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猫が甲状腺亢進症とほかの病気を併発した場合の治療方法は?獣医師が解説します!

重本 仁 先生

 獣医師
 王子ペットクリニック院長
 宮崎大学農学部附属動物病院所属

 日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医臨床病理学研究室卒業
 現在 日本獣医生命科学大学獣医外科学教室研究生
 宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)
 宮崎大学と共同で先天性門脈体循環シャントの腹腔鏡での術式の研究と開発を行う

●資格:獣医師

●所属:日本小動物内視鏡推進連絡会推進委員/日本獣医再生医療学会理事/日本獣医内視鏡外科研究会東京都獣医師会北支部副支部長 防災/獣医神経病学会日本獣医がん学会日本獣医麻酔外科学会日本小動物歯科研究会/光線温熱療法(PHT)研究会/日本小動物血液透析協会(JSAHA)

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『ねこのきもち』本誌で毎号連載中の「ねこの病気、そこが知りたい!」。実際に愛猫が病気になった飼い主さんが治療中に「知りたかったこと」について、獣医師の重本 仁先生が教えてくれます。今回はシニアに多い甲状腺機能亢進症についてです。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」

「甲状腺機能亢進症」は、甲状腺によるホルモン分泌が過剰になる病気のこと。甲状腺はのどの軟骨の下あたりにあり、新陳代謝を促進するホルモンを分泌しています。そのため、分泌が過剰になると、エネルギー消費が高まり、ほかの臓器にも負担が。腎不全などの合併症を起こすこともあります。

発症の原因として、さまざまな化学物質やカーテンなどに使われる住宅用難燃剤などを疑う論文もありますが、はっきりとはわかっていません。

初期症状として、嘔吐や下痢のほか、食欲があるのに痩せる、などの様子が見られます。また、目がギラギラしたり、走り回ったりと、一見活発なので飼い主さんは「元気」と感じ、受診が遅れがちな病気といえます。

いち早く気付くには血液検査を受けることが必須。かかりやすいのはシニア猫なので、10才くらいになったら、年に1回を目安に受けて、早期発見を目指すことが大切です。
イラスト/上垣厚子

ある猫の検査結果

画像/ねこのきもち2019年6月号『ねこの病気、そこが知りたい!』
「甲状腺機能亢進症」は一般の血液検査の項目に入っておらず、オプションで受けることがほとんど。T4(上段)のほか、FT4(下段)というホルモン値を調べるとより正確に。

甲状腺機能亢進症でこんな体験をしました

昨年秋、嘔吐と下痢が目立つように。元気で食欲旺盛だったので、しばらく様子を見ていたところ心なしか痩せてきて……。
受診すると、「甲状腺機能亢進症」のほか、重い腸の病気であることも判明。
かかりつけ医の指示により、まずは腸の病気の治療を進めています。

東京都 A・Yさん カリーくん(オス・推定13才)
受診したとき、もとの体重より約800g減っていました。そのため、「人なら約10㎏減に相当する事態。もっと早く連れてきてほしかった」と獣医さんには言われました。

嘔吐や下痢の回数が増えるといった異変には気付いていたので、すぐに受診すればよかったと反省しています。

まだ「甲状腺機能亢進症」の治療は行っていませんが、少しずつ元気になってきているので、ホッとはしています。
心配で受診したころ↓。痩せてきていて、5kgを超えていた体重は4.6kgになっていたそう
画像/ねこのきもち2019年6月号『ねこの病気、そこが知りたい!』
治療中である腸の病気が回復してきて、今は体重も元通りになっています。
画像/ねこのきもち2019年6月号『ねこの病気、そこが知りたい!』

飼主さんからの疑問「そこが知りたい」

かかりつけ医の指示で、まず腸の病気の治療をしているのですが、「甲状腺機能亢進症」の治療は、まだ療法食すら与えていない状態。
体重は戻ってきたのですが、このまま治療はしなくていいのでしょうか?

治療する順番は猫の状態によるのでかかりつけ医とよく相談して

甲状腺の数値が高いなら、少しずつでも治療はしたほうがいいと思いますが、ほかの病気との兼ね合いがあることも。心配なら、聞きにくくてもかかりつけ医に尋ねてみましょう。

ちなみに、治療では、甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬を用いるのが一般的。投与すると元気がなくなるので、ほかの病気の治療中は少量ずつにするなど、調整が必要です。また、療法食で治療することもあります。
イラスト/上垣厚子
先生、ご回答いただきありがとうございました。
実際の飼い主さんの体験談にはヒントがたくさん。いざという時に役立つリアルな情報を引き続きお届けします。
次は、「歯周病&口内炎」についてです。
お話を伺った先生/重本 仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/2019年6月号『猫の病気、そこが知りたい!』(監修:王子ペットクリニック院長 重本 仁先生)
文/浪坂一
イラスト/上垣厚子
※この記事で使用している画像は2019年6月号『猫の病気、そこが知りたい!』に掲載されているものです。
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