿が薄くなるため数値は低くでます。

・血液検査
次に血液検査を実施。進行すると血液検査で異常値が出てきます。「慢性腎臓病」の指標になるのは、おもに「BUN(血中尿素窒素)」と「クレアチン」という2つの項目です。腎臓の機能が低下すると、これらの項目の数値が高くなります。また近年では、「SDMA」という新しい指標を用いる病院も増えてきているようです。SDMAを使用することで、腎臓病をより早期に発見することが可能になります。

・X検査

・画像検査
場合によっては画像検査を行って、腎臓の大きさや形、石灰沈着、結石の有無などを確認することもあります。

「慢性腎臓病」と診断されたら治療法は?
まずは⾷事療法から始めるのが一般的です。中期に⼊ると、⾷事療法を継続しつつ⽔分補給をします。ウェットフードを食べてくれるなら、水分補給も兼ねてウェットフードを利用するのも良い方法です。⼝から飲めないようなら、⽪下輸液で脱⽔症状を緩和。そして、後期に⼊りフードが⾷べられない状態のときは、栄養チューブを検討します。具体的な治療法をみてみましょう。

・食事療法をする
猫がシニア期になったら腎臓の負担を減らすために、まずはリンの含有が調整されているシニア⽤フードを与えます。「慢性腎臓病」と診断されたら、獣医師の指導のもと、、低タンパク質で低リンの慢性腎臓病管理⽤の「療法⾷」で⾷事療法を継続しましょう。ただし、病状の進⾏によって⾷事が異なることもありますので、必ず獣医師の指⽰のもと使⽤するよう注意してください。

・水分補給
次に猫が常に水を飲める状態を心がけることが大切です。水をたくさん飲ませることで腎臓の負担を減らし、症状を緩和させることができます。軽い脱水状態のときは、効率的に体に吸収されやすいペット用補水液を与えることもあります。また、ウェットフードも積極的に利用しましょう。

・皮下輸液(点滴)をする
尿毒症を防いで脱水症状を改善するために効果的な治療法です。獣医師の指示や指導に従って行いましょう。

・飲み薬を与える
猫の年齢や病気の進行具合によって、「慢性腎臓病」の治療薬を投与するケースもあります。また、老廃物や毒素を排出させる活性炭や、高血圧や貧血などの症状の軽減を目的とした薬を処方されることもあるでしょう。

腎臓の病気の食事管理に必要な栄養素、療法食について

Getty
老廃物が血液中に増えるのを防いで、腎臓病の悪化を遅らせるよう、栄養を調整した療法食を与えます。いきなり全部のフードを切り替えてしまうと拒否する場合があるので、1~4週間かけて徐々に療法食の割合を増やしていくようにしましょう。

「慢性腎臓病」の猫で注意が必要な栄養
・リン
まずはリンを減らします。リンは、骨や歯、細胞膜をつくるために必要な栄養素ですが、体内にたまると腎臓病を悪化させる原因になります。含有量を0.3~0.6%の割合に減らしましょう。

・たんぱく質
次に必要なのがたんぱく質を減らすことです。もともと⾁⾷動物の猫には、たんぱく質の摂取が必要です。しかし、たんぱく質は分解されると窒素性老廃物と呼ばれる毒素をつくり出すので、腎機能が低下している猫には注意が必要です。たんぱく質の量は全体の28〜35%まで減らすことをおすすめします。

・脂肪
脂肪は重要なエネルギー減となります。一般に食欲が低下しますので、少ない量で多くのエネルギーを得られる脂肪は大切な栄養素です。また、脂肪を分解してできる脂肪酸であるEPA、DHAは腎臓の血流を改善する働きがあります。

「慢性腎臓病」の治療は、食事療法が基本です。しかし、慢性腎臓病の猫は食欲不振になることが多くあります。その場合は温めるなどの工夫をして、嗜好性を高めてください。長い付き合いになる病気なので、獣医師ともしっかりと連携しましょう。
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)
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